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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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お猿の瞬間移動

 鬼怒川旅行、3つ目のスポットは「日光猿軍団」です。さすがにここは平日でもなかなかのにぎわいを見せていました。

 お猿さんたちのパフォーマンスが見られるシアターは、その名も「猿劇場」。そのまんまです。「モンキー・シアター」とか安易に横文字にしないところに気概を感じます。
 お猿さんがちっちゃく見えない程度の舞台なので、どちらかといえば舞台は小さめなんですが、リーフレットを見たら「800名収容」と書いてあってびっくり。そんなに入るかなあ。まあ、ベンチシートなんで詰めればそのくらいいくのかな。

 劇場に入ってまず感じたのは、「猿くさい」こと(笑)。
 ナマ猿を間近に見た経験はほとんどないので、猿の匂いがどんなものなのかはわからないんですが、とにかく「獣くさい」んです。
 で、幕が開いてパフォーマンスが始まって「こりゃ臭いわけだわ」と納得しました。
 というのも、お猿さんたちは、芸をしながらかなり頻繁に「落としもの」をしているんです。
 その都度、先生がサッとティッシュで床を拭いてゴミ箱にポイポイ捨てている。
 ………ト、トイレトレーニングできてないのか?!
 これにまずびっくり。
 高度な芸を見せるような動物がトイレトレーニングできてないって。。。

 それとも、これが普通なんですかね。
 いや、そんなに激しく匂ったわけじゃないんでいいんですけど、たとえば盲導犬とか、厳しく訓練された動物ってメチャクチャ自制心(?)があるじゃないですか。
 なにか行動するにしても自分で判断してから自主的に動くし。
 そういうイメージがあったもので、ところかまわず粗相してウロウロしているお猿さんにちょっと驚いてしまったんです。
 もしかして舞台人のストレスなんでしょうか。

 また、芸をさせるときもけっこう強制的というか、首につけた縄をぐいぐい乱暴にひっぱって有無を言わせずやらせるって感じだったんで、それも意外でした。
 しつこいけど盲導犬のイメージがあったんで、「話せばわかる」っていうか、もっとスマートにやらせるのかなと思ってました。だってイルカショーだってこんな力ずくではやらせないでしょう。
 たとえば、バーを飛び越えさせるときなんかも、助走をつけさせるため、首につけた紐を持って室伏みたいにお猿さんを放り投げるんですよ。
 動物虐待に見えなくもない図です。

 同行者のガンちゃんは、以前日光猿軍団ではない猿による似たようなパフォーマンスを見たことがあるそうですが、「芸の部分はまあ似たようなものだけど、猿が芝居する部分は他にはなかった気がする」と言ってました。
 つまり、大車輪したり、玉乗りしたり……といった芸は他でも見られるけど、先生の要求に対してボケたりとか、頷いたりとか、そういう人間くさいコミュニケーションの部分は日光猿軍団独自のものであると。
 たしかにそこが一番おもしろいところなんですよね。

 日光猿軍団のお猿さんたちは、決して優等生じゃありません。
 なかなかいうことをきかなかったり、仲間の芸の邪魔をしたり、先生をおちょくったり、勝手に行動したりと、どちらかというとやんちゃ系です。
 おそらくはそれも台本の一部であり、うまくいかなくてハラハラさせた末に「無事成功」……という筋書きになっているんだと思うんですよ。
 でも、中にはほんとに「アクシデントでうまくいかない」部分もまじってるのかもしれない。そのへんの曖昧さ(どこまでが台本でどこまでが素なのか判然としない部分)がライブならではのおもしろさに結びついているんでしょうね。

 私が一番びっくりした芸(といっていいのか?)は、「瞬間移動」です。
 あるお猿さんが、客席に背中を向けたまま、じりじりとあとずさっていき、「あっ」と思った瞬間にそのまま舞台からストンと落ちたんですよ。
 高さは直立した猿の身長よりもうちょっとあったかもしれません。
 ところが、そのお猿さん、次の瞬間、そのままの体勢でとびあがり、舞台の上にスタッと戻ってしまった。
 「とびあがり」という表現はあまり適切ではないかも。
 だって普通高いところにとびあがるときは前提として反動をつけるための屈伸運動が必要でしょう?
 そのお猿さんはまったく屈伸をすることなく、まさに点から点へ画像をコピペしたかのように元の位置に戻ったんです。
 さすがに猿は違うな!と妙に感動。
 これはアクシデントではなく台本のうちみたいでした。なぜならそのあとも何回か同じことをやってたんで。

 ちなみに、一番かわいかったのは、まだ「おじぎ」しかできないという赤ちゃん猿。
 最初にみんなと一緒におじぎしたあとはずっと、真ん中に座ってひたすら無心に首についた紐をハムハムしていましたが、もうそれだけでかわいい!
 やっぱりどんな生物も赤ん坊のうちはなにもできなくても許されるだけのかわいさが備わっているものなんですね。
 「かわいさ」が失せないうちにしっかり「芸」を覚えろよ。
 と心の中で激励しつつ、猿軍団をあとにしました。

 命短し 芸せよ お猿 

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夢二と5人の女たち



 鬼怒川旅行の続きです。
 2つ目の探訪スポットは「竹久夢二美術館」。

 夢二っていうと、私は一葉会仲間の東風堂さんを思い出すんですよねぇ。
 講座時代、最初に読んだ東風堂さんの作品が、夢二の話だったんで…(タイトルはたしか「夢の通ひ路」でした)。
 そう。東風堂さん、今回の公演では近未来の姥捨山の話とか書いてましたが、じつは講座時代は考証にこだわる時代ものを数多く書いていた人なんです。
 なので、私の中では東風堂さん=夢二なんですよ。しばらくは、陰(?)で東風堂さんのことを「夢二」と呼んでいたくらい(笑)。
 夢二に関する知識がほとんどなかった私は、そのときの東風堂さんの作品を読んで「夢二についてのあれこれ」を学びました。
 おもな知識は「女好きなんだ〜」でしたが。
 年譜によると、夢二は生涯50年の間に少なくとも5人の恋人をもっていたようです。
 10年に1人のペースってことですね……(←どういう計算だ)。
 その内訳をみると以下の通りに。

 1人目●たまき
     …夢二が唯一結婚し、子供をもうけた相手。
      年上の未亡人というから相手は再婚か?
      手芸品を売る店を経営していたしっかり者で、頭のきれる女という感じ。

 2人目●彦乃
     …女子美に通っていた美大生で夢二の信奉者。
      はかなげな美少女で、良家の子女だったらしい。
      夢二にとっては永遠の憧れ=マリア様。
      相手の親に反対されて駆け落ちまでしたが、肺結核を患った彦乃は、
      夢二と引き離され、そのまま病院で死亡する。

 3人目●お葉
     …ミューズを失って廃人のようになった夢二を、再び創作に向かわせた女性。
      有名画家のもとを渡り歩いたプロのモデルで、前の2人と比べると、
      奔放でしたたかで注目されるの大好き!って感じのタイプ。
      最終的にはお葉が夢二を捨てる。

 4人目●山田順子
     …弁護士の夫を捨てて作家になったことから「和製ノラ夫人」と呼ばれる。
      当時の最先端をいくインテリ女性。
      しかし、夢二との関係は一瞬で終わる。

 5人目●雪江
     …夢二最後の恋人(?)。
      年の差は27歳あったらしい。
      「女」というより「赤ん坊」のように扱われ、「大人になるな」と
      言い聞かされていたとのこと。

 いやー、たいしたものです。
 ここまで間断なくもてるってのもすごい。
 見た目は決してイケメンってわけじゃないんですけどね。やっぱりなんか女性をひきつけるオーラがあったんでしょう。
 それにしても……私は4人目の「山田順子」って人がすごーく気になるんですけど。
 なぜこの人だけがフルネーム?
 また、他の人はみんないかにも夢二の恋人にふさわしい乙女チックな名前なのに、なぜこの人だけが小学校の同級生女子みたいな名前なの?
 地味すぎだろ!
 べつに本名は地味でもしょうがないけど、有名人とつきあうなら自分の名前もそれなりのものに改名してほしいです。
 だって、夢二だってたまきだってお葉だって本名じゃないからね。
 「お葉と夢二」なんて本名は「お兼と茂次郎」だよ。
 近松の心中ものかって感じですよね。
 やっぱり名前からくるイメージって侮れない。
 そうか。でもそう考えると、「山田順子」って今でこそ「よくある名前」だけど、当時としてはけっこうモダンな名前だったのかもしれないな。なんてったって「お兼」がデフォルトの時代だし。
 本名だと思ってたけど案外自分で気に入ってつけたペンネームだったりして。
 だとしたら大きなお世話でした。地味とかいってすまん。

 女性遍歴の話はおいといて(私もあんまり詳しいわけじゃないんで)、夢二の絵についてですが、見ていて「この人、画家っていうよりイラストレーター、グラフィックデザイナー、装幀家、あるいはヴィジュアル総合プロデューサーといったほうがよいのでは?」と思いました。
 正直、絵はそれほどうまいとは思えない……。
 いや、うまいなと思う絵もあるけど「え…これって……やる気あるの?」という絵もあり、なんか出来にムラがあるんですよ。
 でも、そんなムラも気にならないくらい強烈な個性があるし、おそらく夢二っぽいものを真似した人はいっぱいいるだろうけど、そのどれとも一線を画すだけの独自の世界を確立している人だと思いました。
 やる気なさそうな不安定な線もひとつの味というか…。そういう意味では「モダンな画風」なのにきわめて日本的な精神を感じさせます。

 あと、夢二といえば「美人画」なんですけど、意外にどのモデルにも似てるようで似てないんですよね。「あ、これはお葉さんだ」とはっきりわかるものもあるんだけど、どの人にも似ているような、似ていないような……という微妙な風貌で。
 しぐさやポーズにしても一見「日常のなにげないしぐさをスナップ写真のようにきりとった絵」にみえるんですが、じつはありそうでそんなしぐさはどこにもない……という微妙なポーズで。
 これって芝居の極意にも似てるなと思いました。
 「現実にありそうだけど実際にはどこにもない」というのが「芝居における究極のリアリティ」ですが、夢二の描く女性にも、そんな「仕組まれた虚構」の匂いがしました。

 ミュージアムショップは、夢二の絵だけでなく、夢二のデザインしたグッズで溢れていて、全然買う気なんてなかったのに、気がついたら山のように買い込んでいました。
 たしかに夢二のデザインセンスはすごい。色づかいもモダンでいて上品だし。絵が受け付けない人でも、デザインはいけるかもしれません。
 絵もデザインも含めて、自分の世界観を総合プロデュースする能力に長けていたことが、夢二成功のポイントなのではないかと思いました。

 3つ目のスポットはまた次回!

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みつをにダメ出し

 1年分の疲労を癒すべく、今年最後の風水旅行に行ってきました。
 11月は「旅行月」で風水効果は通常の6倍になるときいて、前々から「11月の公演が終わったら温泉行って一息つくんだ!」と周到に計画してきました。
 いや、周到ったって1泊2日の近場なんですけどね。
 行き先は春にも行ってきたばかりの鬼怒川温泉。
 他のところでもよかったんですが、方位を見たら、来年からしばらく北方位に行けないことがわかったので、「それなら行きおさめに…」ってことでまたまた同じところになりました。

 時期的にいって紅葉にはもう遅いだろうと思っていたのですが、今年はいつまでも暑さをひきずっていたためか、思いがけず真っ盛りのピークに当たりました。
 しかも「天気はくもり」という予報だったのに、2日目はこれまた思いがけず晴れ間が見えて、輝くような紅葉を満喫することができました。
 やっぱ紅葉は「山」と「水」ですね!
 都会の街路樹もいいけど、山の紅葉は格別で、神々しいオーラを感じます。
 せっかく紅葉のピークに当たったので、3回目の鬼怒川来訪でいまだに実現していない「ライン下り」に挑戦しようかとも思ったんですが、風がけっこう冷たかったのであっさり断念。
 「無理をしない」のが今回のキーワードなので…。疲れをとるために旅行にきて風邪ひいたら本末転倒ですしね。
 「ライン下り」は新緑の季節にでもリベンジします。

 

 

 さて。
 今回は、「鬼怒川エリア」でまだ行ったことがない3カ所のスポットを訪ねてきました。
 1つ目は「相田みつを美術館」です。
 たまたまランチしたお店から歩いて行けるエリアにあったので「ここ行ってみようか」と提案したんですが、同行者のガンちゃんは「みつを」ときいてやや気色ばんだ表情に。
 「みつを……私、こわいんだよね」
 こわい??
 なに、みつをがらみのホラー話でもあるのか?
 と、最初は意味がわからなかったのですが、要するに「あんなにてらいもなくストレートに自分の感情を吐露する人って私こわいんだよね」という意味らしい。
 そういや、大学時代にもガンちゃんは太宰治を罵倒していたな。。。
 男限定なのか、男女を問わず、なのかはわかりませんが、とにかく体育会系のガンちゃんは、甘えたことを言うやつが許せないらしい。

 私はといえば、相田みつをといえば「人間だもの」しか知らないレベルだったのですが、なんとなく「一見バカにされそうな、でも心に残る平易ですがすがしい言葉を印象的な書で表す人」というイメージをもっていました。
 なぜ知らないのに評価が高かったかというと、「金八先生」の授業の中にこれがとりあげられてたことがあったんですよ。
 その詩を紹介したとたん、生徒たちは「あったりまえじゃん、何いってんの、この人」とゲラゲラ笑いだしたのですが、そのとき、滅多に怒らない金八先生が「誰もが当たり前すぎて気づかなかったことをすくいあげて美しい言葉にしたのが相田さん。それを『あったりまえじゃん』とはなにごとか!」と厳しく一喝し、生徒がシーンとなったんですね。
 正直、私も生徒と同じことを思ってたんで、そのときは私も一緒に金八に怒られたような気分になって、TVの前でシーンとしてしまいました。
 そんなトラウマ(?)のせいか、「みつををバカにしてはならぬ」という刷り込みがあったのかもしれません。

 で、実際に実物を見てどうだったのかっていうと………「うーん。金八先生、買いかぶりすぎなのでは?」というのが正直な感想でした(笑)。
 たしかに書の技術はある人だなと思いましたよ。
 でも……中に書いてある言葉が……やっぱりこれは……ガンちゃんがむかつくのもわかる気が……しないでもない。
 平易でもシンプルでも力強い言葉ってあると思うんですよ。
 でもこれは……言っちゃあなんですが、なんか平易で浅いっていう印象なんですよね。
 ドラマのセリフでも「平易で力強いセリフ」と「平易で力のないセリフ」ってあるんですが、まさに後者の感じ。
 前者だと「打たれる」んだけど、後者だと「あったりまえじゃん」とつっこみたくなる。
 たまたま「人間だもの」というフレーズが有名になったのは、この言葉にはその「力強さ」があったからだと思うんです。
 ザーッと見渡してみて、この言葉を越える強さをもった言葉は残念ながらありませんでした。
 誰でも人生の苦労は多かれ少なかれしているわけで、そういう人が見たときに「ああ、ほんとにそうだな」と楽になれるのか、「なになめたこと言ってんだよ、チョーむかつく」といらっとするのか、この手の詩は2つに1つの反応をもたらす危険を秘めています。
 もちろん、前者になるみつをファンはいっぱいいると思いますが、個人的には後者もけっこういそうな気がしました。

 ガンちゃんはみつをがよっぽど気に入らないのか、展示物の前に立つたびに詩にダメ出ししてました。
 「観音さまはいつもじっと愚痴をきいてくれるからえらい」というような詩の前では「観音さまは愚痴きくためにいるんじゃないんだよ」とすごみ、「人生は七転び八起きではなく七転八倒。つまりころびっぱばし、倒れっぱなしなんだ。でもそれでいいじゃないか」というような詩の前では「よくないよ。単に学習能力がないだけじゃん」と斬って捨ててました。
 ガンちゃん……そんなとこで字に向かってダメ出ししても字は反省しないよ(笑)。

 でもね、発見したんですが、遠くから見るといいんですよ、相田みつを。
 つまり全体のバランスがね、やっぱりうまいんですね。
 近くに寄って字を読むとむかついちゃうんですが(笑)、外人になった気分で、意味を考えずに全体をひとつの絵として楽しめば、これはこれでいいものだなと思いました。

 一気にいこうと思いましたが、疲れたので2つ目と3つ目はまた次回。
 ゆっくりいっていいよね。人間だもの(←つっこんだくせに最後で開き直る)。



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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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