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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

カテゴリー「TV(ドキュメンタリー)」の記事一覧

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ブロードウェイミュージカルの歴史のお勉強

 早いもので、今日で松がとれますね。
 皆さんはどんなお正月をお過ごしでしたでしょうか。
 私は今年も細木先生の教えに従い、5日に正しい初詣に行ってまいりました。いつもの近所の氏神様へ。
 ホントは初詣は3が日までに済ませるのが望ましいらしいのですが、去年は3日に行ったら混んでてえらい目にあったので、今年は5日までひっぱりました(毎日寒くて外に出るのが億劫だったこともある)。今「全然正しくないじゃん」というつっこみがきこえてきましたが、まあ行かないよりはましということで…。

 ずらした甲斐あって神社はガラ空きでした。
 これまた細木先生の教えに従い、お賽銭はのし袋に入れて「上 ◯◯」と表書きまで書きましたが、ご大層なのし袋に包んだわりに中身は「小銭」……。開封したときの神様の舌打ちが聞こえてくるようです。
 そして恒例の「絵馬」を購入。本当は去年の絵馬をお焚きあげに出さなくてはいけなかったのですが、家に忘れてきて出せませんでした。
 最後に滅多にひかないおみくじをひいてみましたが、小銭がなくて家族から借金。「おまえ、もう帰れ!」って感じですね。
 おみくじの結果は「吉」。すごくいいこともない代わりにすごく悪いこともない。万事が平穏無事といったところ。
 うーーん。平穏無事は望むところなんだけど、今年はすでにいくつかただでは済みそうにない火種を抱えたまま年越ししているので、平穏な一年になるとはとても思えないんだが…。

 帰宅後、絵馬に書く内容の参考にしようと、部屋にかけっぱなしにしておいた酉年の絵馬の中身を一年ぶりにチェック。
 一昨年の絵馬はたしか「こりゃ標語だよ。願い事じゃないよ」という内容だったので、去年は心を入れ替えて一応お願い事っぽいことを書いたはず。
 なに書いたっけ〜。とワクワクしながら見たそこに書いてあった「願い事」とは…。

「つまらないことに腹をたてることなく、『明鏡止水』の心境で過ごせる一年となりますように」

 ……………………………………。
 負けた。負けたよ>2005年の自分
 たしかにお願い事の体裁ではあるんだけど、なんて困難な望みなんだ。
 「ジャニーズの若い子を相手役に指名して帝劇の舞台に立てますように」というほうがまだ現実的だよ。
 こんな高度な願い事を書かれたら、今年は何書くかプレッシャーじゃん(←べつに去年の自分に張り合わなくてもよろしい)。
 考えた結果、今年はシンプルにいきました。
 お願い事っつーか、「座右の銘」みたいですが。
 こうやって毎年正月に絵馬に望みを書いて一年間部屋に飾っておき、一年後の正月に自分が何書いたのか確認するとおもしろいですよ。他人に見られる心配もないし。本来、願い事は目に見えるところに飾っておいてイメトレするほうが実現率は高くなるような気がしますが、あえて見えないようにしておいて一年前に何書いたのかを確認するのもそれはそれで楽しい。絶対忘れてますから。

 話変わって。
 お正月はいろいろスペシャル番組をやっているので、普段の連ドラがなくなって楽できるかと思うと意外に拘束されるんですよね。
 その中でちょっと珍しかったのが1/1〜6まで、NHKが6夜連続で放送していた「華麗なるミュージカル〜ブロードウェイの100年」という国際共同製作のドキュメンタリー番組。
 6夜連続で見るのはけっこうきつかったけど、なんとか頑張って見通しました。ブロードウェイってまだ100年しか歴史がないんですねー。
 正直言って知らない作品や知らない曲が続くところは退屈したし、現代でもよく上演されるいわゆるメジャーな作品がつくられるようになった1960年代以降のミュージカルが5回目になってようやく登場するのは構成としてバランスが悪い気もしましたが、通観することによって発見できたこともたくさんあり、全体としては勉強になりました。

 ブロードウェイミュージカルの歴史は、日本で言うと大正初期くらいから始まるんですけど、途中何度も外圧によって存亡の危機に見舞われるんですね。「ハリウッド映画の台頭」「戦争」「TVの台頭」「ロックの台頭」「エイズ」「NYテロ」などなど。そのたびに「ブロードウェイはもうおしまい」と言われ、言われながら不死鳥のように蘇ってきました。
 最終的にブロードウェイを家族連れで楽しめるような治安のいい町にリニューアルしたのはディズニーなわけですが、ディズニー社の最高経営責任者の◯◯(名前失念)は「映画やTVで何千万の人が見たと言われても正直実感がわかない。しかし、劇場の観客の熱狂をまのあたりにしたときの手応えはなにものにも代え難い。だから舞台はやめられない」というようなことを言っていて、これは非常によくわかる実感だなーと思いました。
 映画のほうが簡単に回収できるのに対し、舞台はどんなにお金かけて作っても、評判が悪ければ即座に打ち切り。回収のめどさえつかなくなるというリスクの大きい興行です。なのに、映画やTVで散々儲けてるディズニーが、最終的に舞台に参入したというのはそれだけ「舞台でなきゃ得られないなんらかの魅力」にとりつかれたということなんでしょうね。

 6回通して、ミュージカルづくりにかかわった多くの作詞家や作曲家が登場しましたが、中でも抜きんでた才能だなーとつくづく思ったのはガーシュインとバーンスタイン。
 普通に「いい曲だな」「この曲好きだな」という曲を書ける才能(←それだけでもすごいことだけど)の作家はいっぱいいるんですけど、この2人はその中でも格が違う。なんというか曲に人間離れしたカリスマを感じますね。
 おかしかったのはソンドハイム。彼は、「ウェストサイド・ストーリー」に作詞家としてかかわっていましたが、本当は作曲家志望で、そのあとハロルド・プリンスと組んで何本もミュージカルを書くんですが、なぜか爆発的なヒット作というのが出ない。
 知名度はあるし、ステイタスもあるし、評価も高いんですが、大衆受けしないというか、よくある言葉で言うと「技巧派でひねった作品が好きで玄人受けする」というタイプ。
 私も何本かソンドハイムの作品は観ましたが、たしかに一般受けはしないかなーと思いましたね。アンドリュー・ロイド・ウェーバーみたいに少々「演歌」っぽいくらいのあざとさがないと多くの人の心はつかめないんでしょう。

 でもソンドハイムだって最初から「いいよ、俺は売れなくたって」とか思ってるわけじゃないと思うんですよ。それが証拠に、途中、ある作品が、評判がかんばしくなくて打ち切りになったとき、ショックのあまり「もう書かない。やめる」と言い出したこともあるらしい。結局、べつのプロデューサーと組んでまた復活したんですが。
 なのに、ナレーションでは「ソンドハイムは、たとえヒットしなくても価値のある作品を常に提供し続けているアーティストだ」みたいなまとめ方をされてて、なんだかなーと思いました。
 まだ生きてるのに、これから先もヒットしないと断言するかのような言い方をされてしまうソンドハイムって…(笑)。

 ちなみに、私の知っているソンドハイムの作品は、「カンパニー」「リトル・ナイト・ミュージック」「スウィニー・トッド」「INTO THE WOODS」「太平洋序曲」。
 ね。いまいちマイナーでしょ。
 ソンドハイムも、お正月の絵馬に「今年こそロイド・ウェーバーに負けないメガヒットを!」とか書いてるかもしれませんねー。

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少女マンガ家・ビッグ3の素顔

 1/24〜26の3夜連続で、「THE・少女マンガ!」というドキュメンタリーをNHK BS2でやっていました(23:00〜24:00)。

 1夜につき1人の作家に焦点をあて、その作家のサクセスストーリーと代表作について紹介。最終的にその作家がどういうタイプのアーティストなのかにまで迫るというなかなか興味深い番組でした。
 サクセスストーリーの部分は当時の写真と、再現ストーリーで表現。さらに代表作を紹介する部分では、要所要所を抽出し、コマのアップと吹き替え(?)の組み合わせでテンポよく展開(このときのコマを写していくカメラワークがなかなか凝っていてうまかった)。また、作家自身が作品について語るインタビューシーンなども挿入されています。

 とりあげられた作家と作品は、まさに私の青春時代(中学・高校時代)に話題になったものばかりだったので、なつかしさもあり、「この作家さんはこんな顔してたのか」という驚きもあり…などなど、いろいろな楽しみ方をさせていただきました。
 各回でとりあげられた作家と作品は以下の通りです。

 第1夜●美内すずえ「ガラスの仮面」
 第2夜●庄司陽子「生徒諸君!」
 第3夜●青池保子「エロイカより愛をこめて」

 いずれも一世を風靡した人気作品ばかりですが、考えてみると、今まで作品自体がクローズアップされたり分析されたりすることはあっても、「作家との関連性」という視点から作品がとりあげることってあまりなかった気がするんですよね。
 で、見ていて思ったのは、おもしろいくらい代表作の主人公と作家のキャラが似ているということ。

 美内すずえは、まさに天才肌の北島マヤタイプ。
 3人の中で、いわゆる「不遇時代」と一番無縁なのもこの人でした。
 遅筆で有名らしいですが(担当編集者は「デビューの1回目しか締切を守っていない」と言い、本人は「いや、もう1回はあったと思う」と主張。どっちでも同じだよ!って感じですが)、書けなくて追いつめられて遅れるという感じではなく、「発酵する時間が必要なの」とのことで、締切の最中にお芝居観に行ったりといたってマイペース。
 「ガラスの仮面」の42巻が出るまでに6年かかかったことも、「べつに長いとは思わない。私は時間の流れ方が人とは違うみたいで」とまったく気にしていない様子。

 少女時代は、近所の貸本屋に行ってはマンガを端から読みあさっていたようですが、その代金をすべてツケにしたために親にバレてしまい、「マンガ禁止令」がだされたそうです(このへんのマニアックさも北島マヤっぽい)。
 で、マンガが読めなくなった少女・すずえが考えたことは、「読めないなら、自分で書こう」というもの。要するに、自分が読みたいものを自分で生産しようと考えたわけです。
 美内すずえのストーリーテラーとしての才能はまさに天才的で、編集者から書き直しを命じられたことは1回もないといいます。
 そうきくと、「ダメだし」してくれる人がまったくいないっていうのもつらくないかなとか思ってしまいますが、本人いわく「私に一番厳しいダメだしをしてくれるのは“少女時代の私自身”」とのこと。
 読者だった頃の自分が最も厳しい目利きであり、あの頃の自分が「おもしろい」と言ってくれるものを書き続けている…と。
 要するに、この人はこんなに出世しても、まだ出発点の「自分のために、自分が読みたいものを書く」という気持ちを見失っていないんですね。
 こんなふうに言い切れるのって、よっぽど自分に自信がなきゃできないことですよね。やっぱこの人は天才です。

 「ガラスの仮面」には、劇中劇が30本くらい出てくるんですが、驚くことに美内すずえは、この劇中劇の台本も全部創ってるらしいんですよ。
 最初から最後まで全部創ったうえで、マンガに使う部分だけを抜いて使っているとのこと。つまり、マンガに使われなかった部分は誰の目にも触れないまま眠ってるってことですよ。
 すんごいもったいないと思いませんか?
 戯曲を勉強している身から見ても「ガラスの仮面」に出てくる劇中劇はかなりのレベルだと思います。
 思うんですけど、この劇中劇をひとつの作品として上演するという企画もありなんじゃないでしょうか。
 “「ガラスの仮面」の劇中劇×××”という謳い文句だけでかなりの集客が見込めると思うけどなー。
 いかがですか? 演劇プロデューサーの皆さん。

 第2夜に出てきた庄司陽子は、美内すずえとは対照的で、「努力と根性の人」という感じ。すごくきまじめで、周囲の期待で自分を追い込むタイプといったらいいでしょうか。筆の早さも対照的で、どんなに無理なスケジュールでも絶対に締切を落とさないことで有名らしいです。
 そのため、しばしば穴をあけた他の作家のピンチヒッターとして声がかかるパターンを経験していて、その都度、驚異的な仕事の早さでそれを切り抜け、確実にチャンスをものにしていったようです。

 「生徒諸君!」のナッキーには、余命の短い双子の姉がいて、ナッキーは姉の分も頑張ろうと、勉強にもスポーツにも人の2倍の努力を払います。
 ナッキーの裏の顔を知らない周囲の人々は、ナッキーを「天才的なスーパーウーマン」としか見ませんが、じつはその裏には悲壮な思いが隠されていたわけです。
 庄司陽子自身にも、じつは生まれてすぐに亡くなったという姉がいるらしく、その話を聞いたときに「姉が生きてたら私はこの世にはいなかっただろうな」と思い、「私は姉の代わりなんだ」と認識したそうです。
 庄司陽子の自分への厳しさの原点はそんなところに根ざしているのかもしれません。

 庄司陽子は筆が早いだけに抜きんでた「多作作家」ですが、ネタにつまることはないそうです。
 その秘密は、「1日に1冊本を読む」という修業を20年間続けたこと。
 それやってたら20年目にはもう読みたい本がなくなり、何を読んでも先が読めてしまうようになったんだそうです。
 そのあとは、「1日に2本ビデオを見る」という修業を積んだそうですが、これは10年間で完了したとか。
 たしかにこれだけの蓄積があったらネタにつまることはないだろうなー。
 庄司陽子の作風は、奇想天外のハラハラドキドキ系ストーリーテリングというよりは、日常的な話の中で人の心の深いところに斬り込んでいくというタイプなので、こういう人は、普通の人が1個のネタから1個の話しか作れないところ、20個も30個も作れちゃうんだと思います。

 第3夜の青池保子は、自分の世界を貫いた「孤高の人」という感じ。
 この人の場合、「少女マンガ家なのに女の子を書くのが苦手」という致命的な欠点があり、若い頃は何を書いても反響がいまひとつだったらしい。
 とはいえ、出版社の専属でいる限りは、言われたものを書かなければならず、あらゆるジャンルに挑戦してはうまくいかないという不遇の日々を過ごし続けたといいます。

 転機になったのは、フリーになってから。「イブの息子たち」で新境地を開拓してからは、「男性キャラ」にこだわるようになり、ついには「女」をまったく出さない「青池マンガ」の世界を確立。
 その後も「自分の書きたいもの」にこだわり続け、「男性キャラへの思い入れ」「スパイもの好き」「ヨーロッパ文化への造詣」「娯楽性にコメディのエッセンスを注入」という、自分が一番好きなものを追求した結果できあがったのが「エロイカより愛をこめて」ということです。
 私がびっくりしたのは、「エロイカ〜」が今もまだ連載中だということ。東西冷戦時代が終わり、国際情勢がどんどん複雑になっていったため、「エロイカ〜」の背景を書くのが難しくなり、いったんは連載を終わらせたものの、復活へのラブコールがやまず、結局軍事評論家のブレーンを得て再び連載を開始したらしいです(その軍事評論家がまた前からの「エロイカ〜」ファンだったそうで、異常に張り切ってネタを提供していたのがおもしろかった)。
 
 もちろん、どの作家も「自分の好きなもの」を追求しているんだとは思いますけど、青池保子の場合、その「好きなもの」がいまいちマイナーで玄人受けするものだったところに不幸と幸福があったんでしょうね。
 ちなみに、青池保子は、私が見たところ、3人の中で一番「女子校濃度」が高そうに見えました(笑)。

 というわけで、三人三様の仕事ぶり、大変おもしろく見ました。
 ぜひシリーズ化して他の作家さんもとりあげてほしいです。
 個人的には山岸涼子の素顔とか見てみたいんですけど(笑)。

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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