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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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夢二と5人の女たち



 鬼怒川旅行の続きです。
 2つ目の探訪スポットは「竹久夢二美術館」。

 夢二っていうと、私は一葉会仲間の東風堂さんを思い出すんですよねぇ。
 講座時代、最初に読んだ東風堂さんの作品が、夢二の話だったんで…(タイトルはたしか「夢の通ひ路」でした)。
 そう。東風堂さん、今回の公演では近未来の姥捨山の話とか書いてましたが、じつは講座時代は考証にこだわる時代ものを数多く書いていた人なんです。
 なので、私の中では東風堂さん=夢二なんですよ。しばらくは、陰(?)で東風堂さんのことを「夢二」と呼んでいたくらい(笑)。
 夢二に関する知識がほとんどなかった私は、そのときの東風堂さんの作品を読んで「夢二についてのあれこれ」を学びました。
 おもな知識は「女好きなんだ〜」でしたが。
 年譜によると、夢二は生涯50年の間に少なくとも5人の恋人をもっていたようです。
 10年に1人のペースってことですね……(←どういう計算だ)。
 その内訳をみると以下の通りに。

 1人目●たまき
     …夢二が唯一結婚し、子供をもうけた相手。
      年上の未亡人というから相手は再婚か?
      手芸品を売る店を経営していたしっかり者で、頭のきれる女という感じ。

 2人目●彦乃
     …女子美に通っていた美大生で夢二の信奉者。
      はかなげな美少女で、良家の子女だったらしい。
      夢二にとっては永遠の憧れ=マリア様。
      相手の親に反対されて駆け落ちまでしたが、肺結核を患った彦乃は、
      夢二と引き離され、そのまま病院で死亡する。

 3人目●お葉
     …ミューズを失って廃人のようになった夢二を、再び創作に向かわせた女性。
      有名画家のもとを渡り歩いたプロのモデルで、前の2人と比べると、
      奔放でしたたかで注目されるの大好き!って感じのタイプ。
      最終的にはお葉が夢二を捨てる。

 4人目●山田順子
     …弁護士の夫を捨てて作家になったことから「和製ノラ夫人」と呼ばれる。
      当時の最先端をいくインテリ女性。
      しかし、夢二との関係は一瞬で終わる。

 5人目●雪江
     …夢二最後の恋人(?)。
      年の差は27歳あったらしい。
      「女」というより「赤ん坊」のように扱われ、「大人になるな」と
      言い聞かされていたとのこと。

 いやー、たいしたものです。
 ここまで間断なくもてるってのもすごい。
 見た目は決してイケメンってわけじゃないんですけどね。やっぱりなんか女性をひきつけるオーラがあったんでしょう。
 それにしても……私は4人目の「山田順子」って人がすごーく気になるんですけど。
 なぜこの人だけがフルネーム?
 また、他の人はみんないかにも夢二の恋人にふさわしい乙女チックな名前なのに、なぜこの人だけが小学校の同級生女子みたいな名前なの?
 地味すぎだろ!
 べつに本名は地味でもしょうがないけど、有名人とつきあうなら自分の名前もそれなりのものに改名してほしいです。
 だって、夢二だってたまきだってお葉だって本名じゃないからね。
 「お葉と夢二」なんて本名は「お兼と茂次郎」だよ。
 近松の心中ものかって感じですよね。
 やっぱり名前からくるイメージって侮れない。
 そうか。でもそう考えると、「山田順子」って今でこそ「よくある名前」だけど、当時としてはけっこうモダンな名前だったのかもしれないな。なんてったって「お兼」がデフォルトの時代だし。
 本名だと思ってたけど案外自分で気に入ってつけたペンネームだったりして。
 だとしたら大きなお世話でした。地味とかいってすまん。

 女性遍歴の話はおいといて(私もあんまり詳しいわけじゃないんで)、夢二の絵についてですが、見ていて「この人、画家っていうよりイラストレーター、グラフィックデザイナー、装幀家、あるいはヴィジュアル総合プロデューサーといったほうがよいのでは?」と思いました。
 正直、絵はそれほどうまいとは思えない……。
 いや、うまいなと思う絵もあるけど「え…これって……やる気あるの?」という絵もあり、なんか出来にムラがあるんですよ。
 でも、そんなムラも気にならないくらい強烈な個性があるし、おそらく夢二っぽいものを真似した人はいっぱいいるだろうけど、そのどれとも一線を画すだけの独自の世界を確立している人だと思いました。
 やる気なさそうな不安定な線もひとつの味というか…。そういう意味では「モダンな画風」なのにきわめて日本的な精神を感じさせます。

 あと、夢二といえば「美人画」なんですけど、意外にどのモデルにも似てるようで似てないんですよね。「あ、これはお葉さんだ」とはっきりわかるものもあるんだけど、どの人にも似ているような、似ていないような……という微妙な風貌で。
 しぐさやポーズにしても一見「日常のなにげないしぐさをスナップ写真のようにきりとった絵」にみえるんですが、じつはありそうでそんなしぐさはどこにもない……という微妙なポーズで。
 これって芝居の極意にも似てるなと思いました。
 「現実にありそうだけど実際にはどこにもない」というのが「芝居における究極のリアリティ」ですが、夢二の描く女性にも、そんな「仕組まれた虚構」の匂いがしました。

 ミュージアムショップは、夢二の絵だけでなく、夢二のデザインしたグッズで溢れていて、全然買う気なんてなかったのに、気がついたら山のように買い込んでいました。
 たしかに夢二のデザインセンスはすごい。色づかいもモダンでいて上品だし。絵が受け付けない人でも、デザインはいけるかもしれません。
 絵もデザインも含めて、自分の世界観を総合プロデュースする能力に長けていたことが、夢二成功のポイントなのではないかと思いました。

 3つ目のスポットはまた次回!

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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