古伊万里★新伊万里
劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です
みつをにダメ出し
1年分の疲労を癒すべく、今年最後の風水旅行に行ってきました。
11月は「旅行月」で風水効果は通常の6倍になるときいて、前々から「11月の公演が終わったら温泉行って一息つくんだ!」と周到に計画してきました。
いや、周到ったって1泊2日の近場なんですけどね。
行き先は春にも行ってきたばかりの鬼怒川温泉。
他のところでもよかったんですが、方位を見たら、来年からしばらく北方位に行けないことがわかったので、「それなら行きおさめに…」ってことでまたまた同じところになりました。
時期的にいって紅葉にはもう遅いだろうと思っていたのですが、今年はいつまでも暑さをひきずっていたためか、思いがけず真っ盛りのピークに当たりました。
しかも「天気はくもり」という予報だったのに、2日目はこれまた思いがけず晴れ間が見えて、輝くような紅葉を満喫することができました。
やっぱ紅葉は「山」と「水」ですね!
都会の街路樹もいいけど、山の紅葉は格別で、神々しいオーラを感じます。
せっかく紅葉のピークに当たったので、3回目の鬼怒川来訪でいまだに実現していない「ライン下り」に挑戦しようかとも思ったんですが、風がけっこう冷たかったのであっさり断念。
「無理をしない」のが今回のキーワードなので…。疲れをとるために旅行にきて風邪ひいたら本末転倒ですしね。
「ライン下り」は新緑の季節にでもリベンジします。
さて。
今回は、「鬼怒川エリア」でまだ行ったことがない3カ所のスポットを訪ねてきました。
1つ目は「相田みつを美術館」です。
たまたまランチしたお店から歩いて行けるエリアにあったので「ここ行ってみようか」と提案したんですが、同行者のガンちゃんは「みつを」ときいてやや気色ばんだ表情に。
「みつを……私、こわいんだよね」
こわい??
なに、みつをがらみのホラー話でもあるのか?
と、最初は意味がわからなかったのですが、要するに「あんなにてらいもなくストレートに自分の感情を吐露する人って私こわいんだよね」という意味らしい。
そういや、大学時代にもガンちゃんは太宰治を罵倒していたな。。。
男限定なのか、男女を問わず、なのかはわかりませんが、とにかく体育会系のガンちゃんは、甘えたことを言うやつが許せないらしい。
私はといえば、相田みつをといえば「人間だもの」しか知らないレベルだったのですが、なんとなく「一見バカにされそうな、でも心に残る平易ですがすがしい言葉を印象的な書で表す人」というイメージをもっていました。
なぜ知らないのに評価が高かったかというと、「金八先生」の授業の中にこれがとりあげられてたことがあったんですよ。
その詩を紹介したとたん、生徒たちは「あったりまえじゃん、何いってんの、この人」とゲラゲラ笑いだしたのですが、そのとき、滅多に怒らない金八先生が「誰もが当たり前すぎて気づかなかったことをすくいあげて美しい言葉にしたのが相田さん。それを『あったりまえじゃん』とはなにごとか!」と厳しく一喝し、生徒がシーンとなったんですね。
正直、私も生徒と同じことを思ってたんで、そのときは私も一緒に金八に怒られたような気分になって、TVの前でシーンとしてしまいました。
そんなトラウマ(?)のせいか、「みつををバカにしてはならぬ」という刷り込みがあったのかもしれません。
で、実際に実物を見てどうだったのかっていうと………「うーん。金八先生、買いかぶりすぎなのでは?」というのが正直な感想でした(笑)。
たしかに書の技術はある人だなと思いましたよ。
でも……中に書いてある言葉が……やっぱりこれは……ガンちゃんがむかつくのもわかる気が……しないでもない。
平易でもシンプルでも力強い言葉ってあると思うんですよ。
でもこれは……言っちゃあなんですが、なんか平易で浅いっていう印象なんですよね。
ドラマのセリフでも「平易で力強いセリフ」と「平易で力のないセリフ」ってあるんですが、まさに後者の感じ。
前者だと「打たれる」んだけど、後者だと「あったりまえじゃん」とつっこみたくなる。
たまたま「人間だもの」というフレーズが有名になったのは、この言葉にはその「力強さ」があったからだと思うんです。
ザーッと見渡してみて、この言葉を越える強さをもった言葉は残念ながらありませんでした。
誰でも人生の苦労は多かれ少なかれしているわけで、そういう人が見たときに「ああ、ほんとにそうだな」と楽になれるのか、「なになめたこと言ってんだよ、チョーむかつく」といらっとするのか、この手の詩は2つに1つの反応をもたらす危険を秘めています。
もちろん、前者になるみつをファンはいっぱいいると思いますが、個人的には後者もけっこういそうな気がしました。
ガンちゃんはみつをがよっぽど気に入らないのか、展示物の前に立つたびに詩にダメ出ししてました。
「観音さまはいつもじっと愚痴をきいてくれるからえらい」というような詩の前では「観音さまは愚痴きくためにいるんじゃないんだよ」とすごみ、「人生は七転び八起きではなく七転八倒。つまりころびっぱばし、倒れっぱなしなんだ。でもそれでいいじゃないか」というような詩の前では「よくないよ。単に学習能力がないだけじゃん」と斬って捨ててました。
ガンちゃん……そんなとこで字に向かってダメ出ししても字は反省しないよ(笑)。
でもね、発見したんですが、遠くから見るといいんですよ、相田みつを。
つまり全体のバランスがね、やっぱりうまいんですね。
近くに寄って字を読むとむかついちゃうんですが(笑)、外人になった気分で、意味を考えずに全体をひとつの絵として楽しめば、これはこれでいいものだなと思いました。
一気にいこうと思いましたが、疲れたので2つ目と3つ目はまた次回。
ゆっくりいっていいよね。人間だもの(←つっこんだくせに最後で開き直る)。
11月は「旅行月」で風水効果は通常の6倍になるときいて、前々から「11月の公演が終わったら温泉行って一息つくんだ!」と周到に計画してきました。
いや、周到ったって1泊2日の近場なんですけどね。
行き先は春にも行ってきたばかりの鬼怒川温泉。
他のところでもよかったんですが、方位を見たら、来年からしばらく北方位に行けないことがわかったので、「それなら行きおさめに…」ってことでまたまた同じところになりました。
時期的にいって紅葉にはもう遅いだろうと思っていたのですが、今年はいつまでも暑さをひきずっていたためか、思いがけず真っ盛りのピークに当たりました。
しかも「天気はくもり」という予報だったのに、2日目はこれまた思いがけず晴れ間が見えて、輝くような紅葉を満喫することができました。
やっぱ紅葉は「山」と「水」ですね!
都会の街路樹もいいけど、山の紅葉は格別で、神々しいオーラを感じます。
せっかく紅葉のピークに当たったので、3回目の鬼怒川来訪でいまだに実現していない「ライン下り」に挑戦しようかとも思ったんですが、風がけっこう冷たかったのであっさり断念。
「無理をしない」のが今回のキーワードなので…。疲れをとるために旅行にきて風邪ひいたら本末転倒ですしね。
「ライン下り」は新緑の季節にでもリベンジします。
さて。
今回は、「鬼怒川エリア」でまだ行ったことがない3カ所のスポットを訪ねてきました。
1つ目は「相田みつを美術館」です。
たまたまランチしたお店から歩いて行けるエリアにあったので「ここ行ってみようか」と提案したんですが、同行者のガンちゃんは「みつを」ときいてやや気色ばんだ表情に。
「みつを……私、こわいんだよね」
こわい??
なに、みつをがらみのホラー話でもあるのか?
と、最初は意味がわからなかったのですが、要するに「あんなにてらいもなくストレートに自分の感情を吐露する人って私こわいんだよね」という意味らしい。
そういや、大学時代にもガンちゃんは太宰治を罵倒していたな。。。
男限定なのか、男女を問わず、なのかはわかりませんが、とにかく体育会系のガンちゃんは、甘えたことを言うやつが許せないらしい。
私はといえば、相田みつをといえば「人間だもの」しか知らないレベルだったのですが、なんとなく「一見バカにされそうな、でも心に残る平易ですがすがしい言葉を印象的な書で表す人」というイメージをもっていました。
なぜ知らないのに評価が高かったかというと、「金八先生」の授業の中にこれがとりあげられてたことがあったんですよ。
その詩を紹介したとたん、生徒たちは「あったりまえじゃん、何いってんの、この人」とゲラゲラ笑いだしたのですが、そのとき、滅多に怒らない金八先生が「誰もが当たり前すぎて気づかなかったことをすくいあげて美しい言葉にしたのが相田さん。それを『あったりまえじゃん』とはなにごとか!」と厳しく一喝し、生徒がシーンとなったんですね。
正直、私も生徒と同じことを思ってたんで、そのときは私も一緒に金八に怒られたような気分になって、TVの前でシーンとしてしまいました。
そんなトラウマ(?)のせいか、「みつををバカにしてはならぬ」という刷り込みがあったのかもしれません。
で、実際に実物を見てどうだったのかっていうと………「うーん。金八先生、買いかぶりすぎなのでは?」というのが正直な感想でした(笑)。
たしかに書の技術はある人だなと思いましたよ。
でも……中に書いてある言葉が……やっぱりこれは……ガンちゃんがむかつくのもわかる気が……しないでもない。
平易でもシンプルでも力強い言葉ってあると思うんですよ。
でもこれは……言っちゃあなんですが、なんか平易で浅いっていう印象なんですよね。
ドラマのセリフでも「平易で力強いセリフ」と「平易で力のないセリフ」ってあるんですが、まさに後者の感じ。
前者だと「打たれる」んだけど、後者だと「あったりまえじゃん」とつっこみたくなる。
たまたま「人間だもの」というフレーズが有名になったのは、この言葉にはその「力強さ」があったからだと思うんです。
ザーッと見渡してみて、この言葉を越える強さをもった言葉は残念ながらありませんでした。
誰でも人生の苦労は多かれ少なかれしているわけで、そういう人が見たときに「ああ、ほんとにそうだな」と楽になれるのか、「なになめたこと言ってんだよ、チョーむかつく」といらっとするのか、この手の詩は2つに1つの反応をもたらす危険を秘めています。
もちろん、前者になるみつをファンはいっぱいいると思いますが、個人的には後者もけっこういそうな気がしました。
ガンちゃんはみつをがよっぽど気に入らないのか、展示物の前に立つたびに詩にダメ出ししてました。
「観音さまはいつもじっと愚痴をきいてくれるからえらい」というような詩の前では「観音さまは愚痴きくためにいるんじゃないんだよ」とすごみ、「人生は七転び八起きではなく七転八倒。つまりころびっぱばし、倒れっぱなしなんだ。でもそれでいいじゃないか」というような詩の前では「よくないよ。単に学習能力がないだけじゃん」と斬って捨ててました。
ガンちゃん……そんなとこで字に向かってダメ出ししても字は反省しないよ(笑)。
でもね、発見したんですが、遠くから見るといいんですよ、相田みつを。
つまり全体のバランスがね、やっぱりうまいんですね。
近くに寄って字を読むとむかついちゃうんですが(笑)、外人になった気分で、意味を考えずに全体をひとつの絵として楽しめば、これはこれでいいものだなと思いました。
一気にいこうと思いましたが、疲れたので2つ目と3つ目はまた次回。
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「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
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みつをにダメ出し
ガンちゃん様の一刀両断さに爆笑させて頂きました。
320(←一気にチープなテイストに)さんの書は、中学か高校くらいの頃ハマりましたねー。
随分と衒学的で小生意気で、容赦なくスイーツな同学年たちを弾求しては泣かせてしまうような学生だったので、今思うと、素直で弱さを隠さない哲学に憧れたのかもしれません。
バランスや書体を、気に入るまで何百枚かかっても書き直していたそうですので、やはり作品としては良いのでしょうね。
中に込められた内容は…他者に対する教訓やメッセージ、というより、実体験を通して痛感したことを記した手記、として見れば、イラつかずに等身大で頷けるものもあるような気がします。
ちなみにワタシも太宰罵倒はよくします(笑)
あいつ、弱えー。
みつをと太宰
公演の節はお世話になりました。
えー、あれは手記なんですかー。
思いっきり「教訓臭」がぷんぷん匂ってるんですが。
文字が自信たっぷりだからかな。
せっかくここまで来たので、私にも一つくらい共感できるものはないかと目を皿のようにして探し回ったのですが、結局出会えませんでした。
隣のガンちゃんがとばしてくる否定オーラのせいか?
否定オーラに負けたのか?
ちなみに私、太宰は大好きです。
大学時代、そのことでガンちゃんとケンカ(?)しました。
ガンちゃんには「こんなやつのためになぜ怒る?」って顔されましたが。
みつを・否/太宰・否→ガンちゃん
みつを・是/太宰・否→YYKさん
みつを・否/太宰・是→わたくし
こうしてみるとみつをと太宰はまったく似てないってことですね(だから誰も似てるなんて言ってねー)。