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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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季節限定ガーデナー

 1年前からブログに書こうと思っていて結局書きそこねていたネタがあります。
 それは「ガーデニング」です。

 1年前の春、突然、本当に突然、「ガーデニング熱」に火がつきました。
 それまで、私の人生の中で「花」や「植物」や「庭」に興味のあった時期は皆無でした。
 それがなぜ急に興味がわいたかというと、きっかけは家の建て直しで庭が狭くなったことでした。
 「狭く???広くの間違いじゃないの?」と言われそうですが、そうじゃないんです。

 建て直し前のうちの庭は、「松」「庭石」「芝生」で構成されている、いわゆる「和風」の庭でした。
 和風庭園は、基本的にすでに景観(形)ができあがっているものですから、自分の手で「庭を造る」楽しみはありません。手入れは植木屋さん(プロ)がやるし、芝生敷いてると庭の中に入れないし…。
 だから、私にとって「庭」というのは窓から見える背景にすぎませんでした。「自分の庭」という実感がなかったんですね。
 それが、建て直しで庭の面積が半分くらいに減ってしまったのをきっかけに、更地から新しく庭を作り直すことになったんですが、今度はできるだけ手がかからないようにと、芝生もやめ、花壇中心のイングリッシュガーデン風にすることに。
 造園業者の人に頼んで花壇を作り、シンボルツリーといろいろな植物を植えてもらったのがちょうど一年前の春のことでした。

 最初は「こんな狭いスペースに庭なんて作っても…」と思ったんですが、植物を植えていくとそれなりにさまになり、狭い分庭が身近に感じられるようにもなって、1日に何回も花壇の植物を観察しにいくようになりました。
 植物って、一見動きがないように見えるけど、1日目を離すと急に生長してたりするんで、油断できません。まるで「だるまさんがころんだ」状態です。
 その楽しさに目覚めてからは、家の中には観葉植物、玄関先には鉢植え、庭先には野菜を植えたプランター…とむやみやたらにまわりに植物が増えていき、気がつけばすっかり植物好きのおばさんに…。
 朝起きると、まずは家中の植物の様子を見に「回診」してまわり、「◯◯さん、ご気分はいかがですか〜」「顔色悪いのであとで点滴打っておきましょうね〜」と語りかけるさまは我ながらキモい(笑)。
 こうなるともう庭は背景ではなく、家の一部って感じです。

 自分がそうなってみると、周囲には意外と園芸好きが多いことがわかってきました。
 特に40代以降。男性は専門的かつ本格的にやる人が多いようですが、ちみちみと手軽に楽しむのは女性の方が多いですね。
 今までもまわりに園芸好きの人はそれなりにいたんだと思いますが、自分にまったく関心がなかったので眼中に入らなかったんですね。つくづく無関心っておそろしいです。
 庭を造ってくれたガーデナーさんは、まだ20代の若い女性なんですが、彼女も「ある日突然植物に強烈な関心が芽生えた。それまでは微塵も興味がなかった」と言ってました。
 植物にはなにかそういう「人の中にあるスイッチ」を突然起動させるような不思議な力があるみたいです。

 今思うと、植物に対するスイッチが入った時期というのは、心身ともに疲れていて、とにかく「なにも考えずに休養したい」と思っていた時期でした。
 最初は「まあせっかく新しい庭もできたことだし、春だし、新しく花や植物でも育ててみようか」くらいの軽い気持ちだったんですが、やり始めてみるとこれが想像以上に「心を癒す」効果があることに気づいて自分でもびっくりでした。
 みずみずしい花や緑は、そこにあるだけで心が浮き立ってきますが、もっとも心が躍ったのは、「花や植物が育つ瞬間」を目撃することでした。
 種を蒔いて芽が出る。
 花芽がついて花が咲く。
 ただそれだけの変化がどうしてこんなにも嬉しいのか。
 子供もいないし、動物にも興味がない私の中で、今まで使われずじまいだった「母性」がここで一気に使われたような気がしました(笑)。

 まあ人でも動物でもちっちゃいうちはかわいいわけですが、植物も同じ。
 ちっちゃい新芽のかわいさといったらたまりません。
 たとえばこれ。
 


 観葉植物(ホンコンカポック)の新芽です。
 最初はこれよりもっと小さいんですが、大人の葉っぱの間にこれをみつけたときはあまりのかわいさにキャアキャア騒ぎながら毎日葉っぱをかきわけて眺めていました。
 まあ、もうちょっと大きくなって思春期を迎えると「ジロジロ見てんじゃねえよ、クソババア!」とか言うようになるんでしょうけど。



 こちらはスナップエンドウ。
 クシャクシャの花ガラを脱ぎ捨ててピカピカのサヤが出てくる瞬間は神々しさすら感じます。

 そんなこんなで、しばらくは植物との蜜月時代が続いたんですが、まもなくその関係に亀裂が入り始めました。
 原因は……「虫」です。
 そう。ガーデニングといえば絶対に避けては通れないこいつが出現し始めたのです。
 「虫は絶対にダメ!」ってほどではありませんが、ガーデニングをやっていると、ちょっとやそっとの虫では済まないんですよ。
 世にも凶悪な顔をした禍々しい色の虫に遭遇して息をのんだこともありますし、単体ではなく連隊を組んで攻めてこられて鳥肌が立ったこともありました。連隊はさすがに……きつい
 いやー、害虫がこんなにバラエティ豊かだとは知りませんでしたよ。

 もっとも腹立たしかったのは「ナメクジ」です。
 やつらは夜行性なので、昼は土の中で眠ってるんですが、夜になるとはいだしてきて、花から実から葉っぱから根っこから手当たり次第「食う」のです。
 これにはほとほと困り果てたんですが、ガーデニング好きの友人から「小皿にビールを注いで、夜中に花壇のあちこちに置いておくと、ナメクジがいっぱい捕獲できるよ」と教わり、試してみたら……!
 …ぅうぉ〜!
 翌朝、ちっちゃいナメクジの溺死体がビールの中にいっぱい!!
 たしかにすごい効果です。
 味をしめてしばらくはこの方法を続けていましたが、毎日となるとビール代もバカになりません(あと溺死体の処分も気持ち悪い…)。
 自分が飲むならともかく、ナメクジのために買いにいくというのも釈然としません。
 そこであるとき、「似たようなものだろ」と発泡酒に変えてみたんですが、変えたとたん、ぴたっとナメクジは寄ってこなくなりました。
 く〜! なんて口のおごったやつらだ。
 少なくとも田村正和よりはナメクジのほうがグルメらしい。

 そのうちに梅雨になり、夏がくると、植栽可能なものも少なくなり、虫でモチベーション下がった私のガーデニング熱はさらに低下しました。
 だって外暑いんだも〜ん。
 完全に育児放棄です。
 まあいいや。秋になったら涼しくなって虫もいなくなるだろうから、それからまた始めようっと。

 が、ガーデニング初心者の私はまだ知らなかったのです。
 秋の枯れ葉がどんなにすさまじいかを。
 裏が公園ということもあって、落葉期の枯れ葉の量ときたら、そりゃあ半端じゃありませんでした。
 もちろん、枯れ葉の来襲はその年に限らず毎年あったんでしょうが、何度もいうように今までの私はガーデニングに微塵も興味がなかったので、枯れ葉すら目に入ってなかったんですね。

 最初のうちこそ「枯れ葉は土のいい肥料になるから」と掃いたりよりわけたりしていましたが、そのうちにそんなものでは追いつかなくなり、ほとんど豪雪地帯のように枯れ葉が堆積してくるように。
 「土の肥料」とかいう以前に、土よりも枯れ葉の方が多いじゃん!という状況にぶちきれ、結局秋もガーデニング熱は下がったままでした。
 そして季節は冬になり、私の中ですっかり「ガーデニング熱」は終息したかにみえました。

 ところがです。
 再び春が巡ってきたとき、またまたガーデニングスイッチが再起動したのです。
 もちろん、いろいろな花が一斉に咲きだしたことでやる気を刺激されたというのもありますが、去年にはなかった特徴として、「2年目の花を見る喜び」という醍醐味が加わりました。

 植物は「もっとも身近で体験できる奇跡」だと私は思います。
 もう捨てようかと思うくらい汚らしい枯れ枝だけの状態だったのが、ある日突然新しい葉っぱがついたり花芽がついたりする。
 ついこのあいだまで、とても花なんて咲きそうにない状態だったのに、1週間もしないうちに花でいっぱいになる。
 これを奇跡と言わずしてなんと言いましょう。
 夏・秋・冬と育児放棄していたくせに、こうなると現金なもので「この子は私が育てた!」とばかりに急に干渉し始めたりするんですよねー、これが。
 思わぬ出世をとげた人がいると、急にすり寄ってくる親戚みたいなもんです。

 でもガーデニングシーズンを一年経験してようやくわかりました。
 やはり、ガーデニングの楽しさは「春」に集約されているのだということを。
 子供が生まれた瞬間が一番嬉しいように、ガーデニングも春が一番楽しい。
 あれもやりたい、これもやりたいとどこまでも夢が広がる。
 しかし、やがてめんどくさい現実が次々に押し寄せて来て、思うようにならない季節がやってくる。
 「ああ、春はすべてがきれいでよかったな〜」と遠い目をして思うようになる。
 子供も植物も同じです。
 だけど、ガーデニングは子育てと違って毎年仕切り直しができます。
 去年の数々の失敗を忘れてまた夢をみることができるのです。

 多分、今年も夏になれば急速にガーデニング熱は冷めていくでしょう。
 それでもいいかな。と今は思います。
 春に一年分楽しめればあとは放置でもいいじゃん。と。
 ちゃんとしたガーデナーから見たら顰蹙を買いそうですが、きちんとやろうと思うとガーデニングってほんとに大変なんで、自分の身の丈に見合った適当さで楽しめればそれでいいかなと。
 そういう人にはそういうやり方にあった植物がついてくるんだろうし。
 手のかかる繊細な植物もあるけど、放置でもたくましく育つ植物もあるし、その違いを楽しむ余裕があれば、失敗しても挫折してもそれもまたよし。ですよね。

 最後になりましたが、これを機会に今うちで育っている植物の一部をご紹介しますね。

 


 2階のベランダで育ててる植物です。
 左はイチゴ。昨年の苗の子株をとりました。花弁が落ちたあとに残った中心部分が大きくなって「イチゴ」になります。
 昨年は1階の庭で育ててましたが、ナメクジの被害がひどいので、今年は2階で育ててます。
 右は水仙とラベンダー。
 ラベンダーは蒸し暑さに弱いので、花が咲き終わったあとは何回も刈り込んで、夏や梅雨期はエアコンのきいた室内に避難させました。過保護にした甲斐あって、春になったらまた花が咲きました。
 この他、ベランダには、「ミニバラ」「ビオラ」「カンパニュラ」の寄せ植えプランターと、「リーフレタス」「ハネギ」「シソ」「バジル」「ルッコラ」などのハーブ類があります。

 


 左は玄関前の寄せ植え。
 玄関前って人目につくんで、涸らしてるといかにも手入れを怠ってるみたいで気になります。
 右は花壇の端っこにあるクリスマスローズ。
 クリスマスに咲くのかと思ったら、咲くのは4〜5月なんですね。
 最初は白かったのに、時間がたつと保護色のような緑色に。あまりに地味なんでうちでは不評です(笑)。

 


 左は現在花壇の中心になっている花群。
 真ん中はアネモネ。紫は友達から里子に出された苗で、赤と白は園芸店で買った苗ですが、友達の苗の方が何倍もでかくて勢いがいい。飼い主に似るのかなー(笑)。
 黄色いお花はエニシダで、手前の薄紫の小花はプリプレア。
 プリプレアは1年目はまったく咲かなかったのに、今年はものすごい勢いで咲いています。
 右はプランターのチューリップ。

 


 左はサクラソウ。
 昨年の春、箱根に旅行したときに強羅公園で買った苗です。
 植えたときはもっと小さくて元気なかったけど、1年たったらガンガン花芽が出てきてこの通り景気よく咲いてます。
 右はソラマメの花。
 蝶々がとまっているような、野菜とは思えない可憐な花ですが、惜しむらくはとても虫がつきやすい。
 野菜は花が咲いたからといって必ず実になるとは限らないのでこれも収穫できるのかどうかは微妙。



 最後の写真。
 さてこれはなんの花でしょう?
 「菜の花」と言いたいところですが、「菜」のつく野菜はみんな最後はトウダチして「菜の花」になるので、なんの「菜っ葉」かというのが問題。
 答えは「チンゲンサイ」です。
 秋蒔きでプランター栽培していたんですが、いくつか収穫し残していたら、春になって花が咲いていたのでびっくり!
 ガーデニングってこういうサプライズもあるのが楽しいです。
 

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幻の「金露梅」は大正モダン風味

 徳島の社会人劇団「芸能塾ONE」さんが、2年前に一葉会の旗揚げで上演した作品のうち、凪野さんの「ラブ・ストーリー」と私の「セッション」を上演してくださることになったので、日曜日に徳島まで観に行ってまいりました。
 研修生の卒業公演もそうでしたが、すでに上演したことのある作品をべつのところが上演するというのは本当におもしろいものです。
 その都度新しい発見があって興奮したり、「この人はこういうふうに解釈したんだ。なるほど〜」とニンマリしたり…。

 今回は「急な予定変更」であまり時間がないと聞いていたため、「リーディングならそれほど時間をかけないで作れるのでは?」と一葉会でやった作品を提供させていただいた経緯があるのですが、蓋をあけてみたらけっこう稽古を重ねたあとがあり、「これならリーディングじゃなくて普通のお芝居としてやってしまえばよかったのに」と思うくらい芝居に近い出来でした。

 ただ、まあそれは結果論であり、シンプルな「リーディング」だと思えばこそ、テキスト(人物像)の読み込みにじっくりと時間をとることができたのだろうし、最初から普通のお芝居として作っていたら、やることが多すぎてもっと余計なものが付加されていったかもしれません。
 とにもかくにも、「芸能塾ONE」の皆さん、お疲れさまです。そしてありがとうございました。

 さて。本来ならば、私は徳島まで行ってそのまま観光もなしでとんぼ返りするような人間ではないのですが、今回は方位が良くないため、おとなしくそのままどこもまわらずに帰ってくることにしました。
 ちょうど病み上がりだったし、天気もあまり良くなかったし、そういう意味ではあきらめがつきました(笑)。
 とはいうものの、やはりお土産くらいは買っていきたい!
 ほんとはそれもNGなんだけど、食い意地の張った私は我慢できずに駅ビルに飛び込んで徳島名物を一気買いし、速攻で自宅に送ってしまいました。

 徳島には名産品がとても多いです。
 まず、なんといっても「すだち」ですね。
 そっくりさんに大分の「カボス」がありますが、私は「すだち」のほうがくせがなくて香りもさわやかで好きです。知名度は「カボス」のほうが一枚上ですが。
 すだちは東京にも売ってるけど、高いし、やっぱり徳島で買うすだちのほうがおいしいです。
 でもすだちの旬は8〜10月。3月くらいまではかろうじて貯蔵したものが出回りますが、3月から8月まではハウスものしか出回りません。ハウスものは値段がはねあがるので、日常使いには不向きです。
 そんなわけで、駅ビル内にも今はすだちは出ていませんでした。残念!
 今回は「すだち酢」と「すだちマーマレード」の加工品で我慢。

 お次は「うどん」。
 四国といえば、お隣香川の「讃岐うどん」が有名ですが、徳島には「たらいうどん」なるものがあります。
 文字通り、茹であげたうどんをたらいに移し、大勢で囲んで出汁につけて食べるもの。もとは山仕事をしていた人たちが仕事納めに食べるごちそうだったそうです。
 湯に浸かりっぱなしになるので、麺はかなりコシが強いです。
 これは購入しました。

 麺で言えば「半田そうめん」も有名。
 これまたそうめんとは思えないくらい太くてコシがあります(ほとんどパスタ並)。
 太さが1.3ミリを越えると「そうめん」ではなくて「ひやむぎ」に分類されるので、本当は「そうめん」とは言えないのかもしれませんが、手延べなので太さにむらがあり、正確に言うと「そうめん」の部分あり、「ひやむぎ」の部分あり…といった感じでしょうか。
 これも購入。

 うどんだけではありません。
 徳島には「徳島ラーメン」なるものもあります。
 でも、店によって形態がいろいろで、今ひとつ定義がわかりません。スープがかなり濃いことは共通してるようですが…。
 一応、「白スープ系」を購入してみました。

 海産物系では「鳴門わかめ」に「阿波の干しえび」。
 両方とも肉厚で噛みごたえがあって存在感たっぷりです。
 鳴門は鯛も有名だし、鳴門金時も有名ですね。
 わかめと干しえびは購入しました。

 それから「和三盆」も忘れてはなりません。
 コーヒーと一緒にかじるとおいしいんだ、これが。
 コーヒーに溶かすんじゃなくて、コーヒー飲んで、和三盆をちびちびかじって、これを交互にするのがおいしいの
 このときのコーヒーはブラックが基本。ミルクを入れると和三盆の味がはっきりしなくなります。
 これも当然購入!

 徳島には「和三盆」を使った和菓子もいっぱいあります。
 あまりにいろいろあるので、どんなお菓子がいいのかと、徳島の方にお聞きしてみました。
 そのお返事の中にふと気になるお菓子が1種類…。
 なんでも「徳島の人も知らない人が多い隠れた逸品」らしい。
 その名も「金露梅(きんろばい)」

 隠れたといっても、JRの駅ビルの土産物品コーナーには並んでるんですよ。
 でもそれ以外(たとえば空港とか)では見かけないので、JRの駅を使わない人は意外に知らないのかもしれません。
 紹介者本人も「知ってるけどまだ食べたことがない」とか。
 でもとにかく、予想を裏切るようなお味で、口に入れるとびっくりするという噂。病み付きになる人も多いという話でした。
 そこまで言われたらもう気になって他のお菓子なんて目に入らないですよ。
 で、買ってきました。「金露梅」。



 まずパッケージがなんとも不思議だと思いました。
 箱の金文字も個別包装の金紙も一種独特なレトロな感じだし。
 和風?洋風?
 っていうか、大正モダンって感じ?
 包みを開けるとチョコレートで薄くコーティングされた5弁の花びらの形のお菓子が登場。直径は2.5センチ。高さも同じくらい。一口サイズって感じでけっこう小さいです。
 チョコレートが出てきたところで、無意識のうちに「じゃあ中身は小麦粉系の生地と生クリーム系のクリームかな。梅の形だし、梅の酸味もちょっと入ってるかも」と脳内で味をシミュレーションし、口に入れたとたん「おぉ!」
 …と驚愕。

 なんと、中身は和菓子ですよ、和菓子。
 チョコレートの向こうは白餡だったんです!
 白餡というとねっとりしてそうですが、この白餡はあまり密度が高くなくて、餡というより白インゲン豆をすりつぶした感じがきっちり残っています。
 にもかかわらず、口に入れるとホロホロと崩れていき、あっという間に消えてしまう。このはかなさ加減は和三盆の感触に似ています。

 あとで調べてみたところ、白餡部分にはミルクと卵黄が練り混ぜられているようで、チョコの内側でも和と洋のコラボレーションが行われていたんですね。
 結局「梅」はシルエットだけかい!とやや腰砕けにはなりましたが、それを差し引いても充分楽しませていただきました。

 欲を言えば、チョコレートの味はもうちょっとビターでもよかったかも。
 中の餡にも卵やミルクが入っていて(決してしつこくはないけど)甘めなので、コーティングはミルクチョコよりも思い切ってビターチョコにしたほうが中身がひきたつんじゃないかなと思いました。
 まあ、あくまでも私の好みですけど。

 以上、徳島の味覚についてのレポートでした。

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寝て、食べて、呼吸できるということ

 冬ドラチェック、後編をアップするのは無理だろうと自分でも思っていましたが、やっぱり無理でした。というか、ドラマどころの話じゃない状況に…。
 2月の一大イベント(東京デビュー公演)が怒濤のように過ぎ、それが無事終わったところで予定通りきっちり倒れました。
 今回は私の体力のキャパをはるかに越えるイベントだったので、ただでは済まないだろうと覚悟はしていましたが、結果として覚悟以上のツケを払わせられることになりました。

 そもそも公演前からずっと興奮と緊張と不安で熟睡できなかったんですが、公演期間中はもちろんのこと、公演が終わってもしばらくはまだ神経がピリピリして気が張った状態が続いていて、24時間体の力が抜けないような感覚が続いていました(だから疲れすら感じなかった)。
 まわりからは「公演が終わったんだからゆっくり休んでね」と言われ、自分でも休養時間は充分とっていたのですが、肝心の体が休む体勢に切り替わらないのですから事実上休めてはいなかったんでしょう。
 あまりにも力一杯走ると急には止まれず、無理に止まろうと思い切りブレーキをかければその反動で体にダメージを与えますよね。
 それと同じで、今回もある臨界点に達したところでまとめてダメージが襲ってきました。

 それは公演から1週間後のこと。
 始まりは風邪でした。一晩中眠れないほどの喉の痛み。「やられた!」と思う間もなく発熱。そして久々の喘息発作。
 最初は近所の病院へ抗生剤と発作止めの点滴に通い、あとは飲み薬をもらってじっと回復するのを待っていたのですが、1週間たってもよくなるどころかどんどんひどくなり、毎晩苦しくて眠れないうえに最後は薬が強すぎて胃もやられてしまったため、「これはもう終日点滴つなぎっぱなししかない!」と観念して入院しました。

 入院時には喘息はピークをすぎていたんですが、抗生剤をずっと投与しているにもかかわらず今度は気管支炎に移行し、肋骨が折れそうなほどの激しい咳に見舞われ、咳のしすぎとステロイド投与のせいで頭の中がずっと興奮しまくって(いわゆる交感神経が過剰に働いている状態)、24時間眠れない!
 いや、正確には多少は寝てるんだろうけど、自分ではとても寝たとは思えない浅い眠りしか得られず、脳内は常にお祭り状態という感じ。
 病気でへとへとなのに眠れないって拷問ですよ。拷問。

 でもさすがに点滴つなぎっぱなしは効果てきめんで、4日で点滴から経口に切り替えられ、1週間後にはほぼ回復して退院することができました。
 退院した日は2週間ぶりにぐっすりと熟睡することができて、このとき初めて全力疾走の状態からかけたブレーキが完全に停止した気がしました。
 その日を境にようやく副交感神経が優位に働くようになり、今は驚くほどおだやかでクリアな気分になっています。
 まさに「嵐のあと」の「明鏡止水」の心境。
 とにかく眠れて、食べれて、普通に呼吸できることが心地よくてたまらない。
 砂地に水がしみこむように体がそれを喜んでいるのがわかります。
 某ドラマのタイトルじゃないけど、これこそが「ありふれた奇跡」なのだと心の底から思います。

 入院なんてしないにこしたことはないけれど、ここまでシンプルに生命維持機能に感動できるのは、それが危機的状況に陥るような経験をしたからだと思います。
 人間、まず呼吸して、眠って、食べて、出す。それが最低ラインの基本です。
 その上に、身だしなみを整えるといった衛生的なレベルがあって、自分の身の回りの雑事をこなせるレベルがあって、「仕事をする」なんていうのはその一番てっぺんにある高度な営みなわけで、そのてっぺんから一番下まで一気に落ちると、その間にあることは一瞬にしてすべてどうでもよくなってしまいます。
 そこまでリセットされたうえで最低ラインの確保から再びスタートすると、そこから一段階ずつ上にあがっていく嬉しさといったらないですよ。
 下がっていくときは地獄なのに、同じ景色が上がっていくときは輝いて見える。
 たとえていうなら、引っ越しの荷物整理のしんどさと、新築の家に新しく家具を入れてどこになにを収納しようか考えるような楽しさみたいな感じ。
 これだけは健康な人には味わえない幸せだと思います。
 幸せって「持ってる」だけでは不十分で、「持ってることに気づく」ことが必要だと思うので。

 体調が元に戻ればそんな「幸せ」も現実のストレスの中に埋もれてしまうのでしょうが、もうしばらくこの「幸せ」を反芻したいと、寝たいだけ寝て、食べたいだけ食べて、呼吸したいだけ呼吸している毎日です。

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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