忍者ブログ

古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

春ドラも終盤に入りましたが……

 もう半分以上すぎた春ドラですが、フランソワさんが律儀にアップしていたので私も頑張ってあげてみます。

 現在見ているのは8本です(大河と朝ドラを除く)。
 1話で脱落したのが「猟奇的な彼女」と「キミ犯人じゃないよね?」の2本。
 最初から録画してるけどまだ1話も見てないのが「パズル」。
 最初から見てないのが「ROOKIES」「7人の女弁護士」「ごくせん」の3本(基本的に続編は見ないので。「渡鬼」は見てるけどね)。

 8本全部コメントするのもしんどいので、5本だけ(たいして変わらないか)。

「ホカベン」

タイトルの印象でコメディタッチの群像劇を想像していたら全然違いました。
いまどき珍しいほど直球シリアスです。正面からど〜〜〜ん! 笑いいっさいなし。みたいな。
現役弁護士が原案というだけあって、実際に弁護士が直面するであろう現実的な悩みがなまなましく描かれています。
今までドラマに出てきた弁護士ってほとんどが個人営業かもしくは少人数の自営で、組織人という印象が薄かったんですが、今回のヒロインは大手の法律事務所に入ったばかりの新人という設定で、扱う事件やクライアントに悩む以上に「法律事務所という組織」あるいは「弁護士という職業」あるいは「法律そのものの意味」に悩むんですね。この視点は新鮮だし、ヒロインが味わう苦悩もよく理解できます。
弁護士になったからこそ見えてくる日本の「法」のあり方。
正義が相対的なものになるというおそろしさ。
弱者を自ら傷つけなくてはならない弁護士という職業の業の深さ。などなど。
裁判員制度実施を控えた今、多くの人に見てもらいたいドラマですが、残念ながら視聴率はパッとしない模様。
ドラマとしてはストレートすぎる作りでもう少しふくらましようがあるのでは?と思わなくもないですが、作者はこれを書かずにはいられなかったんだろうなと思われる問題意識とかパッションを強烈に感じるので、それにひっぱられてつい見てしまいます。

上戸彩と同期生役の加藤成亮はどっかで見た顔だと思ったら(←ジャニーズにうとい私)……おお、「金八」で性同一性障害の上戸彩と同じクラスだったハセケンではないか!
3B仲間だった2人が今や弁護士役で共演とはねえ。しみじみ。
でもハセケンさー、メガネが超似合ってないんですけど。つかメガネだけが浮いてるんですけど。かけるならもっと普通のメガネにすればいいのに、なんであんなに目立つフレームにしたの?
メガネの一点だけでどうしてもハセケンの役に違和感をおぼえ続ける私です。

「おせん」

これについては6/4発売号の某TV雑誌に書いているので詳しくは触れません。
おせんのキャラはかーなーりー原作とかけはなれてますね。
原作はもっと粋でコケティッシュで天衣無縫って感じなんですが、蒼井優のおせんはぽわ〜んとして浮世離れした世間知らずのお嬢さんって感じ。
蒼井優に原作のイメージでやれといっても無理だろうし、キャラ変更はそれはそれでありだと思うんですが(原作のおせんはみんなにとってのカリスマですが、TVのおせんは「守ってあげたくなる」タイプ)、メインのキャラを変えるなら、それに合わせて周囲のバランスも考えないと…。
どうもね、老舗料亭にしてはメンツに風格ないっていうか、もう少し老舗然とした気むずかしそうなメンツを揃えてほしかった。そういう人たちがおせんのような頼りない小娘をまつりあげるからこそおせんの価値も上がるのではないでしょうか。
今のところ、常連もあまり出てこないし、おせんの信奉者がもっといっぱい出てきてもいいんじゃないかっていう物足りなさを感じます。

一部では板前が長髪なのがありえないと非難されてますが、それよりも気になるのはおせんの髪です。後ろの髪を片側にまとめて前に垂らすアレね。
あれがもう気になって気になって。食べ物扱う人がアレはないでしょ。
ハセケンのメガネと同じくらい気になります。
普段はあの髪型で、お客の前に出て給仕するときはアップにするというならわかるけど、逆っていうのがよくわからん。

「無理な恋愛」

これ、けっこうお気に入りのドラマです。今期一番のおすすめです。
人物造型を空気感から作っていく岡田さんの脚本らしく、登場人物全員が実際にいそうな存在感をかもしだしています。
それだけでなく、全員が「しどころ」を与えられているので「便宜上出しました」という役がない。これって大事なことです。
前半は笑えるタッチ中心でしたが、中盤に入って大人の人生のほろにがさみたいなものもしみじみ出てくるようになって、バランスのいい上質なドラマに仕上がってます。

夏川結衣は「結婚できない男」以来「崖っぷちの女」という役どころを当たり役にしたようですね。
今回は「女優になる夢をもって一緒に上京し、いまだに再現ドラマで頑張ってる幼なじみ同士」という設定の鈴木砂羽とのコンビがいい味を出してます。
再現ドラマの扮装をしたまま休憩時間に悩みを愚痴りあうという図がなんともおかしくて。
「やだ! しわを書いたら私お母さんにそっくり」
「私なんてほら、おばあちゃんに似てるんだから」
「いやー、ほんとだー。リツコのおばあちゃん、なつかし〜!」
というやりとりには爆笑しました。
「あるある」というのと同時に、この2人が小さい頃から家をいったりきたりするくらい古いつきあいなんだということがごく自然にわかってほほえましかった。
しかし、この再現ドラマ、若い女性以外の役すべてをこの2人でやってるんだけど………男の役くらい男を調達しろよ>ドラマの中のTV局
しかも常に鈴木砂羽のほうがコスプレ度のハードルが高く、ニューハーフからエロジジイまで演じちゃうんですよ(そしてそのメイクのまま休憩室でリアルの恋バナをする)。最後はどこまでいっちゃうんだろうとちょっと心配です。

ドラマの中でおおっと思ったのは、夏川が堺正章のために「今日はごちそう作って待ってますから!」というシーン。
なにを作るのかと思いきや、なんと「ロールキャベツ」だったんですよ!
そう。「結婚できない男」で夏川は、ロールキャベツばっかり作って阿部ちゃんに「ふん。またロールキャベツか」と鼻で笑われる役をやってました。
この作品で夏川ファンになった人ならこのネタに反応しないわけがありません。
絶対これは狙ったね!
考えてみれば、脚本家こそ違うけど「結婚できない男」も同じ枠のドラマでしたね。
前クールの「あしたの、喜多善男」でも中年男が主人公だったし、この枠ってなんか加齢臭が漂ってませんか。
でもドラマのレベルとしてはどれも高いんですよ。もうここまできたら毎クールおっさん主役で作ってくれ。1つくらいそんな枠があってもいいじゃないか。

「Around40〜注文の多いオンナたち」

最初は「なんかコンセプトばかりが目立って登場人物の肉付けが薄いドラマだなー」と思ってましたが、徐々にこなれてきた感じです。
精神科医の聡子(天海祐希)は「結婚」、専業主婦の瑞恵(松下由樹)は「仕事」、雑誌編集長の奈央(大塚寧々)は「子供」。
それぞれ自分に欠けたものを求めてじたばたするわけですが、正直奈央だけが全然共感できません。
聡子、瑞恵は、本当にそれがほしいと思う気持ちがわかるんですが、奈央は「本当に子供がほしい」というよりは、「みんなが持ってるものは全部手に入れたい」という動機にすぎない気がして。
きっとこういう人は、子供が産まれたら産まれたで、自分のキャリアの道具に平気でするんだろうな。この人見てると自分以外の人間はすべて「利用する」ためにあるんじゃないかって気がしてならない。そういう人は結局自分が利用される羽目になるんですけどね。
あげくのはてに「こんなに頑張ってるのにどうして私だけこんな目に遭うの?」とメソメソするのもうざい。頑張ってるのにうまくいかないのはあんただけじゃないんだっつの。
そのくせ、頑張って初めて契約が1件とれたと喜ぶ瑞恵に「1件くらいでそんなに喜ぶなんておめでたい人」とか言って水を差すし、人が頑張ろうとすることについては「そんなの無理」とか簡単に決めつける。相当性格悪い。ていうか人として未成熟だと思います。
聡子も瑞恵もなぜか彼女には寛容で、彼女に意見できるのは幼なじみのまーくん(筒井道隆)だけなんですが、彼はじつは奈央に惚れていて、しかも奈央は彼を軽く見ているという関係のため、視聴者としてはイライラする一方。

私が一番好きなのは主婦の瑞恵です。
一生懸命家族のために働いているのに、夫にも息子にもいちいち舌打ちされ、「パン買って食べたから」と息子が残してきた弁当をもったいないからと一人で黙々と食べる姿が「あるある、こういうの」と妙にリアルで、しかも豊満な松下が演じていると「そうだよね。こうやってみんなが残したご飯食べてたら体重も増加するよね」という説得力もあり…(笑)。
夫の舌打ちに傷つき、一念発起して仕事を始める瑞恵ですが、コピーのソータ機能を知らなくてコピーに時間がかかり、社員にも舌打ちされてしまいます。
私もオフィスから離れて久しいのでコピーの多機能は使いこなせないクチですが、一瞬のうちに書類を仕分けしてホチキスどめまでやってくれるコピー機を見せられたときには「こんなに簡単にできるなら舌打ちとかしてないでてめえが自分でやれよ(怒)」と思ってしまいました。新人に教える手間を省いて成果だけ望むのは横着というものでしょう。
ともあれ、失敗しても恥をかいてもすぐに気を取り直して次へ進もうとする瑞恵は、ちょっと勘違いや天然ボケも入っているものの、3人の中では一番応援したくなるキャラです。
松下といえばキャリア女性の役が多く、それこそコピーも満足にとれない主婦がいたら「ちょっとあなた、なにやってるの。このくらい派遣会社で教わってこなかったの(舌打ち)。もういいわ。休憩いってちょうだい」とか言いそうなイメージなんだけど、今度はいじめられ通しなのが笑える。でもこういう役はこういう役でホワッとかわいらしくできてしまう松下由樹がすごい。

聡子については、キャリアが高すぎという点を除けばけっこう今の時代ならではのキャラだと思います。
昔はなにかを諦めなければならない時期(リミット)が早かったので、迷うのも悩むのも若いうちだけで済んだけど、幸か不幸か今は違います。
40っていったら、ちょっと前までは「出産はもう無理」「結婚も後妻とか連れ子ありならともかく、恋愛なんて無理」だったけど、今は40代の出産は珍しくないし、年下男とのカップルも市民権を得ている。
つまり「無理」と言われれば、無駄な欲望はあきらめておとなしく自分のもっているもので幸せを追求できるのに、なまじ可能性がいつまでも残されているためにずっと煩悩から離れられないってことです。
可能性があることはいいことだけど、それにふりまわされると自分を見失い、焦りだけが増幅していく危険もあります。
まーくんのように「自分は自分。これでいい」と立ち位置を決められる人が一番幸せなのかもね。
まーくんを見ていると「無理な恋愛」に出てくるムッシュかまやつを思い出します。あれもまだ恋愛したいとじたばたする60男がかまやつのところにいりびたってたな。
で、散々愚痴っては「いいよね〜、あんたは」っていうと、かまやつが「心の底からそう思ってないでしょ」と返し、「うん。思ってない」と答えるパターンで終わる。
まーくんもそういう存在だね。みんながいりびたってじたばたして愚痴りまくるけど、まーくんはいつも変わらずそこにいる。北極星みたいな存在だね。でも自分が北極星になりたいとはみんな思ってないんだな。

それにしてもまーくんの店、3人娘とその関係者以外の客が入ってるのみたことないんだけど大丈夫なのか?
それなのにメニューにない料理もサッと出てくる。どんだけ材料無駄にしてんだ。
ハセケンのメガネとおせんの髪の毛と同じくらい気になる。
瑞恵も知らないおっさんの店なんてはやらせてないで、まーくんの店の経営状態のことも心配してやれよ。

「ラスト・フレンズ」

DV、性同一性障害、セックス恐怖症などなど、フツーの人が一人も出てこないドラマ。
ただ、これだけのネタが揃ってるわりにはヘビーでも暗くもないです。
わりと記号的にスーッと扱われちゃってる感じで。
DVについては、このあいだ仕事で相談窓口の人に取材したことがあるんで、ああいったことがあるのは知ってましたが、ちょっといくらなんでも暴力ふるうの早すぎっしょ。
最初は人の携帯覗き見してただけで充分異様なものを感じますよ。
それで「え?」と思うと次の瞬間はいつものように優しいんで「気のせいか」と思う。
次は交友関係についてしつこくきいてきて違和感をおぼえるけど、次の瞬間はやっぱり優しいんで「気のせい」だと思う。
次は反論したらいきなり殴られてびっくりするが、相手があわてて謝ったので不安に思いながらも受け入れてしまった。
そういう過程を少しずつ重ねていって、気がついたら殴られるのが日常になってた……っていうならわかるんだけど、一緒に住んだ翌日にいきなりここまでのことが一気に起こるというのは、いくら初回で衝撃的にしたかったからってやりすぎです。

DVは一種の洗脳です。
洗脳期間がないまま描かれても「このまま逃げるのが普通でしょ」とまわりに思われるだけで、逃げない女が間抜けに思えてしまう。
少なくとも最初は1回手が出ただけにとどめてほしかった。
それならとびだしていった彼女を追いかけていって必死に謝る彼の姿に次へつながる何かが見つかったと思う。
だいたいあんなにボコボコに殴られて、あざひとつできず、誰も異変に気づかないのはありえないでしょ(2回目のときは顔が変形しててみんな大騒ぎしてたけど)。
そもそもDV男は外面はすごくいいんですよ。
彼女の友だちに対してもっとうまくふるまって、友だちが「いい彼じゃない。あんなに謝ってるんだから戻ってあげなよ」と言い出すくらいのことはすると思う。
その中で瑠可だけが「あの男は危険」と見抜くとかね。
なんかまわりの反応がみんな一緒だから薄っぺらに見えちゃうんですよ(瑠可の家族にしても同様)。
今のままだと宗佑は単にホラーの殺人鬼みたいな理解不能の存在で終わっちゃいそう。
それにしてもあのシェアハウス、共同スペースのリビングは広々として快適で心地よさそうだけど、一人ひとりの部屋は狭くて暗くて殺伐としててなんか独房みたい。
それも彼らの人間関係を象徴しているのかな。

余談ですが、私は「瑠可」って名前がなにかのキーワードかと思ってました。
ルカといえば聖人の名前なので、親がクリスチャンなのかなと。
私の高校時代の同級生にもいたんですよ。「サラ」「ルツ」「イサク」という3姉弟が。
やっぱり家がキリスト教徒でした。
瑠可がセクシャルなものに嫌悪感をおぼえるのは、厳格なクリスチャンの両親による抑圧の結果かなとか想像してました。
性同一性障害よりそっちのほうがおもしろそうなんですけど。

 長くなりましたが以上です。
 皆さんのお気に入りのドラマはなんですか?

拍手[0回]

PR

この記事へのトラックバック

トラックバックURL

カウンタ

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

お天気情報

ブログ内検索

アクセス解析

バーコード

Copyright ©  -- 古伊万里★新伊万里 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]