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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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「温故知新」の夏ドラ2本

 夏ドラが始まって約1ヶ月。
 皆さんは何をご覧になってますか?

 今期は全体的に視聴率が低めのようですが、私のイチオシは「パパとムスメの7日間」(日曜9時/TBS)「地獄の沙汰もヨメ次第」(木曜9時/TBS)の2本です。

 ともに「あれ? こういう話、前にも見たことあるような気がするんですけど…」という既視感が強い題材なんですが、それぞれちゃんと進化をとげており、おさえるべき要素もしっかりおさえているので、安易さは感じられません。

 「パパとムスメ〜」は、古くは「転校生」に代表される“入れ替わりもの”で、50近いお父さんと、高校生の娘の心と体が入れ替わってしまうというのが今回のシチュエーション。母娘入れ替わりの話も昔ありましたが、父娘はさらに強烈!
 しかもこの父娘、あんまりしっくりいってなくて、娘は父親に直接口を聞かないというお年頃。これが入れ替わっちゃうんですからそれはもう大変です。

 ただ、この手のドラマのキモは、「入れ替わることによってお互いの気持ちや立場が理解できるようになり、絆が深まるまでの過程」にあるというのが相場ですが、「パパとムスメ〜」の場合、けっこうすぐに協力体制に入るっていうか、入れ替わるやいなやいいコンビ(?)になっちゃうんですよね。
 なので、「こんなに早くしっくりいっちゃってあとはどうやってもたせるんだろう」と心配したんですが、今のところドラマは「2人の関係の変化」よりも、「会社」「学校」という2人が所属する“社会”が、入れ替わった“パパ”と“ムスメ”の行動によって変わっていく……という展開のほうに力を入れているようです。

 たとえば、ムスメの心が宿ったパパは、女子高生の目で見て「ここがヘンだよ、日本の企業」って感じで、素直に思ったことを口に出していく。
 その意見は青臭いし、子供っぽいし、見た目女子高生が言ったら誰も相手にしないような意見なんだけど、見た目管理職のおっさんが言うことによって妙な説得力が生まれる。それどころか「部長ってピュアですてき」みたいな女子社員からの好評価も受けてしまう。そのへんがおもしろいですね。
 もちろん、ママに迫られて困っちゃうパパの図とか、試験勉強に四苦八苦するムスメの図とか、お約束の笑えるエピソードもてんこ盛りなんですが、それだけに終わらせない意欲的な展開には好感がもてます。
 このドラマは他のドラマ(全11回)より短め(全7回)なので、あと2回で終わってしまうのがとても残念です。

 もうひとつ、「地獄の沙汰もヨメ次第」ですが、これはちょっとドラマに詳しい人なら「作者が西荻弓絵で、姑が野際陽子とくれば『ダブル・キッチン』の続編でしょ。今さらなんでまたやるの?」と思われるのではないでしょうか?
 じつは私もそう思ってて、それほど期待はしてなかったんです。
 「ダブル・キッチン」はおもしろかったけど、あれは14年も前の作品だし、もう一度同じことをやってもねぇ…って感じで。
 ところが、見てみてびっくり。
 意外にもおもしろいんですよ、これが。

 たしかに仕事を持っている嫁と専業主婦の姑の対立をコメディタッチで描いているところや、二世帯で暮らしたために衝突が頻発するシチュエーションや、夫に小姑がいる点など、基本路線は「ダブル・キッチン」と同じです。
 同じなんだけど、家族をとりまくシチュエーションがぐっと現代的になっているというか、パワーアップしているんですよ。

 「ダブル・キッチン」での嫁(山口智子)はたしか出版社勤務で、まあマスコミ系なので華やかさはあるものの、所詮は一介の勤め人でした。
 当時は「共働き」も「二世帯同居」も今日的なテーマだったんですが、いまや嫁がキャリアウーマンっていうだけでは珍しくもないし、特に今日的でもない。というわけで、今回の嫁(江角マキコ)は「40歳の会社経営者」という設定となっています。

 30代のキャリアウーマンならドラマにいっぱい出てきますが、さすがにヒロインが40歳の社長さんで、新婚で、自分も相手も同年代で初婚……というのは珍しいんじゃないでしょうか。
 ニューヨークに支店を出す話が進んでいるというおにぎりカフェの社長である嫁にとって、仕事を続けるのはもはや呼吸をするのと同じくらい当たり前のことで、収入も地味な勤め人である旦那の収入を軽く越えている。
 交友関係もセレブばかりで、出戻りの小姑(浅田美代子)とその娘(片瀬那奈)は卑屈になって嫁に媚びる始末。このあたりも小姑が気が強くて嫁に対して威張っていた従来の“嫁姑モノ”とはひと味違います。
 とにかく、一言でいって嫁が「強い」!

 「ダブル・キッチン」では、作者が明らかに嫁の立場寄りで書いているのがわかり、姑はその行く手を阻むモンスターといった様相を呈していました。
 もちろん、最後はそのバトルにも和解が訪れ、「姑にもいいとこあるじゃん」みたいな描かれ方で締められるわけですが、視点はあくまでも嫁目線。見ているほうも嫁を応援するような感じになるのがごく自然でした。

 が、今回は嫁があまりにも権力をもちすぎているため(単に性格がきついだけではなく、理屈と経済力がそれに説得力を与えている)、視聴者としてはもはや共感の域を逸脱し、「この人のライフスタイル、たしかにこうなれたらいいなという憧れだし、言うこともいちいちごもっともなんだけど、なんか違う……。でも私がなにを言っても妬みにしか聞こえないから何も言えないな」という距離を感じさせるキャラになっているんですね。
 実際、いくらバカにされるようなことを言われて悔しい思いをしても何も言い返せず、むしろ嫁のご機嫌をとって利益を得ようとしてしまう小姑の立場がそれを如実に物語っています。

 こうなると、「誰かがガツンと言ってやってよ、この女に(私は言えないけど)」という空気が高まってくるのですが、その期待にばっちり応えてくれるのが姑@野際陽子というわけ。
 一言でいうと、嫁は経営者だけあって徹底的な合理派、姑は合理性だけではわりきれない心を大切にするタイプ。ドラマのパターンとしては、まずある事件が起こり、それに対して嫁は持ち前の合理性と権力をふりかざして対処しようとし、姑は最初嫁の理屈にやりこめられてぐうの音も出ないんだけど、最終的にはそれを上回る「いいこと」を姑が言って嫁を諫め、嫁も自分の欠点やいたらなさを思い知る……という運びになっています。

 と、字面で読むと姑がおいしいとこどりするだけの古くさい人情ドラマに見えるかもしれませんが、そこはうまくできていて、姑が嫁を意地悪くやりこめるという形ではなく、姑の人としての生き方というか、不器用だけどおかしいと思ったことはおかしいと言える正直な心の発露がまわりの人の心を打つという感じで描かれているので、姑の一喝にもカタルシスがあるし、鼻っ柱の強い嫁がそれに素直にうちのめされるさまにも納得がいくんですよ。
 また、「嫁姑もの」の姑というと、息子にベタベタに甘く、嫁に嫉妬するみたいなパターンが多いですが、この姑は息子の甘さをビシッとたしなめる潔さもあって、そこも気持ちいい。
 というわけで、なんか今回に関しては、作者は姑のセリフが一番書きたかったんじゃないかなと思っちゃいました。

 もちろん、そうはいってもコメディなので、嫁もしゅんと反省したままでは終わらず、事件が終わったあと、夫婦2人で話しているうちに「たしかにお義母さんの言うことは正しいと思う。でもさぁ…」と得意の屁理屈が頭をもたげ、だんだん怒りが盛り上がってきて、姑に対する毒を吐き散らしながらフラダンスを踊り狂う。
 一方同じ頃、隣の家では姑もあらためて嫁の態度に腹立たしさが復活し、怒りの三味線を弾きまくる。
 そしてその演奏とダンスはくしくも息ぴったりのコラボになっていて…という結末で終わるパターンは「ダブル・キッチン」と同じで健在です(「ダブル・キッチン」では“玉のれんパンチ”と“鼓”でしたが)。
 ちなみに、この「妻のフラダンスそろそろくるぞ」という頃合いになると、夫が絶妙のタイミングでスッとさりげなくソファとかテーブルを脇にどかしてスペースを作ってやるのが笑える。
 まさに阿吽の呼吸。“婦唱夫随”の鑑ですね(笑)。

 また、姑もいいこと言うんだけど決して完璧な人間ではなく、みんなに「いいこといった」とほめられると調子こいて図にのるとか、一応慇懃に遠慮しつつもお節介を焼くくせはやめられないとか、人間らしい欠点もあるのがほほえましい。
 まあほほえましいとはいっても、「ごめんなさい。私が悪かったわ」としおらしく謝って相手の怒りの矛先をいったんうまく収めさせておいて、「でもね、一言だけいいかしら」と控えめに、でもじわじわと確実に反撃に転じていく老獪なテクニックなど、そこは単純にいやみだけ言いまくる姑よりも数段ランクが上というか、一筋縄ではいかない年期を感じさせるんですけど。

 で、見ていて思ったんですが、これって嫁と姑の対立のドラマのようで、じつはそうじゃないんじゃないかなと。
 というのも、嫁と姑って女同士じゃないですか。
 少なくとも今までの嫁姑ものは「女の立場」という同じ土俵の上での対立というか、考えの相違であったわけです。
 でも今回の嫁って、もはや「女」じゃないんですよね。
 論理が完全に「男」なんですよ。

 たとえば先週の事件。
 夫の会社で不祥事が起こるんだけど、いろいろな事情から社長はそれを隠蔽しようとする。
 夫は「公表すべき」だと何度も言おうとするんだけど言えなくて悩む(ちなみに会社はアットホームな感じで、夫は社長の人柄にもほれこんでいるだけに言うのがつらい)。
 妻に話したら「そんなの公表するのが当たり前じゃん」と主張。
 「そうだよね」と思い切って社長に進言したら閑職にとばされる夫。
 それをきいた妻は怒りまくり「私が夫を救う」とばかりに友人の弁護士を連れて夫の会社に乗り込み、とうとうと正論をまくしたて、「不当解雇で訴える」だの「いざとなったらこんな会社はやめさせて夫は私が養う」だのとわめきちらす。
 それに対する姑のコメントは「妻が夫の会社に乗り込んで『いざとなったら私が夫を養う』と叫ぶなんて、息子がそれをきいてどんなにせつない気もちになるか想像できないのか。あなたは自分が経済力があることで驕りがあるんじゃないのか」でした。

 たしかにこの夫婦の関係、完全に妻のほうが「男」で、彼女にとって夫は「働いている嫁をもらった」くらいの感覚です。
 外では髪振り乱して働いている妻ですが、家に帰れば夫に甘え、膝枕をしてもらって「やっぱり家はサイコー!」とご機嫌になり、夫になにかあれば「いやならやめていいんだよ。生活は私が支えるから」と保護モードに入る。
 ちょっと前までまさに「女」が「こういう夫って機嫌いいときはいいけど、意外に妻の気持ちがわかってないんだよね。結局ジコチューなんだよ。妻は守ってやるべき所有物でしかないんだよ」と文句を言っていたようなタイプじゃないですか。

 こうなると姑の一撃は「女」に対するというよりも、「男の論理」に対するもののように見えてきて、これは「嫁姑もの」の形を借りた「男の発想=経済の担い手ならではの合理思考」に対する社会批判なんじゃないかと思ったりもしてます。
 いかにも旧態依然とした感じの男を標的にするのではなく、一見フェミニストのような「進歩的な女性」を標的にしているところが手が込んでますよね。

 じつはTV雑誌に書いているドラマ評の候補のひとつにこれを出したんですが、他のライターがまったく興味を示さなかったため、今期はとりあげられないことになりました。
 なので、その代わりといってはなんですがここで書いちゃいました。

 基本的に一話完結ものなので、途中から見ても充分ついていけると思います。
 見たことがない皆さんも、まだ残り半分以上あるんでぜひ一度ご覧になってみてくださいませ。

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この記事へのコメント

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「温故知新」の夏ドラ2本

こんにちは。

パパと娘のやつは途中までみていたけど(録画失敗して見なくなってしまったんだけど)、嫁姑のやつは「またか」と思ってノーチェックでした。
ほら、最近、再放送とかで、ダブルキッチンとかやってたんで…。

でも、伊万里さんの記事を見て、見てみようかな~と思いました。
  • from レミゼ貧乏 :
  • 2007/08/06 (17:04) :
  • Edit :
  • Res

逆効果?

ほんとにねぇ、直前に大昔の「ダブル・キッチン」を再放送したり、1年前にも江角&野際で「トリプル・キッチン」という続編やったりとか、「またか!」と思わせる伏線がてんこもりでしたよね。
盛り上げるために気をきかせたつもりなんでしょうけど、逆効果だったような気も…。

ぜひご覧になってみてください。
レミゼ貧乏さん、けっこう姑に共感しそうよ(笑)。
TVの前で「よし! いいこと言った、野際!」と膝を打っているレミゼ貧乏さんの姿が浮かびます。
  • from 伊万里@管理人 :
  • 2007/08/07 (15:10) :
  • Edit :
  • Res

「温故知新」の夏ドラ2本

パパと私の…は、一番のお気に入りで見てますが、もう終わっちゃうんだ~。
悲しい・・・。
なんて言っても、舘ひろしがいい味出しているのがお気に入り。
今までニヒルな役だったのに、すっかり身も心も女子高生になりきってる?
断然ファンになっちゃいました。
地獄の沙汰も…は、昨日見てみました。
沢村一樹が、私にとってな「セクスィー部長」なので(NHKの「サラリーマンNEO」)、目が沢村一樹に…。
何、普通に演技してんだよ!!って思っちゃいました。
でも、嫁・姑、お互い言いたい放題なので、気持ちよかったです。
とかくチクチクとイヤミを言い合うのが、嫁と姑。
すっかり昨日は、吉田兄弟の宣伝番組になって居たのが凄かった。
いつもあんなに宣伝するの?
  • from フランソワ :
  • 2007/08/10 (13:54) :
  • Edit :
  • Res

身も心も。。。

「パパとムスメの〜」は視聴率もけっこう健闘しているみたいですよ。
舘ひろし、まさに「身も心も女子高生」ですよね。
もっとキモいのかと思ってたらものすごく生き生きしてたんでびっくり。
女子高生言葉を口にするときの自然さがたまらない。
最後は元に戻るんだろうけど、なんかこのまま戻ってほしくないよね(笑)。

「地獄の沙汰〜」は、前回はちょっと緊張感少な目でした。
千代子さんの毒も薄めで、いつもに比べるとちょっと物足りなかった。
旅行中に家族が病気になって、帰ろうとしたけど台風で帰れなかったっていうのは「たまたまタイミングが悪かった」というアクシデント性が強すぎてヨメの人格が及ぼす影響というには弱かったし。
それより小姑の再婚願望にからんだ事件のほうがおもしろそう。
今後に期待です。

吉田兄弟はライブまで見せる意味あったんでしょうか。
ライブシーンも妙に長かったのが謎でした。
  • from 伊万里@管理人 :
  • 2007/08/12 (00:18) :
  • Edit :
  • Res

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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