古伊万里★新伊万里
劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です
「大化改新」を見ました(今頃…)
春クールの連ドラがスタートしかかっているので、ためてある録画を今のうちに消化しておかないと…と思い、遅ればせながら正月ドラマの「大化改新」を観ました。
古代史もののドラマは考証も難しいし、風俗の再現も難しいし、天皇の問題もからむしで、面倒な問題が多いためか、あまりお目にかかりません。
昨年、やはりお正月にオンエアされた「聖徳太子」が好評だったので、その第2弾ということでやったのだと思いますが(脚本はいずれも池端俊策)、視聴率的にはいまひとつだったみたいですね。
ネットで感想拾ってみても、今回は内容的に不満足の人が多かったようで。
なので、私もそれほど期待せずに観たのですが、予想したよりもずっとよかったです。
たしかに巷で言われているように描写不足はあったと思います。
入鹿がなぜあんなに冷酷な政治家に変わってしまったのか。
鎌足はなぜ幼なじみの入鹿を暗殺することを決意したのか。
まあ、皆さんが「描き込み不足」と感じられる部分はこのあたりでしょう。
もっと基本的な不足部分を言わせてもらえば、鎌足が中大兄と組んで入鹿を暗殺しようと企ててからそれが成就するまでが駆け足すぎで、「あれよ、あれよ」という間に終わってしまうのでそこに無理を感じました。
最初のほうに時間をかけすぎたのかもしれませんが、それにしても「政治にはまったく興味がなさげで、しかもいったん田舎にひきこもって朝廷にはなんのコネもなくなったかのように見える鎌足」が、朝廷の頂点に君臨する入鹿を暗殺する計画を成功させるには、かなりの紆余曲折があったはず(しかも途中で計画を入鹿に見抜かれてるのに)。
そのへんの苦労というか、大変なところを描いてくれないと、クライマックスの大化改新が非常に薄っぺらなものに見えてしまう残念さがあります。
あと、中大兄皇子は皇子という身分を隠して南渕講安という唐から渡ってきた医師の助手のようなことをしているんですが(というふうにしか見えないんですが)、鎌足は死際の講安の言葉「生きてここを出て中大兄皇子を訪ねなさい。あなたがなすべきことがわかるでしょう」を受けて飛鳥を訪ね、そこであの有名な蹴鞠のシーン(蹴鞠で中大兄皇子の靴が脱げてしまい、鎌足がそれを拾って差し出したのが馴れ初め)につながっていきます。
じつは中大兄皇子だと知らずに、すでに講安を通じて2人は気の合う同志だった……という設定はフィクションならではの大変おもしろいシチュエーションだと思うのですが、ならば「あなたが皇子だったのか?!」というネタバレの瞬間のドラマも視聴者としてはぜひ観たいところ。ところが、なぜかこのへんすっとばしまくりなんですよ。鎌足は皇子だということを薄々知っていたから驚かなかったのかもしれませんが、だったら「知っていましたよ」ということを皇子に伝えるシーンがあってもいいのでは?
オチがないとせっかくの設定も生きないし、なんとなく見逃してしまう人も多くてもったいないと思います。
その他、「もうちょっとここを書いてくれないと」というところは多々あったのですが、それでも全体を見終えてそれほどそれが気にならず、けっこう入れ込んで観ることができたのは、この作品に「ロマン」の香りを感じたからだと思います。
たしかにこの時代の政治事情はもっと複雑だと思うし、それにしては鎌足や中大兄や入鹿の書き方は甘いと思うし、古代史好きにとっては「こんなんじゃないんだよ!」という不満が多いのはわからないでもない。
でもそれは歴史ドラマの宿命というもので、歴史好きが満足するドラマは必ずしもドラマ好きを満足させないんですよね。
大河ドラマなら、「歴史に対する新しい解釈や切り込み」があってもいいし、それを描き込むだけの時間的余裕もあるでしょう。登場人物もどんどん増やせると思います。
でも3時間かそこらで完結した話にするには、もっとミクロで語らなければ処理しきれないし、無理やり処理してもストーリーを説明するだけになってしまう危険があります。
そういう意味では、歴史的背景に切り込みすぎず、鎌足と入鹿の2人の人間関係にしぼった展開にしたのは正解だと思うし、さらにいえば、(これはどこかのブログにも書いてあったのですが)2人の関係に友情以上ホモ未満のような匂いをもたせたところが心憎い本だなと思いました。
一見、与志古(鎌足の妻)を巡る三角関係を描いているようでいて、じつは鎌足と入鹿の関係が絶対的なものなんですよね。このへん、宝塚好きな人にはとってもよくわかると思うんですが、宝塚でも、一番人気があるのは男役&娘役コンビの正統的ラブよりも、一見三角関係に見えて実はトップ男役&二番手男役の友情以上ホモ未満の美しい愛憎渦巻く関係が濃厚に描かれているドラマだったりします。
女から見れば、同性がないがしろにされているとも見えるこんな構図がなぜ人気なのか、分析してみるといろいろおもしろそうですが、今回はやめておきます。
とにかく、「大化改新」は以上のような美学がわかる人には感情移入しやすいドラマであり、わからない人には「不足面」ばかりが目につくドラマだったでしょう。
キャストについては皆さん健闘されていたと思いますけど、こういうコスチュームものは似合う人と似合わない人の明暗を分けるなーと(笑)。
その点、少女マンガの主人公並のルックスとプロポーションをもつ小栗旬はずば抜けて似合っていて、「もうあんた今後はコスチュームものだけやってちょーだい」と声をかけたくなったほど。これぞ「萌え!」って感じです。
中大兄皇子の役はぴったり。小栗くんは「若き改革者」のイメージが似合う。星座でいうと水瓶座、みたいな。
「ハムレット」で彼にフォーティンブラスをあてた蜷川幸雄はたしかに鋭い。
来年は中大兄&大海人&額田女王の三角関係ドラマでしょうか>NHK。
大河で古代史やってほしい気もするけど、予算的に難しいでしょうから、せめて毎年お正月ドラマで楽しませてください。
古代史もののドラマは考証も難しいし、風俗の再現も難しいし、天皇の問題もからむしで、面倒な問題が多いためか、あまりお目にかかりません。
昨年、やはりお正月にオンエアされた「聖徳太子」が好評だったので、その第2弾ということでやったのだと思いますが(脚本はいずれも池端俊策)、視聴率的にはいまひとつだったみたいですね。
ネットで感想拾ってみても、今回は内容的に不満足の人が多かったようで。
なので、私もそれほど期待せずに観たのですが、予想したよりもずっとよかったです。
たしかに巷で言われているように描写不足はあったと思います。
入鹿がなぜあんなに冷酷な政治家に変わってしまったのか。
鎌足はなぜ幼なじみの入鹿を暗殺することを決意したのか。
まあ、皆さんが「描き込み不足」と感じられる部分はこのあたりでしょう。
もっと基本的な不足部分を言わせてもらえば、鎌足が中大兄と組んで入鹿を暗殺しようと企ててからそれが成就するまでが駆け足すぎで、「あれよ、あれよ」という間に終わってしまうのでそこに無理を感じました。
最初のほうに時間をかけすぎたのかもしれませんが、それにしても「政治にはまったく興味がなさげで、しかもいったん田舎にひきこもって朝廷にはなんのコネもなくなったかのように見える鎌足」が、朝廷の頂点に君臨する入鹿を暗殺する計画を成功させるには、かなりの紆余曲折があったはず(しかも途中で計画を入鹿に見抜かれてるのに)。
そのへんの苦労というか、大変なところを描いてくれないと、クライマックスの大化改新が非常に薄っぺらなものに見えてしまう残念さがあります。
あと、中大兄皇子は皇子という身分を隠して南渕講安という唐から渡ってきた医師の助手のようなことをしているんですが(というふうにしか見えないんですが)、鎌足は死際の講安の言葉「生きてここを出て中大兄皇子を訪ねなさい。あなたがなすべきことがわかるでしょう」を受けて飛鳥を訪ね、そこであの有名な蹴鞠のシーン(蹴鞠で中大兄皇子の靴が脱げてしまい、鎌足がそれを拾って差し出したのが馴れ初め)につながっていきます。
じつは中大兄皇子だと知らずに、すでに講安を通じて2人は気の合う同志だった……という設定はフィクションならではの大変おもしろいシチュエーションだと思うのですが、ならば「あなたが皇子だったのか?!」というネタバレの瞬間のドラマも視聴者としてはぜひ観たいところ。ところが、なぜかこのへんすっとばしまくりなんですよ。鎌足は皇子だということを薄々知っていたから驚かなかったのかもしれませんが、だったら「知っていましたよ」ということを皇子に伝えるシーンがあってもいいのでは?
オチがないとせっかくの設定も生きないし、なんとなく見逃してしまう人も多くてもったいないと思います。
その他、「もうちょっとここを書いてくれないと」というところは多々あったのですが、それでも全体を見終えてそれほどそれが気にならず、けっこう入れ込んで観ることができたのは、この作品に「ロマン」の香りを感じたからだと思います。
たしかにこの時代の政治事情はもっと複雑だと思うし、それにしては鎌足や中大兄や入鹿の書き方は甘いと思うし、古代史好きにとっては「こんなんじゃないんだよ!」という不満が多いのはわからないでもない。
でもそれは歴史ドラマの宿命というもので、歴史好きが満足するドラマは必ずしもドラマ好きを満足させないんですよね。
大河ドラマなら、「歴史に対する新しい解釈や切り込み」があってもいいし、それを描き込むだけの時間的余裕もあるでしょう。登場人物もどんどん増やせると思います。
でも3時間かそこらで完結した話にするには、もっとミクロで語らなければ処理しきれないし、無理やり処理してもストーリーを説明するだけになってしまう危険があります。
そういう意味では、歴史的背景に切り込みすぎず、鎌足と入鹿の2人の人間関係にしぼった展開にしたのは正解だと思うし、さらにいえば、(これはどこかのブログにも書いてあったのですが)2人の関係に友情以上ホモ未満のような匂いをもたせたところが心憎い本だなと思いました。
一見、与志古(鎌足の妻)を巡る三角関係を描いているようでいて、じつは鎌足と入鹿の関係が絶対的なものなんですよね。このへん、宝塚好きな人にはとってもよくわかると思うんですが、宝塚でも、一番人気があるのは男役&娘役コンビの正統的ラブよりも、一見三角関係に見えて実はトップ男役&二番手男役の友情以上ホモ未満の美しい愛憎渦巻く関係が濃厚に描かれているドラマだったりします。
女から見れば、同性がないがしろにされているとも見えるこんな構図がなぜ人気なのか、分析してみるといろいろおもしろそうですが、今回はやめておきます。
とにかく、「大化改新」は以上のような美学がわかる人には感情移入しやすいドラマであり、わからない人には「不足面」ばかりが目につくドラマだったでしょう。
キャストについては皆さん健闘されていたと思いますけど、こういうコスチュームものは似合う人と似合わない人の明暗を分けるなーと(笑)。
その点、少女マンガの主人公並のルックスとプロポーションをもつ小栗旬はずば抜けて似合っていて、「もうあんた今後はコスチュームものだけやってちょーだい」と声をかけたくなったほど。これぞ「萌え!」って感じです。
中大兄皇子の役はぴったり。小栗くんは「若き改革者」のイメージが似合う。星座でいうと水瓶座、みたいな。
「ハムレット」で彼にフォーティンブラスをあてた蜷川幸雄はたしかに鋭い。
来年は中大兄&大海人&額田女王の三角関係ドラマでしょうか>NHK。
大河で古代史やってほしい気もするけど、予算的に難しいでしょうから、せめて毎年お正月ドラマで楽しませてください。
「大化改新」(DVD)
2005年のお正月にNHKで放送された
スペシャルドラマを収録したDVD。
脚本は池端俊策。
出演は岡田准一、木村佳乃、渡部篤郎他。
2005年のお正月にNHKで放送された
スペシャルドラマを収録したDVD。
脚本は池端俊策。
出演は岡田准一、木村佳乃、渡部篤郎他。
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「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
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鎌足と中大兄もあやしい…
いや、朝から濃ゆいもの観ちゃったよ!
あのお話を観ていて、もうちょっと他の人間関係も観たいなぁ、、と思い、こちらのブログを思い出して再読させて頂きました次第です。
改めて読んで、自分の勘違い発見。
友情以上ホモ未満は、入鹿と鎌足ですか!
てっきり鎌足と中大兄かと思っておりました。
なるほどー。敵味方に分かれた友情とは、またツボどころな感じですね。
楽しみにしつつ見逃してしまったドラマだったので、再放送に期待したいと思います!
古代史ものといえば
一方、最近宝塚でやった「飛鳥夕映え」では、彩輝直演じる入鹿が耽美なキャラで、大王(おおきみ・女)との濡れ場がツボでした。
この時代ってあまりにも昔の話なので、人間関係はどうとでも作れますよね。そこが古代史ドラマのおもしろいところなんですが。
しかし古代史もので最もインパクトがあるものといえばなんといっても「日出処の天子」でしょう。もし未見でしたらばぜひ。このマンガを宝塚でキャスティングすると楽しいですよー。絶対生身の男とか使ってほしくないです。
もちろん「天子」は読破
「飛鳥〜」!!イルカが主人公だったんですか!ああ!見たかった!! 古代史は歴史考察が未だ“推測”な域なだけに、そこまで時代について叩かれないし、色々広がりますね。
そ・し・て☆「〜天子」はもちろん読破しております★★
聖徳太子がモーホーでエスパーなやつですね!(非道い言い様)
怖ええ〜!とか言いつつ夢中で読んだ記憶が。某企画室の本棚に1巻だけありました。誰でやるつもりだったのよ…みつこ?
宝塚のキャスは思い浮かべてなかったなぁ〜。。及川ミッチーがやりたがってた、て話は聞きましたけど、もう年齢的にねぇ、、(しかも♂。いや合ってはいるんだけど)是非今度キャスティングをお伺いしたいです☆
宝塚版「天子」キャスティング
たしかに年齢を超越しているバケモノという点では近いですが(笑)。
私が考えていたキャスティングは、一番最初は厩戸=ヤンさんだったんですが、次に考えたのが厩戸=真琴つばさ、毛人=麻路さき。
厩戸=紫吹淳、毛人=稔幸というのも考えたけど、ややスケールダウンかな。
その他、馬子=未沙のえるはお約束。厩戸のお母さんは浮き世離れした母性の欠如がにじみだせる花ちゃんで。厩戸の誰からも愛される弟は愛華みれ。じつの妹でありながら毛人を愛する刀自古ちゃんはラブリーでいてひたむきなキャラが似合う森奈みはる。気位の高い厩戸の妻・大姫は風花舞。毛人と結ばれる巫女(名前忘れた)は星奈優里。厩戸の伯母にあたる帝は出雲綾。
他にもいろいろ考えたんですけど忘れました。学年や在籍時期がバラバラなのはご容赦ください。
ジェンヌの名前
変わった命名、読みにくい命名や読ませ字(海=まりん とか)の命名が話題になるたび「タカラジェンヌじゃあるまいし」というフレーズが使われますよね。
私、ヅカファンじゃないけどあれには抗議電話240本ぐらいかけたい気分。
だってジェンヌの名前で、読めないのなんかありますか?
あるだろうけど、たぶん少数派でしょう。
当て字はあっても読める当て字だし、読ませ字なんて見たことない。
もう世間の皆様宝塚歌劇のこと雑にとらえすぎ!
…と、ジェンヌの名前を見ていて思ったのでした。
最近の子供の名前はもっとすごい
それでも花総まりや真飛聖をすんなり読める人はなかなかいないと思いますが…。
しかし、最近の子供の名前はタカラジェンヌを越えるような凝った命名が普通なので、今さら宝塚の芸名に驚く人もいないでしょう。
宝塚は名前にふさわしいルックスを作るからいいけど、ものすごく庶民的な顔で「可恋」とか「りりか」とか言われてもリアクションに困るのでやめてほしいです。
当て字や読ませ字は度がすぎると暴走族?って感じになりますが、たしかにタカラジェンヌの芸名は同じ当て字でもなんとなく品格が漂うのが不思議
キャスティング楽しい
私は嘉月絵里が読めませんでした(勉強不足なだけ)。
あと轟をゴウと読んでいた…たくましーい!(トドロキでも男ぶりは一緒)
ジェンヌさんの名前といえば、ネタ切れにならないのかしら…と心配になります。
「タカラジェンヌじゃあるまいし」フレーズ、今だにたまに聞きますね〜。
化粧が濃い場合とかオヤジが発言。
舞台化粧なんて皆そんなもんだっつの。>東山様
麻路毛人大賛成!!あの朴訥と鈍い青年がぴったりです☆うひゃひゃ!
愛華もツボでした。愛され役。若手でいうと大和あたりの好青年っぷりも見てみたい気が。
女性陣はキレイですね〜♪
原作の恐ろし顔がインパクトありすぎて想像しづらいですが…。
厩戸はやはり耽美&キレイ所にやって頂きたいですね。
厩戸に心酔している刺客役も美味しい役所ですが。水夏希とか?
うーん原作の印象が強過ぎると、キャスティングって意外と難しいものなんですね、、