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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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心に残った“ベストプレイ5”(2007年度)

 今年も残すところわずか。
 昨年のようなジルベスター状態にならない今のうちに、恒例の「心に残った“ベストプレイ5”」を発表します。
 ……といっても、今年は家の建て替えや旗揚げ公演などでいっぱいいっぱいだったため、観劇数が非常に少ないんですよ。数えてみたら44本しかない。昨年は67本、一昨年は58本、その前が76本なので、まあ例年の半分とは言わないまでも、3分の2くらいしか観てないですね。
 しかも内訳をみると短編とかリーディングとか、1回で数本こなしているものもけっこうあるんで、感覚としてはもっと少ない感じです。
 そんな中で印象に残った5本をあげると…(44本の中にはオペラやミュージカルも入ってますが、選出はストレートプレイに限定します)。

 「ヒステリア」(T.ジョンソン)
     《三軒茶屋/シアタートラム》
 「コンフィダント・絆」(三谷幸喜)
     《渋谷/パルコ劇場》
 「CLEAN SKINS」(シャン・カーン)
     《初台/新国立劇場小劇場》
 「片づけたい女たち」(永井愛)
     《三軒茶屋/シアタートラム》
 「恐れを知らぬ川上音二郎一座」(三谷幸喜)
     《日比谷/シアタークリエ》

 この5本でしょうか。
 強いていうと「CLEAN SKINS」は他の4本に比べると納得できない点が多かったんですが、題材はおもしろかったんで入れてみました。なにせ本数少ないんで。
 たしかにあの限定された空間&人数(母と息子とイスラム教に改宗して突然戻ってきた娘の3人)で2時間緊張感を持続させるのはすごいと思うし、「クリスチャンの白人がいきなりイスラム教徒に改宗」という設定はかなりインパクトあって、最初はその部分の「なぜ?」という謎でひっぱられましたが、理由を知ったらちょっと腰砕け。
 というのも、「失踪した父が、じつは白人ではなくトルコ人だったということを知ってしまったから」というのは、イスラム教徒に改宗する理由としては合理的すぎて「なーんだ」という感じが否めないから。
 ほんとにまっっったくみじんもイスラムとは関係なかった家族の一人がイスラムに改宗するドラマのほうが私は観たかったな。
 途中、「あんたイスラムイスラムいうけど、女はみんな差別されてて、男は自爆テロにはしる、くらいの知識しかないんでしょ、どうせ」みたいなことをお姉さんが弟に言うんですが、私はまさに「その程度の知識」しかない人間だったんで、このあとに「なぜイスラム教なのか」「キリスト教では救われなかったけど、イスラム教で救われた理由はなんなのか」「知られざるイスラムの姿」などが帰ってきたお姉さんの口から明かされるのを楽しみに待ってたんですが、結局そういう具体的な宗教話はなにも出てこないまま「お父さん」の話に移ってっちゃったので「あれれ? そういう話じゃなかったんだ」という感じでした。前振りだけかい!って。
 そもそもアラブ系との混血だったら見た目からすでにまわりの人とは違うんじゃないかと。誰かにそういうようなことを指摘されたことはないんだろうか。友達とかさ。お母さんも、白人の背の高い見知らぬおっさんの写真を子供たちに見せて「これがあなたたちのお父さんよ」と思わせてきたってそれはちょっと無理あると思わなかったのか?
 せめてアラブ系寄りの白人とか、せいぜい北村一輝程度の顔写真を選んで見せておけばよかったのにね(北村一輝じゃもう充分疑惑の対象か←北村ネタ好きだね>自分)。

 残り4本はどれもとてもおもしろかったです。
 中でも三谷幸喜の作品は2本とも新作書き下ろしで、2本ともこのレベルって相当すごいことだと思います(永井愛の作品は再演です)。
 特に「コンフィダント・絆」は、個人的にかなり完成度の高い話だと思いました(ただ、完璧に宛書きなので、このメンツの役者でなければ成り立たないだろうなとは思うのですが)。
 「画家」なんておよそ演劇になりにくい題材だと思うのに、作品(絵)そのものを見せるのではなく、おのおのの創作スタイルや個人的性癖などを通してどういうアーティストなのかをビビッドに伝えてみせるという手腕は見事です。
 ゴッホとゴーギャンのコンビなんて、もうなまじのお笑いコンビより笑いましたよ。ある程度画家についての情報やエピソードを知っている人がみるとさらに楽しめます。
 この「知ってる人が観るとさらに楽しい」という知的な部分でくすぐる三谷作風が「鼻につく」と敬遠する人がいることもたしかなんですが、「恐れを知らぬ〜」のほうは、もう少し大衆性を強調し、商業演劇という間口の広さを十二分に意識した作りになっていました(親切に説明しすぎて長尺化してたけど)。

 「コンフィダント・絆」も「恐れを知らぬ〜」も言ってみれば芸術・芸能関係の有名人が出てくる話です。
 前者では、芸術家ならではのしょうもなさや矮小さやせこさといったサガを愛すべき形で描いていて、こういうテーマは三谷さん大好きなんですよね(そして実際にこういうテーマだと筆が冴える)。
 これをそのまま後者におきかえると、「役者に目覚めてしまった自分の本能と、舞台にあがることをよく思わない夫の間で葛藤する貞奴」「貞奴の天性の舞台人としての才能を認めながらも、同業としてどうしようもなく嫉妬してしまう音二郎」というあたりを集中的に描いていたと思うんです。
 でも、今回は、新劇場のこけら落としで、なおかつ旧芸術座ファン(年輩客)も意識しないと……という前提があったためか、あえてそういう要素はつっこまずにさらっと通過し、「劇中劇」を通して「虚」と「実」のせめぎあいをダイナミックに描くというアプローチをとっていたのが印象的でした。
 まず、わかりやすさと演劇らしさを重視し、なおかつ物語の構造やエピソードが今の演劇界や演じている役者自身とも重なるという点で演劇好きにもアピールする奥行きをも備えていた点がすごいなと思いました。

 最初は主役の2人がユースケ・サンタマリアと常盤貴子ときいて、演劇好きは「そんな舞台経験の少ない役者をもってくるなんて。いかにも一般受け狙ってる感じ」と不安を拭えなかったようですが、これまたよく考えられていて、芸の見せ場は脇の達者な人が担い、2人は真ん中にいるだけで輝くように書かれているんですね。
 というか、むしろ経験が乏しいのに勢いだけでつっぱしる感じが、明治時代にアメリカ巡業を押し切ってしまった音二郎&貞奴の無謀なエネルギーと重なっていい効果を出していました。
 特に常盤貴子は、「初めて舞台にあがったので技術はないが、なにをしても人の目をひきつける天賦の華やかさがある」という設定の役なので、ごく自然にはまって見えました。
 あと、「座長の稽古嫌いは有名だからな」というセリフに笑った(ユースケは自他共に認める稽古嫌いなので)。

 他にも、三谷作品では山南さんのイメージが強い堺雅人が、衣装が足りなくて新撰組の羽織を着て出てくるあたりも「ファンサービス心得てるな」と思ったし、「受ければいいんだ」というユースケと、「人に見せるからにはそれなりの内容がなきゃだめだ」という堺雅人の対立場面など、TVと舞台の対立にもダブって見えたし(特に「お客が入らなきゃ中身がよくてもしょうがない」というセリフには商業演劇の大命題が凝縮されてるようでつきささりました)、新劇出身の今井朋彦が、「シェイクスピアならハムレットのほうがいい」とこうるさく注文をつけるプライドの高い役者を演じてるのもおもしろかった。
 「いろんなジャンルの人がまじってて統一感がない」という批判もきいたけど、商業演劇がこれから生きていくためにはまずそういう「節操」を捨てなきゃいけないのかもしれません。
 音二郎一座の奮闘が、演劇界全体の縮図にも見えるという、おもしろいだけでなく、演劇業界人にとっては考えさせられることも多い1本だったと思います。

 「ヒステリア」については、HPの「鑑定法」で語ってますので、興味ある方はそちらへお越しください。
 以上です。
 さて。来年はどんな作品に出会えるでしょうか。

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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