古伊万里★新伊万里
劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です
恐怖のミッキー
古い話になりますけど、梅雨入り直後くらいにTDSに行ってきました。
なんだかんだでTDSもすでに5回目。
プレビューで懲りて「もうこれで行かなくてもいいや」と弱音吐いた割にはよく行ってますね。
で、5回目にして初めて生ミッキー&ミニーに遭遇いたしました。
場所はアメリカンウォーターフロントエリア。
ごくフツーに街角を散歩していたミッキー、あっという間に携帯やデジカメもった人々に取り囲まれました。
お約束通り、手を振ったり、首をかしげたり、愛嬌を振りまいていたミッキーですが、「いやーん、かわい〜!」と騒いでるのはおとなばっかり。
ふと見ると、4歳くらいの男の子がミッキーを見て固まっているではありませんか。
それに気がついたミッキーが男の子に手を振りながら近づこうとすると、ビクッとしてそのままあとずさり。
どうやら男の子はでかでかミッキーに怯えている様子です。
男の子が逃げたことでちょっといたずら心が芽生えたのか、わざと男の子を追いかけ回すミッキー。
べそをかきながら逃げまどう男の子(その手にはなぜかミッキーのキャラクターグッズが握りしめられていたのが笑えるんですが)。
しかも一気に逃げるのではなく、ダーッと逃げて一定の距離をとると、柱の隅からじっとミッキーの様子を伺う。
ミッキーも離れた場所からしばらく男の子の様子を伺う。
また走り出すミッキー。
泣きながら逃げる男の子。
その繰り返し。
男の子の移動に伴い、ミッキーも移動し、ミッキーの移動に伴い、携帯やデジカメを持ったその他大勢もゾロゾロと移動。
という奇妙な光景が繰り広げられました。
おとなとしては「ミッキーに追いかけられるなんてずるい」という羨望もまじったまなざしで追いかけていたようですが。

「どうしたのかな〜。何泣いてんのかな〜。僕、ミッキーだよ!」

ダーーーーーーーーーーッ!
「あ、逃げたっっっ!!」

「待って〜!」
バコバコバコバコ(←足音が意外に大きい)
「いいなぁ〜〜〜」(byギャラリー)
で、この光景を見てるうちに、遠い昔を思い出しました。
昔、木馬座っていう子供向けの人気人形劇団があったんですが、ちょうどこの男の子くらいのときに、木馬座の舞台に連れていってもらったことがあるんですよ。
普段はTVで見ていたんですが、初めて生を見ることができるとあって、私は鼻血が出そうなほど興奮していました。
場所は忘れたけど、都内のどこか大きな劇場でした。
開演のかなり前から席にスタンバッた私は、人形劇の人形が出てくるのを今か今かと待っていました。
「まだかな、まだかな」と何回も聞く私に、親もいいかげんウンザリした表情。
そしていよいよ開演。
幕が開き、よく覚えてないけど、なんかの動物の着ぐるみが板付きで登場し、歌をうたい始めました。
ところがその瞬間、私はミッキーに遭遇した男の子と同じ状態になってしまったのです。
親の話によると、私はその人形を見たとたん大声で泣き出し、結局外へ連れ出す羽目になったらしい。
もちろん、二度と客席復帰はなりませんでした。
「せっかく連れてってやったのに」と今でもそのときのことを非難されるのですが、私がおぼえているのは「恐怖」だけです。
幕が開いたときに出てきた着ぐるみの大きさは、幼い私の想像をはるかに超えたものでした。
普段、TVの画面内で把握している動物のキャラクターはもっとずっと小さかったため、その感覚のまま舞台を観にいった私は、頭の中で10分の1くらいのものをシミュレーションしていたのです。
そのギャップはかなりの衝撃で、私の中では木馬座の着ぐるみはバケモノ以外のなにものでもありませんでした。
ミッキーにおびえる男の子を見て、おとなは「バカだなあ」って感じで誰もが笑いましたが(私も含めて)、多分あの男の子にしてみたら笑い事じゃなく、本気でこわかったんだと思います。
さらにその日は、アリエルのショーで最初から最後まで泣き続けた子供も見かけました。
アリエルのショーには、途中「こわい魔女」が登場するところがあって、そこはたしかに子供にはこわいかなと思ったんですが、その子は魔女が登場するずっと前から泣いていました。
ただ機嫌が悪くてぐずっていたわけじゃなく、明らかにショーが始まったとたんこわがって泣き出したのです。
それで気づきました。
こういうファンタジー系の着ぐるみやらキャラクターやらって、じつは楽しんでるのはおとなのほうなんじゃないかって。
おとなは、でかい着ぐるみが出てきても、幻想的な演出が繰り広げられても、それが「本物」だと思う人は誰もいません。
すべてつくりもので、フィクションだと承知しているからこそ、純粋に一時の夢を楽しむことができるのです。
でも子供は違うんですよね。
現実とフィクションの区別がつかない。
いきなりお芝居が始まっても、境界線がわからないから、目の前に出てきた「見たことがないモノ」をまるごと現実としてうけとめてしまう。
「悪役がこわい」とかそういう次元じゃなく、正義の味方であろうとお姫様であろうと、現実にいないものという点では異形のバケモノなんです。
特におとなと等身大か、着ぐるみをきてそれ以上の大きさになったモノは、子供から見るとかなり巨大なものですから、そういう恐怖も侮れません。
今まで「こういうの子供が喜ぶんだろうな」と漠然と思っていましたが、必ずしもそうではないことを自分の記憶の裏付けとともに思い出し、ちょっと新鮮でした。
とすると、子供はいくつくらいからフィクションをフィクションとして楽しめるようになるんでしょうね。
作り物を本物だと思えなくなることは、一見知恵の悲しみのようですが、本当の想像力はむしろそこから育っていくのではないでしょうか。
もしそうならば、想像力は無限。年には関係なく育てていけるものなのかもしれません。
なんだかんだでTDSもすでに5回目。
プレビューで懲りて「もうこれで行かなくてもいいや」と弱音吐いた割にはよく行ってますね。
で、5回目にして初めて生ミッキー&ミニーに遭遇いたしました。
場所はアメリカンウォーターフロントエリア。
ごくフツーに街角を散歩していたミッキー、あっという間に携帯やデジカメもった人々に取り囲まれました。
お約束通り、手を振ったり、首をかしげたり、愛嬌を振りまいていたミッキーですが、「いやーん、かわい〜!」と騒いでるのはおとなばっかり。
ふと見ると、4歳くらいの男の子がミッキーを見て固まっているではありませんか。
それに気がついたミッキーが男の子に手を振りながら近づこうとすると、ビクッとしてそのままあとずさり。
どうやら男の子はでかでかミッキーに怯えている様子です。
男の子が逃げたことでちょっといたずら心が芽生えたのか、わざと男の子を追いかけ回すミッキー。
べそをかきながら逃げまどう男の子(その手にはなぜかミッキーのキャラクターグッズが握りしめられていたのが笑えるんですが)。
しかも一気に逃げるのではなく、ダーッと逃げて一定の距離をとると、柱の隅からじっとミッキーの様子を伺う。
ミッキーも離れた場所からしばらく男の子の様子を伺う。
また走り出すミッキー。
泣きながら逃げる男の子。
その繰り返し。
男の子の移動に伴い、ミッキーも移動し、ミッキーの移動に伴い、携帯やデジカメを持ったその他大勢もゾロゾロと移動。
という奇妙な光景が繰り広げられました。
おとなとしては「ミッキーに追いかけられるなんてずるい」という羨望もまじったまなざしで追いかけていたようですが。
「あ、逃げたっっっ!!」
バコバコバコバコ(←足音が意外に大きい)
「いいなぁ〜〜〜」(byギャラリー)
で、この光景を見てるうちに、遠い昔を思い出しました。
昔、木馬座っていう子供向けの人気人形劇団があったんですが、ちょうどこの男の子くらいのときに、木馬座の舞台に連れていってもらったことがあるんですよ。
普段はTVで見ていたんですが、初めて生を見ることができるとあって、私は鼻血が出そうなほど興奮していました。
場所は忘れたけど、都内のどこか大きな劇場でした。
開演のかなり前から席にスタンバッた私は、人形劇の人形が出てくるのを今か今かと待っていました。
「まだかな、まだかな」と何回も聞く私に、親もいいかげんウンザリした表情。
そしていよいよ開演。
幕が開き、よく覚えてないけど、なんかの動物の着ぐるみが板付きで登場し、歌をうたい始めました。
ところがその瞬間、私はミッキーに遭遇した男の子と同じ状態になってしまったのです。
親の話によると、私はその人形を見たとたん大声で泣き出し、結局外へ連れ出す羽目になったらしい。
もちろん、二度と客席復帰はなりませんでした。
「せっかく連れてってやったのに」と今でもそのときのことを非難されるのですが、私がおぼえているのは「恐怖」だけです。
幕が開いたときに出てきた着ぐるみの大きさは、幼い私の想像をはるかに超えたものでした。
普段、TVの画面内で把握している動物のキャラクターはもっとずっと小さかったため、その感覚のまま舞台を観にいった私は、頭の中で10分の1くらいのものをシミュレーションしていたのです。
そのギャップはかなりの衝撃で、私の中では木馬座の着ぐるみはバケモノ以外のなにものでもありませんでした。
ミッキーにおびえる男の子を見て、おとなは「バカだなあ」って感じで誰もが笑いましたが(私も含めて)、多分あの男の子にしてみたら笑い事じゃなく、本気でこわかったんだと思います。
さらにその日は、アリエルのショーで最初から最後まで泣き続けた子供も見かけました。
アリエルのショーには、途中「こわい魔女」が登場するところがあって、そこはたしかに子供にはこわいかなと思ったんですが、その子は魔女が登場するずっと前から泣いていました。
ただ機嫌が悪くてぐずっていたわけじゃなく、明らかにショーが始まったとたんこわがって泣き出したのです。
それで気づきました。
こういうファンタジー系の着ぐるみやらキャラクターやらって、じつは楽しんでるのはおとなのほうなんじゃないかって。
おとなは、でかい着ぐるみが出てきても、幻想的な演出が繰り広げられても、それが「本物」だと思う人は誰もいません。
すべてつくりもので、フィクションだと承知しているからこそ、純粋に一時の夢を楽しむことができるのです。
でも子供は違うんですよね。
現実とフィクションの区別がつかない。
いきなりお芝居が始まっても、境界線がわからないから、目の前に出てきた「見たことがないモノ」をまるごと現実としてうけとめてしまう。
「悪役がこわい」とかそういう次元じゃなく、正義の味方であろうとお姫様であろうと、現実にいないものという点では異形のバケモノなんです。
特におとなと等身大か、着ぐるみをきてそれ以上の大きさになったモノは、子供から見るとかなり巨大なものですから、そういう恐怖も侮れません。
今まで「こういうの子供が喜ぶんだろうな」と漠然と思っていましたが、必ずしもそうではないことを自分の記憶の裏付けとともに思い出し、ちょっと新鮮でした。
とすると、子供はいくつくらいからフィクションをフィクションとして楽しめるようになるんでしょうね。
作り物を本物だと思えなくなることは、一見知恵の悲しみのようですが、本当の想像力はむしろそこから育っていくのではないでしょうか。
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「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
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子供の心
やはり幼稚園児ぐらいの男の子にお侍が笑顔で近寄ろうとしたら、号泣して必死の形相で親のところに逃げてました。
子供にアトラクションはまだ早い、と思うことはあったけど、それが
「まだ現実とフィクションをうまく区別できないから」
とは思いつきませんでした。
いやー、鋭いのお。
でも本人は本気で怖いのだから、面白がって追いかけるのはいかがなものか>ミッキー。
それこそ子供の心を失ってないかミッキー。
お相撲さんにも泣いた
ていうか、今思いだしたけど、幼稚園児のとき、餅つき大会にお相撲さんがきて、「お相撲さんに抱っこされた子供は丈夫に育つ」ってんで、最後に記念撮影で抱っこしてくれたんですよ。
そのときもこわくて大変でした。写真見ると、私は「怪しい人にいきなり拉致された」ような勢いで、身をよじって逃れようとしてます。その罰があたって、その後丈夫に育たなかったんですが(お相撲さんの呪いか)。
こんなんでこわいんじゃ、ナマハゲとかに脅されたら心臓麻痺で死んでたかも。
懐かしい!>木馬座
私も見に行きましたよ。
私は泣かなかったけど、人形が動くたびに臭う、ホコリとカビの混ざったような臭いがなんとも印象に残っていたのを覚えています。
しかし、確かに化け物でしたね。
イヤに大きい頭に、びっくりしました。
未だに木馬座あるようですので、一度見に行ってみたい気もします。
検索してみました
そうそう。ケロヨンです。ヒキガエルのキャラクターが主人公のお話でした。
「バッハッハ〜イ」という流行語もありました。
1966年〜1970年に日本TV系で週6日、朝と夕方に「木馬座アワー」という子供向けバラエティー番組をやっていたとあります。
木馬座はもともとぬいぐるみ人形劇専門劇団で、藤城清治という人(影絵で有名ですよね)が人形デザインをしていました。その藤城さんが、イギリスの童話を脚色した話がケロヨンの物語。
舞台公演は1969年と1970年の12月に日劇(現在のマリオン)で行われたとあります。2000年に30年ぶりに再演されたらしいですね。
え。ちょっと待って。ってことは、当時の私は7歳か8歳???
ウソ……そんなに大きいのに泣いてたのか??
はずかし〜。そりゃ親が文句言うのも無理ないですね。
あー、調べなきゃよかった。
私にとっての木馬座は
ショックだ。
あれはあれで、脇役にいたるまでキャラが立っていて面白かったですが。
わたしはそれよりかなり前、グリム童話を舞台化していたころの木馬座っ子でした。
ショックだ。
ケロヨンの原作は『たのしい川べ』ですね。
小学校中学年のころ読んだけど、全然楽しくない、地味な話でした。
そのなかでもさらに渋めの脇役が途中から話の軸になっていくことにもまた、いまだに納得できずにいます。
その後、製薬会社のマスコットがなぜか誤って「ケロヨン」と呼ばれるようになり、わたしは「それは違うっ」と若い怒りをぶつけたものです。
話題古すぎ
木馬座、グリム童話を舞台化してたときがあったとは初耳です。
それはやっぱりお姫様とか王子さまもぬいぐるみなんですか?
若い子だけどグリム観ました
若い子?(伊万里さんと同年)だけど。
もちろんケロヨンも見てたけど。
まだ活動しているはずですよね。
さらに検索
きっとものすごく幼少の頃から木馬座に親しんでいたんですね。
藤城さんのプロフィールを調べてみました。
木馬座はもともと人形劇と影絵劇を交互にやっていた劇団で、等身大ぬいぐるみ人形劇の活動を始めたのは1961年から。ケロヨンがブレイクしたのが1966年(当時劇団員は150人以上いたそうです)。
1972年に木馬座は解散し、それ以降は再び影絵の活動に戻っているようです。
藤城さんの影絵ってすごく個性的ですね。子供の頃からあちこちでよく見かけていたせいか、なんだかすごく懐かしい気分になります。