古伊万里★新伊万里
劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です
外科医の…「ズバリ言うわよ!」
お陰様で母は順調に回復しております。
手術の翌日には点滴も導尿もはずされ、トイレにもいけるし、食事も普通食に(昼にはいきなり天ぷらを食べたそうです)。
検査室にも歩いて行ったらしい。
翌々日は、傷口から浸出液を外に出す管もとれてすっかり普通の状態に。
とても全身麻酔の手術をした患者とは思えません。
これって麻酔の進歩でもあるんでしょうね。
外科の先生が「手術で何が進化したって、一番進んだのは麻酔の技術。外科の技術はじつはそれほど変わってない。手術でできる可能性が大きく広がったのは麻酔技術の進歩のお陰」と言っていたのを聞いたことがありますが、なるほどと思いました。
麻酔科医って縁の下の力持ち的存在で、重要な役割のわりに患者との接点ってほとんどないじゃないですか(活躍しているときは患者はずっと眠ってる状態なので)。
変な話、お礼をしようとか思ったときでも、外科の先生にはするけど麻酔科の先生にまでしようと思う人はいないでしょう。
もっと地味なのは病理医。マニアックな職域になればなるほど、患者からは遠い位置にいくような気がします。
それに比べたら外科医は最前線ですから、ある意味「いいとこどり」ですよね。
いや、もちろん失敗したときも一番目立つわけで、いいことばかりじゃないってのはわかってるんですけど、最前線だけにダメだったときに他の科に送り込むという手が使えますから、「つかみ」の部分さえ担当できればOKってところはあると思うんですよね。
会社でいうと「営業職」みたいな感じ?
契約とったらあとは事務のほうでフォローしてね、みたいな。
私は外科→内科と病棟をハシゴしたので、両者のドクターおよびナースのキャラクターの違いをあらゆる面で実感しましたが、総体的に「つかみは外科医」「帳尻合わせは内科医」という印象をもちました。
たとえばこちらが苦しんでいるとき、外科医はあくまでもその現象を「即物的」にしか受け取りませんが、内科医は「共感」の姿勢をとろうとします。
どっちがいいかといえば、後者のほうがいいんでしょうが、実際患者の身になってみると、必ずしもそうとは言えないんですよね。
入院患者っていうのは、自分の体の状態や受ける治療について非常にナーバスになっていて、常に不安でたまらないわけです。
もうなにもかもが不安だから、普通なら気にしなくていいようなことまで神経質になって悩んだりしてしまう。
そんなとき、なまじこっちの気持ちにシンクロして「共感」を示されてしまうと、「やっぱり私の置かれた状況って大変な状況なんだ」といっそう不安が増幅してしまうことがあるんですよね。
こういうときはかえって外科医のノーテンキな一言(ひらたく言うと「相手にしない」「問題視しない」「軽くいなされる」)が救いになったりするんですよ。
「あ、それほどたいしたことじゃないんだ」みたいな。
もちろん、全部がそれで通用するわけではないんですけど、私の場合、たしかに救いになったことは少なからずありました。
今回の担当医も、典型的な外科医タイプで、なんかいつも楽しそうなんですよ。
術後の母の質問にも、
とまあこんな感じで。
文章で書くと感じが悪く見えるかもしれないけど、基本的に明るくフレンドリーな態度で邪気なく言うので、言われたほうは思わず脱力して笑ってしまうんですよね。
そういや私のときもこんなノリだったなー。
痛そうな名前の検査を受けることになり、不安になって「これ、痛いんですか?」と外科のナースに聞いたとき、さわやかな笑顔で「そうですね。ちょっと痛いかも」と言われてビビッたことを思い出しました。
そのときは「えー、いやだー」と騒ぐ私にさらに「しょうがないですよ。病院入ったら痛くなくて済むわけないし」という身も蓋もない言葉が投げつけられたのでした。
でも、はっきり言われたことでかえって覚悟が決まって「まあ一瞬我慢すればいいわけだから」と開き直ることができました。
これ、なまじ曖昧な表情で言葉を濁しつつ「んー。そんなに痛くないと思い…ますけど」なんて言われると、かえって言葉の裏が気になってもっと心配になり、眠れなくなってしまったかも。
医療って奥が深いですね……。
手術の翌日には点滴も導尿もはずされ、トイレにもいけるし、食事も普通食に(昼にはいきなり天ぷらを食べたそうです)。
検査室にも歩いて行ったらしい。
翌々日は、傷口から浸出液を外に出す管もとれてすっかり普通の状態に。
とても全身麻酔の手術をした患者とは思えません。
これって麻酔の進歩でもあるんでしょうね。
外科の先生が「手術で何が進化したって、一番進んだのは麻酔の技術。外科の技術はじつはそれほど変わってない。手術でできる可能性が大きく広がったのは麻酔技術の進歩のお陰」と言っていたのを聞いたことがありますが、なるほどと思いました。
麻酔科医って縁の下の力持ち的存在で、重要な役割のわりに患者との接点ってほとんどないじゃないですか(活躍しているときは患者はずっと眠ってる状態なので)。
変な話、お礼をしようとか思ったときでも、外科の先生にはするけど麻酔科の先生にまでしようと思う人はいないでしょう。
もっと地味なのは病理医。マニアックな職域になればなるほど、患者からは遠い位置にいくような気がします。
それに比べたら外科医は最前線ですから、ある意味「いいとこどり」ですよね。
いや、もちろん失敗したときも一番目立つわけで、いいことばかりじゃないってのはわかってるんですけど、最前線だけにダメだったときに他の科に送り込むという手が使えますから、「つかみ」の部分さえ担当できればOKってところはあると思うんですよね。
会社でいうと「営業職」みたいな感じ?
契約とったらあとは事務のほうでフォローしてね、みたいな。
私は外科→内科と病棟をハシゴしたので、両者のドクターおよびナースのキャラクターの違いをあらゆる面で実感しましたが、総体的に「つかみは外科医」「帳尻合わせは内科医」という印象をもちました。
たとえばこちらが苦しんでいるとき、外科医はあくまでもその現象を「即物的」にしか受け取りませんが、内科医は「共感」の姿勢をとろうとします。
どっちがいいかといえば、後者のほうがいいんでしょうが、実際患者の身になってみると、必ずしもそうとは言えないんですよね。
入院患者っていうのは、自分の体の状態や受ける治療について非常にナーバスになっていて、常に不安でたまらないわけです。
もうなにもかもが不安だから、普通なら気にしなくていいようなことまで神経質になって悩んだりしてしまう。
そんなとき、なまじこっちの気持ちにシンクロして「共感」を示されてしまうと、「やっぱり私の置かれた状況って大変な状況なんだ」といっそう不安が増幅してしまうことがあるんですよね。
こういうときはかえって外科医のノーテンキな一言(ひらたく言うと「相手にしない」「問題視しない」「軽くいなされる」)が救いになったりするんですよ。
「あ、それほどたいしたことじゃないんだ」みたいな。
もちろん、全部がそれで通用するわけではないんですけど、私の場合、たしかに救いになったことは少なからずありました。
今回の担当医も、典型的な外科医タイプで、なんかいつも楽しそうなんですよ。
術後の母の質問にも、
先生「なにか気になることはありますか?」
母「あの…傷口が痛くて…」
先生「そりゃあ痛いでしょう。切りましたから」
母「麻酔が残ってるのか……眠くてたまらないんです」
先生「(きっぱり)寝てください」
とまあこんな感じで。
文章で書くと感じが悪く見えるかもしれないけど、基本的に明るくフレンドリーな態度で邪気なく言うので、言われたほうは思わず脱力して笑ってしまうんですよね。
そういや私のときもこんなノリだったなー。
痛そうな名前の検査を受けることになり、不安になって「これ、痛いんですか?」と外科のナースに聞いたとき、さわやかな笑顔で「そうですね。ちょっと痛いかも」と言われてビビッたことを思い出しました。
そのときは「えー、いやだー」と騒ぐ私にさらに「しょうがないですよ。病院入ったら痛くなくて済むわけないし」という身も蓋もない言葉が投げつけられたのでした。
でも、はっきり言われたことでかえって覚悟が決まって「まあ一瞬我慢すればいいわけだから」と開き直ることができました。
これ、なまじ曖昧な表情で言葉を濁しつつ「んー。そんなに痛くないと思い…ますけど」なんて言われると、かえって言葉の裏が気になってもっと心配になり、眠れなくなってしまったかも。
医療って奥が深いですね……。
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「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
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姑に逆襲
私も10年前に全身麻酔の手術を受け、翌日には歩いておりました。
その2年ほど前に開腹手術した父もそうでした。
伊万里さんには「ば、ばけもの…?」と絶句されました。
時あたかもオウム真理教のテロ直後、「毒ガス攻撃も東山さん一族には無効だろう」と言われました。
で・も。今はそうなのよ今は、おほほほほほ(高笑い)。
古臭いことばかり言う姑に逆襲する嫁みたいですね、私。
お母様にも同じことやられないよう「そんなこたぁとっくに知ってらぁ」を合言葉に、がんばってください。
でも鼻から入れる管の件は、ほんとうに伊万里さんお気の毒です。
求む!シラフ挿管仲間
あの苦しみを分かちあえる人がほしい!
でも母の話では、たしかに管を入れるときは意識なくしてからだったんで何も覚えてないんだけど、抜く瞬間に目が覚め、それがメチャクチャ苦しかったらしい。
あとで麻酔科医が「なにか不備はありませんでしたか?」とアンケートをとりにきたので、そのことを訴えたら、「ああ、タイミングが少し早かったですか。すみません。あれは難しいんですよ。麻酔中は自発呼吸ができなくなってるんで、タイミングが微妙に遅いと呼吸がとまってしまうんで」と言われたそうです。
そもそも母は歯の治療などで麻酔がききやすく醒めにくい体質らしく、術前の調査でもしきりに麻酔科医にそのことを訴えていたのですが、それ真に受けて麻酔の量控えめにされたんじゃないのか?(笑)
普通、ドクターが名前を呼びかけるのに対して目を覚ますそうですが、母はその前に管抜かれてびっくりして目が覚めてたため、よってたかって呼びかけられるのをきいて「うるさいなー。もうとっくに醒めてるっつーの」という気分だったそうです(でも声が出にくいので答えられなかったらしい)。
抜くのは意識戻ってからでしょう
当然苦しかったのですが、半分眠ったままだったので、何とか…。
「意識が戻った」は、抜く側から見てのことなんでしょうね。
私の場合は
私のときは「気がついたらもう管がなかった」という状態でしたが、実際はもっと前に意識が戻っていて返事もしていたそうだから、そういうときに管を抜くんでしょう、きっと。
母はたまたまいきなり高い意識レベルにまで覚醒してしまったために苦しかったのかもしれません。
私は口から入れました
私も8月に入院手術しましてご無沙汰致しました。
私の場合、鼻の穴から脳の手術しましたので、酸素吸入は口から挿管を受けまして、これが後でスゴイ痛かったんです。
私の問題は、麻酔が覚めてからで、麻酔の影響で混乱がひどく、普通は翌日出て、一般病棟へ移れるのに、私は3日も回復室にいました。
もともとパーマも、かかり難く、取れ難い性質で、麻酔も同じ。
おまけに看護師に虐められ、バイタルの発信機の電池抜かれたり、採尿袋の栓を閉められ、尿が流れ出ないようにされたりと散々な目に会いました。
結局私は看護師にアッパーカットを一発お見舞いし、さらに頭突きも食らわして病院を逃げだす羽目に。
結局救急車で戻ってきたんですが、若い救急隊員がバイタル付けようと胸を開いたら、引き千切られたバイタルが付いてる。
「なんでバイタルついてるんだよ、何でだよ」と呪文のようにつぶやいていたのが印象的でした。
後で各科の先生方が、ずらっとベッドを囲んで「何か覚えていますか」と聞くので、「なんっにも覚えてません」と小さくなるしかありませんでした。
麻酔って怖いです。
フランソワさんのおしえ
いらっしゃいませ。
大変な目に遭われましたね。
今回、母の入院に際してもいろいろアドバイスをいただき、ありがとうございました。
フランソワさんの究極のアドバイス「医療関係者になめられる患者になるな」っていうのはナイスでした。
以前、東山さんから「人間、年とったらこわがられて生きるくらいのほうが楽」と言われたときと同じくらい心に響きました(笑)。
しかし、それも度を超すとドクターハラスメントやナースハラスメントの対象になるし。難しいですね。
でも、昔に比べたら病院はずっと患者をこわがるようになってる気がしました。私の行っている大学病院は、目安箱のようなものが設置してあり、それは最終的に院長がすべて目を通し、サービスの改善につとめているそうです。
昔はクレームだらけだったけど、最近は「こんなサービスがうれしかった」「ありがたかった」という感謝の言葉が増えてきているという話です。
これって名指しの批判もあるんでしょうかね。
だとしたらかなりこわいですね。