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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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カウンセリングの本ができあがりました

 満開は過ぎたものの、東京の桜は今しばらく楽しめそうですね。
 家の北側にある公園の桜です。
 手前の派手な花はハナモモ。実をつけない観賞用のモモです。


 さて。
 本日は出版の宣伝です。
 1月にブログにアップした「初カウンセリング体験」でお話した本がようやくできあがりました。

 本の著者は、「電話カウンセリングで悩み相談を行う会社」を経営している社長さんです。
 どうやってビジネスとして成り立っているかというと、「おたくの社員とその家族のメンタルヘルスケアを請け負います」という看板を掲げ、企業と契約するんですね。
 そうすると、その企業の社員とその家族は、24時間電話でそこのカウンセリングが受けられるようになるという仕組み。
 最近は、会社の中にそういった相談窓口があるところも多いようですが、どうしても「社内」だと「会社の人にバレるんじゃないか」という心配がつきまといます。
 その点、外の組織なら、そして顔が見えない電話ならぐっと気が楽になるというわけ。

 「そこまで会社が面倒みる必要あるのか?!」
 と思われる方もいるでしょう。
 私もそう思いました。自分が会社に所属してないのでなおさら。
 でも、話を聞いていると、思った以上に今の社会にはこういうニーズがあるようなのです。
 具体的には、「うまくストレスを発散できない」→「悩みをためこんでいるうちにうつ状態になる」→「うつ病にまで進行するが自分では病気だという自覚がない」→「ある日衝動的に自殺(衝動的な自殺はうつ病の典型的症状)」という経過をたどるケースが多いのですが、自殺までいく人は一部にしても、この中途段階にいる人は相当数いるようです。
 「うつ病は心の風邪」
 などと言われ、以前よりポピュラー感が出てきている「うつ病」ですが、決して軽く見ていい病気ではないんですね。
 風邪をこじらせて死ぬ人はそんなにいないと思いますが、うつをこじらせて死ぬ人は少なくないのです。
 社員がうつ病で自殺なんてことになれば労災で訴えられることも珍しくないし、自殺までいかなくても、うつ状態になれば作業効率は大幅に落ちますから、企業としても「社員のメンタルヘルスは健康診断と同じくらい重視しなければいけない」という危機感をもたざるをえない。そんな企業にとって、メンタルヘルスケアをアウトソーシングできるというのは魅力的な話でしょう。
 実際の相談内容は、ほとんどが病気以前の「誰にでもよくある悩み事」のようですが、この段階でカウンセラーがうまく話を受け止めてガス抜きをすれば、それだけでかなりの「うつ病予防効果」があるそうです。

 本書は、その会社に所属する大勢のカウンセラーさんに「実際にどんな相談を受け、どんな対応をしているのか」を取材し、話をまとめたものです。
 自分に似たケースを見つけて役に立つこともあるかもしれないし、周囲の家族・友人・同僚にうつっぽい人がいて「心配なんだけどどう接したらいいのかわからない」という人へのヒントになるかもしれません。
 「うつ病」の本ではないので、「うつ」について詳しく書かれているわけではないのですが、通して読むと「うつになりやすい現代社会」は浮かび上がってくると思います。
 私自身、取材していて「へぇ〜」とか「なるほど!」とか「なにそれ!」とか「うそでしょ?」とか、いろいろな発見がありましたし、「取材を通して自分を知る」という経験もしました。

 じつは、「カウンセリング初体験」でもちょっと書きましたが、私もちょうど取材中にいろいろなことが重なって具合が悪くなり、自分で「うつ」を疑って病院へ行ったんですね。
 そんなこと、ここでわざわざ言わなくてもいいんですが、「うつ」が認知されてきたとはいえ、実際は具合が悪くなっても「病院へは行きたくない」「自分がうつだとは認めたくない」「うつで治療していることを他人に知られると弱い人間だと思われそう」と思う人がまだまだ多数派だと思います。
 でも、「うつ状態になった」「こういう症状が出た」「治療したらこうなった」という情報をもっとオープンにすれば、「うつ」に対する偏見やタブーもなくなるし、早期発見できる人も増えるはずです。
 取材を通してそのことを強く感じたので、あえて書きます。

 「うつ」に気づくのはなかなか難しいです。
 悩みやストレスは誰にでもあるし、落ち込むことも誰にでもあるので、どこからが「治療が必要な状態なのか」をみきわめるのが非常に困難なんですね。
 一般的にはその状態が長期化して自力ではどうしようもない状態になったら「うつを疑え」と言われています。
 また、「うつ」はただ落ち込むだけではなく、「身体症状」を伴うのですが、その「身体症状」というのが、「肩凝り」とか「頭痛」とか「食欲不振」とか「不眠」とか、「疲れがたまれば誰でも出るようなよくある症状」ばかりなので、それが「うつのせい」だとは気がつきにくいケースが多いのです。

 じゃあどうやって気づいたらいいのか。
 これはもう自分にしかわからない感覚なので、あくまでも自分の経験で説明するしかないんですが、私の場合はまず食欲不振から始まりました。
 去年の9月頃だったかな。
 とにかく食べ物がおいしくない。
 味がしないんです。
 「おいしそう」とか「これが食べたい」という欲求がわかないので、唾液も出にくくなって、ものを飲み込むときに喉がつまるような感じがします。
 無理に食べてましたが、体重はじわじわ落ちていきました。
 もちろん健康的な痩せ方ではなく、筋力から落ちていく感じで、体に力が入りません。
 ただ、このときは家の建て替えと一葉会の公演準備で忙しさが重なってストレスのピークだったので、食欲不振も「ストレスのため。公演が終われば戻る」と思っていました。

 ところが、公演が終わっても食欲は戻らず、疲労も1ヶ月たっても回復しません。
 それに加えて公演後に猛烈な落ち込み状態が襲ってきました。
 今、うつの本を読むと「うつに陥るときの認知の歪みのパターン」にことごとくはまっているのですが、とにかく自分の考えがどうやってもネガティブなほうにしか働かないんですね。
 自分でわざわざ一番苦しい考えを選んでしまうんです。
 人に何かを言われるたびに過敏に反応してしまい、べつに悪口を言われたわけではなくても「非難されている」ように感じたり、「本当はこう思ってる」などと悪いほうに解釈していつまでもそのことでいやな気分をひきずったります。
 頭では「相手はそんな意味で言ってるわけじゃない。受け止める私がそう思いこんでるだけだ」と言い聞かせようとするんですが、頭で思っても気分はコントロールできないんですよ。

 そのうちに、人と会って話すのもしんどくなってきました。
 あいづちを打つエネルギーがないんです。
 普段はあいづちを打つのにエネルギーが必要だなんて考えたこともありませんでしたが、こうなってみて初めて「人の話を聞くってなんてエネルギーがいることなんだろう」と実感しました。
 メールや電話で事務連絡をしたりアポをとったりするといったささいな行動も、普段なら一気に10個くらいこなして当たり前だったのに、1個1個がすごく重く感じられました。

 さらに年が明けてからは、いよいよはっきりとした身体症状が現れるようになりました。
 「疲れる」んです。
 それもちょっとやそっとの「疲れ」ではありません。
 生まれてからこのかた味わったことのないようなすさまじい「疲労感」です。
 なんと言えばいいのか、「地面にずんずんめりこんでいくような感じ」で、起きていられないんです。
 特に昼間がひどくて、1回は昼寝をしないといられない(べつに睡眠が足りてないわけじゃないのに)。日が沈む頃になるとようやく起きて作業ができるようになるんですが、翌日になるとまた同じことの繰り返しです。
 外出するときは、緊張感のため、なんとかもちこたえるんですが、家にいる日はその反動がどっと出て使い物にならなくなります。
 これはさすがに変だと思い、カウンセラーさんに相談したのがちょうどこの頃です。
 カウンセラーさんには「心療内科」の受診を勧められ、1月半ばにこの本の締切をあげたところで紹介されたクリニックを受診しました。

 最初は「原因が比較的はっきりしている」ということで、抗不安剤(いわゆる精神安定剤)を1週間飲んだのですが、それは「前よりは落ち着いたかな?」という程度で特にめざましい変化があったわけではありませんでした。
 1週間後の受診でそう伝えると、今度は抗うつ剤が処方されました。
 これはうつ状態に陥る原因とされる「脳内の神経伝達物質不足」を補う作用があるとのこと。昔は副作用のきつい薬も多かったようですが、今では新しい薬がどんどん開発され、副作用も出にくくなっているそうです。
 抗うつ剤の効果が出るまでの時間は人によって違うけれど、一般的には2〜3週間かかると言われ、なおかつ最初に出されたのが規定量の4分の1という少量だったため、正直なところそんなにすぐに効くとは思っていませんでした。

 ところが!
 これは本当に自分でも信じられないんですが、驚愕するほどはっきりした変化が現れたんです。
 忘れもしません。服用後2日目のことです。
 突然、今まで全身を覆っていた慢性的な疲労感が霧が晴れるように抜け、猛然と「体を動かしたくなる衝動」にかられたんです。
 で、何をしたかというと、「部屋の片づけ」。
 昨日までは目に入るだけで疲労感が増していた段ボールの山を無性に制覇したくなり、その日1日で次から次へと段ボールを空にしていきました。
 自分でも「いくらなんでもこれはおかしい」と思いました。
 だっていくら働いても疲れないんですよ。
 ヒロポン飲んだときってこんな感じなのか?と思いました(笑)。
 夜中になっても「まだまだやれそう」な気分でしたが、さすがに「これ以上やったら翌日反動がくる」と理性が危機感を感じ、作業は途中できりあげました。

 ここまで極端な変化はこの日限りで、以降はわりと普通の状態に落ち着きましたが、結論からいうと「薬は効きました」。
 効き目が出るのが早すぎるような気もしましたが、私はべつのところで漢方も飲んでいて、そちらにも「抗うつ作用」のある成分が多少入っているらしいので、相乗効果で効き目がアップしたのかもしれません。
 疲れのほうは、このあと「いつもに比べて無理をするとそのあとの休みの日にどっと疲れて1日寝てしまう」という状態が何回かありましたが、ドクターの説明によれば、それは回復期に見られる特徴なので、「疲れを感じたら即休む」を繰り返しなさいとのこと。そのうちに無理してももつようになりますと言われました。
 それはまさにその通りで、今はほとんど以前と同じくらいの状態に戻りました。
 症状が回復しても、薬はある程度の期間、飲み続けないと再発しやすいということで、当分服薬は続けますが、我慢できないような副作用もなかったし、私にとっては合っていた薬だったのかもしれません(人によっては合う薬にあたるまで何回も種類を変えたりすることもあるそうです)。

 もちろん、薬を飲んでいるだけではなく、休養も意識的にとっているし、自分が今どういう状態にあるのか細かく意識できるようにもなりました。
 で、あらためて思うのは、この感覚って「美術館で絵を見るようなものだなあ」と。
 うつ状態のときは、絵を至近距離で見ているような感覚で、今はちょっと離れた場所から絵を見ているような感じ。
 絵を鑑賞するときは、距離をとらないと全体像が見えません。
 でもうつ状態のときはその「距離をとること」ができないんですよね。
 自分の「絵を見る位置」が変だとは気づいても、その位置から離れるのは自力ではできない。そして絵の全体が見えないから不安が募る。
 離れてみれば「なんだ、こんな絵か」と思うんですが、それだけのことが「できない」。
 「距離をとる」というのはイコール「心の余裕」ってことなんだろうなと思います。

 以上が私のうつ体験です。
 それまでは「エネルギッシュでアクティブで前向きな人はうつにはならない」と思っていましたが、それは違うと今ならわかります。
 条件が重なれば誰でも「うつ」にはなります。
 強いていえば、「エネルギッシュな人」は、
 「自分を向上させようという意欲が強いだけに、うまくいかなかったときのダメージが大きいこと」
 「自分はうつになるようなタイプではないと思いこみがちである」
 この2点のために、むしろうつが悪化するリスクは高いと思います。
 これを読んで「自分、ちょっとやばいかも…」と思ったら、素人判断はせず、病院を訪ねることをお勧めします。
 自分を楽にできるのは結局最終的には自分しかいません。

 というわけで、自分の話が多くなってしまいましたが、もし興味をもたれた方は、ぜひぜひ本書をお買い求めください。本の情報はここ
 書店では「心理学」系ではなく「自己啓発」系に分類されてるようですが、それほど部数が出回っているわけではないので、みつけるのは難しいかも。
 もし私に直接会う機会のある方は、お申し付けください。直販いたします。

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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