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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

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「病院ミシュラン」リーディング公演

 この前の日曜日、テアトル・エコーの稽古場において、「病院ミシュラン」のリーディング公演が行われました。

 「病院ミシュラン」は、エコーが毎年行っている創作戯曲募集の佳作に入った作品ですが(2004年秋に受賞)、1年以上放置されていたので、もう上演はないのかなと諦めかけていた頃、演出部の平野さんから「リーディング公演をやる」という連絡を受けました。
 以下、すでに何回も聞いた話かもしれませんが、初耳な方のためにもう一度説明します。

 まず、エコーの賞には入選と佳作がありますが、入選はほとんど出ません(この30年でたしか2回程度。2004年度も入選はありませんでした)。佳作は6回程度出ていますが、入選も佳作も該当者なしという年のほうが多いようです。入選は受賞後の上演が約束されていますが、佳作はされていません。
 「ミシュラン」の場合は、かなり前から「上演」の話が動いていたのですが、いろいろな事情があってなかなか決定まで進みませんでした。
 そういう状況でのお知らせだったので、「よっしゃぁ〜〜!!」という感じでした。

 リーディング公演とは、いわゆる「読み合わせ」と呼ばれる状態を観客に披露することで、欧米などではかなり盛んに行われているようです。
 ひとつの舞台をつくりあげるには大変な人手や時間やお金や労力が必要ですが、リーディング公演なら1日スケジュールを合わせるだけで比較的手軽に行うことができます。
 衣装や装置も必要ないのでコストもかかりません。
 一口にリーディングといっても、台本を持って簡単な動きをつけてイメージをふくらませるといったレベルから、本当に「読むだけ」のリーディングまで、いろいろなレベルがありますが、どういう形にせよ、よけいな装飾がない分、台本の力がストレートに伝わってくるので、本の力を値踏みするために行われることが多いようです。
 たとえば、最近で言うと、永井愛がロンドンのブッシュシアターで「時の物置」のリーディング公演を催してもらい、それが大好評だった結果、ブッシュシアターから書き下ろしの依頼があった…なんて話もありました(結局書き下ろした作品は、テーマが先方の意に添わなかったということで、話が頓挫してしまったようですが。ちなみに、その作品は、昨年度の日本のおもだった演劇賞をいくつもとっている「歌わせたい男たち」です)。
 そんなわけで、リーディング公演は、上演を決定する前に行われる試演会みたいな意味合いもあるので、役者さんも緊張するでしょうが、作者もかなり緊張でした。

 「病院ミシュラン」は、テアトル・エコーにあてて書いたものなので、私が書いた作品の中ではけっこう珍しいタイプの作品だと思います。
 いわゆるシチュエーション・コメディというやつで、一言でいうと誤解が誤解を呼ぶドタバタコメディです。
 情がからむところはいっさいなく、どちらかというと「ここにコレを投入するとこうなる」みたいな化学反応だけで話を進めていくタイプの数学的なコメディですね。
 お手本としたのはレイ・クーニー。日本だと三谷幸喜が近いでしょうか。
 私も日頃よく舞台を観ますが、こういうタイプの台本は意外に少ないかも。前半だけならあるかもしれないけど、だいたい後半になると人情話に落ち着くパターンが圧倒的に多い。たとえ前半に誤解の応酬でスピーディーに展開させていっても、最後は誤解が解けてまったり余韻を残すような締めになるのが常。じつは余韻を残さない終わらせ方、誤解を解かせない終わらせ方のほうが数段難しいので、今回も何回も「人情」を投入したい誘惑にかられました。

 テアトル・エコーは喜劇専門集団ですが、どちらかというと「人情喜劇」チックなものよりはこういう瞬発力勝負みたいなタイプのコメディのほうがお好みのようです。
 普段、声優をしていらっしゃる方が多いせいか、エコーの役者さんは声質が日本人的でない人が多いというか、湿っぽくないんですよ。だから翻訳ものをやっても違和感がない。声だけ聞いてると「洋画劇場」の世界なので。
 今回は、現代の日本人の話ではあるんですけど、わりと「現実」と「虚構」の間のギリギリをいく設定なので、そういう意味では変にリアルにならないエコーの役者さんのお芝居はすごく合ってると思います。
 多分、この話はリアルに演じるやいなや、観客が冷静になって「こんなことねえよ」とかつっこみを始めるんじゃないかって気がする……。

 「病院ミシュラン」のストーリーは、病室の中だけで展開されます。
 病院の評価をするために、覆面調査員が入院患者の中に潜入するんですが、その調査員が誰なのかわからず、病院側は戦々恐々としている。そんな状況下で、誤解が複雑にからみあって喜劇が繰り広げられていきます。
 けっこうこれ読んだ人は「ほんとにこんなものあるの?」とか聞いてくるんですが、もちろんフィクションです。
 ただ、「ミシュラン」を書いてから3年たった今、時代は確実にこの本に書かれているフィクションの世界に近づいてきています。
 これには自分でもびっくりしているんですが。

 私が唯一他人様に自慢できる(!)「豊富な入院経験」を目一杯生かして書いた渾身の作品──それが「病院ミシュラン」です(周囲には「ほんとにころんでもタダで起きない人だよね」とほめられました)。
 ちょっとでも病院にかかわったことのある方なら、皆さん絶対に「そうそうそうそう」と思いあたることがあるはずです。。

 前置き長くなりましたが、そんなこんなで待ち望んだ公演がようやく行われました。
 いやー、おもしろかったです!
 月並みですが、目で読む言葉と、役者が話す言葉を聞くのはこんなにも違うんだなといろいろ勉強になりました。
 コメディって書いてるときは全然楽しくなくてつらいばっかりなんですが(悲劇のほうが精神的に楽だし、カタルシスがあります)、笑いのリアクションがあって初めて報われました。
 お客は、劇団員の一部と、私がお連れした知りあい10数人だけでしたが、生の反応がその場で返ってくることで、ようやく「ミシュラン」が命を吹き込まれた気がしました。長い間、仮死状態だったけど(笑)。
 この先、上演が決まるかどうかはエコー次第ですが、胎児状態の「ミシュラン」をぜひ誕生させてやってほしいです。



右端が今回の企画コーディネーターの平野さん。
その隣りが先輩ナース・桜井役の近藤さん、看護師長・片岡役の高橋さん、
主人公の患者・連城役の川本さん、新米ナース・桐野役のきっかわさん。




右から川本さん、きっかわさん、糖尿病患者・河合役の山崎さん、
院長・村雨役の上間さん、連城の妻・美鈴役の石津さん。
すいません。あと4人いるんですが、写ってませんでした。
藤原さん、山下さん、小宮さん、多田野さん、ごめんなさい!




右から山崎さん、上間さん、石津さん。
望遠にしたら手ブレしちゃってアップの写真はこれ以外は失敗しました。

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この記事へのコメント

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上演されますように!

リーディング公演おめでとうございます!!
創作時の苦労が報われる時がやっときた!という感じでしょうか?
長い間まっているうちに、時代が追いついて来てしまいましたが、この作品にはまだまだ力があると思いますし、結構普遍的な部分も多いと思います。
これを機会に是非上演されることをお祈りしております!!
見てみたいので早速エコーの稽古場日誌に飛んでみます!
  • from ノリ・タケ子 :
  • 2006/08/28 (21:20) :
  • Edit :
  • Res

時代に追い抜かれそうです

>ノリ・タケ子さん

ありがとうございます。
そうなんですよね。最初にこの作品を書き上げた時は「こんなことあるの?」って意見が多かったんですが、わずか2〜3年で「ある、ある」という人の比率が増えてびっくりです。患者に「様づけ」なんて今や当たり前ですしね。
「クリスマスに入院病棟のドクターとナースが着ぐるみを着て患者にノンアルコールのシャンパンをついでまわっていたのを私は見た!」とか、「名前を呼ぶとプライバシーの侵害になるので、番号で呼ぶ病院がある。しかし、番号がわからなくなる患者もいるため、そういう場合は名前を呼んでいいかどうかあらかじめ患者にインフォームドコンセントをとっておく」とか、いろいろと笑える実話を聞きました。
これはもうパート2を書かなきゃですね。
でもその前にパート1を上演してくれ!!
  • from 伊万里@管理人 :
  • 2006/08/28 (21:22) :
  • Edit :
  • Res

笑いっぱなしでした

今回はお誘いいただきありがとうございました。
役者さんたちの役柄を的確に把握したリーディングに終始笑いっぱなしでした。
オチは一稿目のものが好きかも…と、ほんの少し思っていたのですが、リーディングをきいて、最後までシチュコメで通したほうがよいなと認識を改めました。作品のキレを感じたというか。
ぜひ、劇場でこの作品を観たいと思います。
  • from ヤギ :
  • 2006/08/28 (21:23) :
  • Edit :
  • Res

タイトルがいい!

リーディング上演おめでとうございます。
伊万里さんの作品群の中でも、こちらの作品はかなり記憶しておりました。
タイトルが好きです。
ぜひ劇場上演も☆
  • from ベビ次 :
  • 2006/08/28 (21:27) :
  • Edit :
  • Res

じつはタイトル苦手

>ヤギさん

わざわざお越しいただき、ありがとうございました。
1稿目のオチのほうがいいなんて……殺生な!(笑)
講評会のときは、「前半のスピード感に比べるとラストがいまいち」「尻すぼみ」「違和感あり」って散々皆から言われたのに〜。
でもこういう話って読むだけで良さをわからせるのが最も難しいんですよね。そりゃあじーんとさせる話のほうが読むだけで感情移入できますもん。
第1稿を読んだ友人から「誰にも感情移入できない」と言われたときはちょっとショックでしたが、今考えるとそう感じてもらえるのは正解だったのかも。

>ベビ次さん

タイトルのインパクトって重要ですよね。
私はタイトルつけるのがあまり得意ではなくて、コラムのタイトルとかもできれば編集者の人につけてほしいといつも思っているくらいなんですが、この作品に関しては「素材=タイトル」というふうにうまく結びついたので、最初から迷いはありませんでした。
タイトルにひかれて観にきた…と言われるのは、タイトル苦手意識があるだけにうれしいですね。
  • from 伊万里@管理人 :
  • 2006/08/28 (21:30) :
  • Edit :
  • Res

おもしろそうな作品ですね

レイ・クーニーで検索してたどり着いてしまいました。
はじめまして!
とっても面白そうな作品。
是非是非読んでみたいです。
どのようにすれば読むことができるのでしょうか?
他の記事も楽しく拝見させて頂きました。
又遊びにきます!
よろしくお願い致します。
  • from yunapudding :
  • 2006/08/28 (21:31) :
  • Edit :
  • Res

レイ・クーニー経由とは!

>yunapuddingさん

はじめまして。
まさかレイ・クーニーの検索でここへたどりつくとは…ネットってすごいですねー。
ブログを拝見しました。演劇、かなりお好きそうですね。
あらためてメールさせていただきます。
  • from 伊万里@管理人 :
  • 2006/08/28 (21:33) :
  • Edit :
  • Res

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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