古伊万里★新伊万里
劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です
「ファティマ第3の予言」のパワー
萩乃月さんから「ファティマの予言」の話題が振られ、コメントでレスしようと思ったんですが、「あれ…あの予言きいた最後の生き残りの修道女ってまだ生きてたっけ?……たしか最近死んだような気も……」と気になってちょっと調べたら……なんと今年の2月に亡くなったばかりではないですか!
急に興味が出てきて「ファティマの予言」についてしばしリサーチしてみました。
そしたら、出てくる出てくる、興味深い話が。
こりゃとてもコメントじゃ済まないよ。
というわけで、「ファティマの予言」を知らない人、言葉は聞いたことあるけど細かくは知らない人のために、以下、「ファティマ講座」を…。
「ファティマの奇跡」の始まりは、1917年5月13日(第1次世界大戦中。日本は大正時代です)。
ポルトガルの小さな村ファティマで、ルシア(10)、フランシスコ(8)、ジャシンタ(7)の3人が羊の番をしていたところ、突然聖母マリアと思われる女性が出現し、「これから毎月13日、計6回、同じ時刻に同じ場所に現れる」ことを約束(フランシスコとジャシンタは兄妹で、ルシアは2人の従姉妹)。
ジャシンタが母親に話したため、この事件は周囲の人々にも知れ渡り、2回目の6月13日には60人ほどの村人が奇跡を見に集まってくる。
たしかに超常現象的な不思議な現象はいくつか起こったものの、聖母の姿を見て話ができるのは3人だけだった(正確に言うとフランシスコだけは「姿は見えるけど話はできなかった」らしい。うーん、微妙な立場だ、フランシスコ)。
このとき聖母は、フランシスコとジャシンタはまもなく天国に連れていくが、ルシアだけはもう少し長く生きてメッセンジャーとして務めを果たすようにと告げる(その言葉通り、フランシスコは2年後、ジャシンタは3年後にスペイン風邪で早逝)。
3回目の7月13日には、「最後の出現になる10月にある大きな奇跡を起こす」ことを約束。
さらにこのとき、後に大論争を巻き起こすことになる3つの「予言」をする。
予言は言葉ではなく、映像として見せられたという。
さて、その予言の内容とは…。
第1部「地獄と救済」
来年じゅうに第1次世界大戦は終結するが、再び第2次世界大戦が始まる。
→予言通り、翌年(1918年)に大戦は終結。
第2部「東方からの脅威」
第2次世界大戦の前触れとして、夜間に不思議な光が目撃される。
→予言通り、ヒットラーが台頭する直前に、西ヨーロッパ各地でオーロラのような不思議な発光体が目撃された。
また、ロシアで大きな事件が起こり、ソビエト連邦が誕生する。
そして、無信教の共産圏がキリスト教徒を迫害する。
……と、ここまではわりとすぐに明かされた予言なのだが、残りの一つは封印されたため、「ファティマ第3の予言」は20世紀最大のミステリーとして多くの憶測を呼んだ。
4回目の出現になる8月13日については、「人心を惑わす」と警戒された3人が拘束されたため、聖母の出現はなかった。
5回目の9月13日には、3万人にふくれあがった見物人が「聖母の乗り物」と言われる卵形の球体を目撃。
そしてファイナル・アピアランス(?)の10月13日にはなんと7万を越える見物人が集まった(この人数の計測はどうやってしたんでしょう?)。
その日は土砂降りの雨だったが(にもかかわらず7万人?!)、突然雨がぴたりと止み、太陽のような巨大な発光体が奇怪な動きをして人々の上から降り注ぎ、見物人は「いよいよこの世の終わりがきた」とパニック状態に陥ったが、物体は突然消え、後に残った地面も衣服もすっかり乾いていたという。
なお、この奇跡は数十キロにおよぶ範囲内で確認されている。
子供たちの中で一人生き残ったルシアは、1941年に第1・第2の予言を公開。
第3の予言は1944年に文書に記されたが、それを託された司教は読むことを拒否。
その文書がバチカンにわたったのは1957年で、1960年までは信者に公開してはならないという聖母マリアからのメッセージも合わせて伝えられた。
当時の法王ピオ12世は結局その手紙の封をきらないまま死去。
続くパウロ6世(1963年に就任)は中身を読んだのだが、その内容のあまりの恐ろしさに卒倒し、再び中身を封印してしまったため、「第3の予言」だけはずっとオープンにされないまま月日がたった。
しかし、ついに20世紀最後の年になる2000年、バチカンから「第3の予言の内容」が明らかにされた。
それは、「1981年にヨハネ・パウロ2世が狙撃された事件」の予言だったという。
くしくも法王が狙撃された日は5月13日──ファティマに聖母が出現した最初の日と同じ日付だった。
その加護を受けたかのように、暗殺は未遂に終わり、法王は以後ファティマへ毎年お礼参り(?)を欠かさず行っていたということだ(狙撃時の銃弾は、ファテイマの教会のマリア像の王冠に埋め込まれている)。
なお、いろいろと憶測がとんでいるが、ヨハネ・パウロ2世自身は、暗殺事件より以前には「第3の予言」を読んでいなかったという(狙撃されて入院したあと、病院で初めて読んだそうだ)。
「第3の予言」が発表されてから5年目の今年、2月13日に修道女となったルシアが97歳で死去(またまた13日!)。
そのあとを追うように4月4日にヨハネ・パウロ2世が84歳で死去。
これで「ファティマの予言」にかかわる関係者はすべてこの世を去ったことになる。
以上が「ファティマの奇跡」にかかわるお話です。
とても興味深いのは、歴代の法王が全員「予言」を知っていたわけではないというところです。
私は当然全員手紙を読んでいるのかと思ってましたよ。
多分、手紙がきた時点で、「法王に関する重大な予言(だから送る)」というくらいの情報はいっていたと思うので、だからこそ開けるのがためらわれたのでしょうか。
聖職者といえども、法王も生身の人間なんだなとなんとなく人間くささを感じてしまいました。
一説によると、法王がなかなか開けない(あるいは発表しない)ことについて、ルシアは「私の言うことに誰も注意を払わないことを悲しく思うと聖母がおっしゃっている」というようなクレームをつけたらしいが、べつに無視してるとか軽んじてるわけじゃなく、むしろ逆だと思いますけどね。
「そんな予言信じない」と思えば、もっとさっさと開けていただろうし、封印したままという行為自体にものすごく「関心の高さ」を感じます。
それにしても、中身を読んで卒倒したというパウロ6世。
この人が一番責任重大だと思います。
このエピソードのせいで「どんなに恐ろしい予言なんだ」と世界中の人々がパニック状態に陥ったのですから、人心を惑わしたといっても過言ではありません。
まあ、法王にとっては「自分が暗殺されるかもしれない」という恐ろしい予言かもしれませんが、萩乃月さんも言う通り「身内の事件」だし、申し訳ないけどキリスト教徒以外にとっては「対岸の火事」。
「人類滅亡」とか「世界を巻き込む核戦争」とか「宇宙人襲来」とかに匹敵するほどのスケールとは思えません。
皆、口には出さねど、「第3の予言」の発表をきいて「なんだ……」と思ったはず。
しかも法王、結果的には命助かってるわけだし。
だからこそ「本当はもっとすごい予言が隠されているんじゃないか」と疑う人が今でも絶えないのでしょう。
聖母の指示によれば、「第3の予言」は1960年になったら公開していいわけだから、法王はやはりその時点で予言の中身を明らかにすべきだったのではないでしょうか。
予言というからには、公開しようとしまいと成就するものなんでしょうから。
むしろオープンにしたほうが、周囲も暗殺に対する警戒を強めてくれて気が楽になるのでは?
「暗殺されるという予言をされたが、キリスト教徒として殉教は望むところだ。予言上等! 来るなら来い>暗殺者。そんなものを恐れて法王ができるか!」くらいの意気込みの法王がいたらかっこよかったのになあ(←異教徒の勝手な期待)。
ともあれ、1960年にさっさと発表していれば、「第3の予言」がこんなに長期間、恐怖をまき散らすことはなかったでしょう。
「秘密」にし続けたからこそ、これだけの注目を集め、人々の想像をかきたて続けてきたんですよね。
「秘密」ってすごいパワーだなー。
情報化社会になればなるほど秘密のもつパワーは倍加する気がします。
私は好奇心に負けてすぐに手紙を開封してしまい、その内容の重さに耐えかねてすぐにベラベラしゃべってしまいそうなクチなので、秘密の重さに耐え続けることができる人ってそれだけでこわいです。。。
急に興味が出てきて「ファティマの予言」についてしばしリサーチしてみました。
そしたら、出てくる出てくる、興味深い話が。
こりゃとてもコメントじゃ済まないよ。
というわけで、「ファティマの予言」を知らない人、言葉は聞いたことあるけど細かくは知らない人のために、以下、「ファティマ講座」を…。
「ファティマの奇跡」の始まりは、1917年5月13日(第1次世界大戦中。日本は大正時代です)。
ポルトガルの小さな村ファティマで、ルシア(10)、フランシスコ(8)、ジャシンタ(7)の3人が羊の番をしていたところ、突然聖母マリアと思われる女性が出現し、「これから毎月13日、計6回、同じ時刻に同じ場所に現れる」ことを約束(フランシスコとジャシンタは兄妹で、ルシアは2人の従姉妹)。
ジャシンタが母親に話したため、この事件は周囲の人々にも知れ渡り、2回目の6月13日には60人ほどの村人が奇跡を見に集まってくる。
たしかに超常現象的な不思議な現象はいくつか起こったものの、聖母の姿を見て話ができるのは3人だけだった(正確に言うとフランシスコだけは「姿は見えるけど話はできなかった」らしい。うーん、微妙な立場だ、フランシスコ)。
このとき聖母は、フランシスコとジャシンタはまもなく天国に連れていくが、ルシアだけはもう少し長く生きてメッセンジャーとして務めを果たすようにと告げる(その言葉通り、フランシスコは2年後、ジャシンタは3年後にスペイン風邪で早逝)。
3回目の7月13日には、「最後の出現になる10月にある大きな奇跡を起こす」ことを約束。
さらにこのとき、後に大論争を巻き起こすことになる3つの「予言」をする。
予言は言葉ではなく、映像として見せられたという。
さて、その予言の内容とは…。
第1部「地獄と救済」
来年じゅうに第1次世界大戦は終結するが、再び第2次世界大戦が始まる。
→予言通り、翌年(1918年)に大戦は終結。
第2部「東方からの脅威」
第2次世界大戦の前触れとして、夜間に不思議な光が目撃される。
→予言通り、ヒットラーが台頭する直前に、西ヨーロッパ各地でオーロラのような不思議な発光体が目撃された。
また、ロシアで大きな事件が起こり、ソビエト連邦が誕生する。
そして、無信教の共産圏がキリスト教徒を迫害する。
……と、ここまではわりとすぐに明かされた予言なのだが、残りの一つは封印されたため、「ファティマ第3の予言」は20世紀最大のミステリーとして多くの憶測を呼んだ。
4回目の出現になる8月13日については、「人心を惑わす」と警戒された3人が拘束されたため、聖母の出現はなかった。
5回目の9月13日には、3万人にふくれあがった見物人が「聖母の乗り物」と言われる卵形の球体を目撃。
そしてファイナル・アピアランス(?)の10月13日にはなんと7万を越える見物人が集まった(この人数の計測はどうやってしたんでしょう?)。
その日は土砂降りの雨だったが(にもかかわらず7万人?!)、突然雨がぴたりと止み、太陽のような巨大な発光体が奇怪な動きをして人々の上から降り注ぎ、見物人は「いよいよこの世の終わりがきた」とパニック状態に陥ったが、物体は突然消え、後に残った地面も衣服もすっかり乾いていたという。
なお、この奇跡は数十キロにおよぶ範囲内で確認されている。
子供たちの中で一人生き残ったルシアは、1941年に第1・第2の予言を公開。
第3の予言は1944年に文書に記されたが、それを託された司教は読むことを拒否。
その文書がバチカンにわたったのは1957年で、1960年までは信者に公開してはならないという聖母マリアからのメッセージも合わせて伝えられた。
当時の法王ピオ12世は結局その手紙の封をきらないまま死去。
続くパウロ6世(1963年に就任)は中身を読んだのだが、その内容のあまりの恐ろしさに卒倒し、再び中身を封印してしまったため、「第3の予言」だけはずっとオープンにされないまま月日がたった。
しかし、ついに20世紀最後の年になる2000年、バチカンから「第3の予言の内容」が明らかにされた。
それは、「1981年にヨハネ・パウロ2世が狙撃された事件」の予言だったという。
くしくも法王が狙撃された日は5月13日──ファティマに聖母が出現した最初の日と同じ日付だった。
その加護を受けたかのように、暗殺は未遂に終わり、法王は以後ファティマへ毎年お礼参り(?)を欠かさず行っていたということだ(狙撃時の銃弾は、ファテイマの教会のマリア像の王冠に埋め込まれている)。
なお、いろいろと憶測がとんでいるが、ヨハネ・パウロ2世自身は、暗殺事件より以前には「第3の予言」を読んでいなかったという(狙撃されて入院したあと、病院で初めて読んだそうだ)。
「第3の予言」が発表されてから5年目の今年、2月13日に修道女となったルシアが97歳で死去(またまた13日!)。
そのあとを追うように4月4日にヨハネ・パウロ2世が84歳で死去。
これで「ファティマの予言」にかかわる関係者はすべてこの世を去ったことになる。
以上が「ファティマの奇跡」にかかわるお話です。
とても興味深いのは、歴代の法王が全員「予言」を知っていたわけではないというところです。
私は当然全員手紙を読んでいるのかと思ってましたよ。
多分、手紙がきた時点で、「法王に関する重大な予言(だから送る)」というくらいの情報はいっていたと思うので、だからこそ開けるのがためらわれたのでしょうか。
聖職者といえども、法王も生身の人間なんだなとなんとなく人間くささを感じてしまいました。
一説によると、法王がなかなか開けない(あるいは発表しない)ことについて、ルシアは「私の言うことに誰も注意を払わないことを悲しく思うと聖母がおっしゃっている」というようなクレームをつけたらしいが、べつに無視してるとか軽んじてるわけじゃなく、むしろ逆だと思いますけどね。
「そんな予言信じない」と思えば、もっとさっさと開けていただろうし、封印したままという行為自体にものすごく「関心の高さ」を感じます。
それにしても、中身を読んで卒倒したというパウロ6世。
この人が一番責任重大だと思います。
このエピソードのせいで「どんなに恐ろしい予言なんだ」と世界中の人々がパニック状態に陥ったのですから、人心を惑わしたといっても過言ではありません。
まあ、法王にとっては「自分が暗殺されるかもしれない」という恐ろしい予言かもしれませんが、萩乃月さんも言う通り「身内の事件」だし、申し訳ないけどキリスト教徒以外にとっては「対岸の火事」。
「人類滅亡」とか「世界を巻き込む核戦争」とか「宇宙人襲来」とかに匹敵するほどのスケールとは思えません。
皆、口には出さねど、「第3の予言」の発表をきいて「なんだ……」と思ったはず。
しかも法王、結果的には命助かってるわけだし。
だからこそ「本当はもっとすごい予言が隠されているんじゃないか」と疑う人が今でも絶えないのでしょう。
聖母の指示によれば、「第3の予言」は1960年になったら公開していいわけだから、法王はやはりその時点で予言の中身を明らかにすべきだったのではないでしょうか。
予言というからには、公開しようとしまいと成就するものなんでしょうから。
むしろオープンにしたほうが、周囲も暗殺に対する警戒を強めてくれて気が楽になるのでは?
「暗殺されるという予言をされたが、キリスト教徒として殉教は望むところだ。予言上等! 来るなら来い>暗殺者。そんなものを恐れて法王ができるか!」くらいの意気込みの法王がいたらかっこよかったのになあ(←異教徒の勝手な期待)。
ともあれ、1960年にさっさと発表していれば、「第3の予言」がこんなに長期間、恐怖をまき散らすことはなかったでしょう。
「秘密」にし続けたからこそ、これだけの注目を集め、人々の想像をかきたて続けてきたんですよね。
「秘密」ってすごいパワーだなー。
情報化社会になればなるほど秘密のもつパワーは倍加する気がします。
私は好奇心に負けてすぐに手紙を開封してしまい、その内容の重さに耐えかねてすぐにベラベラしゃべってしまいそうなクチなので、秘密の重さに耐え続けることができる人ってそれだけでこわいです。。。
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「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」
Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!
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この記事へのコメント
「偉大なる愛」ですか?!
未公表部分にはキリスト教会に都合の悪い内容が含まれているのでは、とかいろいろいわれていますね。
一方、法王狙撃実行犯は公表後、「私に銃を握らせたのは悪魔の仕業だ」と語っているらしい。
「ウン・グランデ・アモーレ!」byルイジ・ルキーニ(「エリザベート」より)かい。
まだ秘密の匂いが…
脳内では暗殺者が轟様になり「法王本人が望んだんだ!」と叫んでます(笑)。
「第3の予言」については「これで全部。隠してることはない」とルシアもコメントしたそうですが、そのルシア自身、晩年は面会も制限されるなど、ほとんど軟禁状態だったことを見ても、まだなにか秘密がありそうな匂いがしますね。