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古伊万里★新伊万里

劇作家・唐沢伊万里の身辺雑記です

カテゴリー「医療・健康」の記事一覧

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病院今昔物語

 今日(1/7)、母が手術を受けました。
 もう先月から決まっていたことなんですが、年末年始などが挟まれたこともあって、年明け一番の手術となりました。
 本当は数日前から入院するものなんでしょうけど、なにしろ年明け一番の手術なので、入院も前日というあわただしさでした。

 手術前に行う検査は年内に外来で一通り済ませたんですけど、それでも術前にやらねばならないノルマのようなものはいろいろあって、手術前ってけっこう忙しいんですよ。
 病棟で配られたスケジュール表(やらなければならない事柄がチェックシートになっている)を見たら、「手術の2日前」からすでにカウントダウンが始まっていて、入院した時点で「手術まで24時間をきっていた」私たちは、1日で2日分のノルマを消化せざるをえませんでした。

 病棟入りするやいなや、「病棟のルールの説明」「薬や食べ物のアレルギーや既往歴や日ごろの生活習慣についてのインタビュー」「担当看護師の挨拶」「担当医および担当グループの紹介と診察」「麻酔科医によるインタビュー」「病状についての講義と今後の治療方針について」「前日に行わなければならない検査」などが怒濤のように襲ってきたうえ、その合間を縫って「食事」「入浴」「検温や血圧測定や投薬」などが差し挟まれ、朝から晩までベッドを温める暇もない忙しさでした。

 さらに、翌日の手術は朝一番だったため、家族は8時までに行かなければならず、朝が苦手な私は正直かなりきつかったです。
 午後、手術を終えて病室に戻ってきた母は、全身麻酔がまだ完全に抜けていないため、ずっと半覚醒状態でうつらうつら眠っていましたが、私も父も我慢できずに横で座ったまま爆睡してしまいました(なんて緊張感のない家族)。
 おまけに帰りのタクシーの中でも2人揃って寝こんでしまい、運転手に起こされました(最低…)。

 手術をしてみなければ詳しいことはわからなかったんですが、お陰様で結果はだいたい事前に予測されていた範囲内での「良いほうの結果」になりました。病気って、結果が出るまでが一番精神的にきついので、これでかなりホッとしました。
 先生方もホッとしたのか、手術後に「切り取った病巣」をさながら「とてもすてきなプレゼント」のように箱に入れてもってきて「特別に見せちゃいますね〜」と蓋を開けて嬉しそうに見せてくれました。

 それはさておき。
 私は以前同じ病院で母の立場だったわけですが、今回20年弱ぶりに「入院&手術」を違う立場から体験し、つくづく「病院は変わった!」と思いました。
 もちろん、建て直して病棟がきれいになったとか、個室が増えたとか、備品の性能がよくなったとか、そういうのもあるんですけど、それよりもソフト面ですね、驚いたのは。
 以下、昔と違って驚いたことを思いつくままに箇条書きにしてみました。

1)全身麻酔なのにICU(集中治療室)に入らず、
  手術が終わって1時間くらいしたら自分の病室に戻れる。
2)手術中に胃液を吸い出すための“鼻から入れるチューブ”は
  麻酔後に入れる。
3)病気に関する説明がとにかく懇切丁寧。
4)導尿パックにかわいい布のカバーがついている。
5)食事が選べる。
6)手術中、家族は病棟で待っている。
7)血栓予防に足に布を巻く。
8)抜糸はない。

 まず1)。
 昔はなんでも大ごとにしたというか、慎重に行う傾向があったみたいですが、最近は必ずしもそれは体の回復にとってプラスにならないという考え方が出てくるようになって(院内感染はむしろICUのほうが起こりやすいとか、導尿も長くやりすぎると感染症を起こしやすいとか)、わりと早め早めに普通の状態にもっていこうというやり方になってきてるようですね。
 患者にとってはある意味スパルタですが、外科って本来切ったらあとは自然治癒に任せるものだから、あまり過保護にするのもかえってべつの機能障害が起きやすくなったりしてよくないんでしょうね。

 2)については、今回私が一番ショックを受けたことです。
 この鼻からチューブ、私のときは麻酔をかける前に入れられたんですよ。
 麻酔もなしに、鼻からぶっといチューブをゴリゴリおしこんでそれ喉まで通してあと「飲み込め」って言うんですよ。
 飲み込めるわけないじゃないですか。吐きますよ、普通。
 でもそれを無理矢理押し込められるの。
 そりゃあもう地獄の苦しみでしたよ。
 マジで「私はこのまま逝く」と思いましたもん。
 全身麻酔の手術でなにが恐怖って、これがダントツで一番恐怖でした。
 ところが、これ以降、誰に聞いても「チューブを通すのは全身麻酔で本人の意識がなくなってから」というんですよ。

 そんなのってあり?!

 で、今回も術前の説明を受けたとき、私は本人でもないのに先生に手を挙げて質問しちゃいましたよ。
 「先生。鼻からチュープ入れるのは全麻の前ですか? 後ですか?」
 「後です」
 「じゃあ、意識がなくなってからやるんですね?」
 「そうです」
 「それが普通なんですか?」
 「まあ消化器系の手術でなければ……それが普通ですね」
 「(身を乗り出し)私は18年前、ここでシラフのまま鼻からぐいぐい管を押し込まれて死ぬ思いをしました。これについては先生はいったいどうお考えでしょうか?!」
 「うーん。まあ……そういう時代もありましたねー」
 ………。

 時代のせいかよ!

 ていうか、遠い目をして語ってるし!
 結局、「なぜ昔は意識のあるときにやって、なぜ今は意識のないときにやるのか」「消化器系の手術じゃないのにやられた私はいったいどんな悪いことをしたのか」、明確な答えは返ってきませんでした。
 先生の話では、「本当は患者が飲み込んでくれるほうが通しやすい」と言うのですが、実際意識なくても通す方法があるならいいじゃん。
 「通しやすい」とか甘えたこと言うな。
 患者に頼らず、己の技術を磨けよ。
 質問してますます納得できなくなった私ですが、説明会の本筋からみればどうでもいい話だったので、納得できないままこの話題はうち切られてしまいました。
 誰か合理的な理由を説明できる人、教えてください。。。
 私は納得できるまで、一生このテーマを追求したい思いです。

 3)は全般的にそうなんですけど、とにかくなんでも面倒がらずに説明してくれて、これにはびっくりしました。
 説明も病室じゃなく、ちゃんとカンファレンスルームを使って画像データやホワイトボードも使ってセミナーのようにたっぷりやってくれるし。
 その代わり、患者はそれを納得したらいちいち承諾をとらされるんですよ。
 「なんでも話すから、あなたも自分のことなんだからちゃんと勉強して責任もちなさいね」みたいな。
 母は、1日でサインする承諾書をどんどん渡され、まるでフランツ・ヨーゼフのような状態に陥っていました(←大げさ)。

 4)は些細なことですが、なんか気配りを感じました。
 導尿パックって量を確認しなきゃいけないから透明の袋に流れていくのはしょうがないんですけど、患者としてはあまり見せびらかしたくないものですよね。
 カバーがついているだけで印象が随分違いました。もちろん、カバーをめくれば量はすぐに確認できるようになっています。

 5)は個室だけのサービスなのかもしれませんけど、3食それぞれがAとBから選べるようになっていて、朝はパンかご飯かが選べたり、夜は肉か魚が選べたり、和食のおかずか洋食のおかずが選べたりします。
 入院中って食べるしか楽しみなくなるから、選べるだけでも楽しくていいなー。

 6)は、ドラマなんかだと、だいたい手術室の前の椅子に座って待ってますけど、私たちは病棟で待っているように言われました。そればかりか「喫茶室にお茶飲みに行っててもいいですよ。場所さえ教えておいてくれれば呼びにいきますから」とまで言ってくれました。これにもびっくり。
 ちなみに、ドラマでお決まりの「手術中」と点灯するやつ、あれもなかったです。

 7)。これは、全身麻酔時は下半身の血流が悪くなって、エコノミー症候群のようになりやすく、足にできた血栓が肺にいって肺塞栓になる危険があるらしいので、昔は手術中に足を持ち上げたりとかしてたみたいなんですが、今は弾性包帯を足に巻いて血流が滞らないようにする裏技(?)ができたようです。

 8)。外科手術といえば抜糸ですが、今は時間がたつと溶ける糸というのを使っているので抜糸も必要ないそうです。
 溶ける糸は前からあったけど、もっと小さい手術に使うものだと思ってました。

 以上です。
 他にも、いろいろありますが、とにかく何を見ても隔世の感ありで、一人で「トリビア状態」でした。
 「えー、昔はこうだったのに、今はこんななんだ」だけならまだしも、「あんた、昔はこんなで私のときはもっと全然大変だったのよ」という苦労話や不自由話を得意そうに誰彼かまわずするようになると、もはや立派な老人です。

 親が子供にそういう説教するならわかるけど、なんで子供が親にこんな説教しなきゃいけないんだろうか…。

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プロフィール

HN:
伊万里
性別:
女性
職業:
劇作家・ライター
趣味:
旅行 骨董 庭仕事

著作



「RE>PLAY〜一度は観たい不滅の定番」

Webサイトで連載していた演劇評をまとめて出版したものです。
「演劇って、興味なくはないけど何を選んだらいいのかわからなくて」………ビギナーが感じがちなそんな敷居の高さを取り払うために書きました。
数多い名作の中から「再演されたことのある作品」に絞り、 唐沢がお勧めの25本について熱く語りたおします。ビギナーからオタクまで、全種適用OK!

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